ソフトウェア開発や業務改善において、タスクや課題をどう管理するかは非常に重要です。
この記事では、私自身が現場で試行錯誤しながら見出した「チケット管理の運用ルール」 を共有します。
はじめに:背景とこの記事の位置づけ
私が現職に入社したとき、チケットと紐づかないコミットが大量に存在し、チケット管理が崩壊している状態でした。
チケットが形骸化し、進捗も把握できず、誰が何をやっているのか分からない——そんな現場から出発して、
独学で運用ルールを整備し、チーム全体に定着させるまでに至った実践的な知見をまとめたのが本記事です。
対象:5〜10人程度のチーム
ツール想定:Backlog(本記事ではBacklogを主に想定しています)
なぜチケット管理が重要か
みなさん一度は、誰にも共有されていないタスクや、納期だけ伝えられる謎のExcel管理に遭遇したことがあるのではないでしょうか?
特定の人の「懐で温められていた」ようなタスクが、急に振られる——これはチームとして非常に非効率です。
課題管理は、チーム全員が見える場所で行うべきものです。
そして、見える化することで、ミスや認識のズレにもすぐに気づけるようになります。
まずは誰もが確認できる状態にすること、つまり「可視化すること」が何より重要です。
私はその手段として、チケット管理を強く推します。
なぜなら、チケット管理には以下のようなメリットがあるからです:
- 抜け漏れの防止
- タスクの可視化
- チーム内の認識合わせ
- 履歴を残すことで経緯を追える
チケット管理は単なるToDoリストではなく、
認識の土台かつチーム間の共通言語として機能します。
チケット管理の運用ルール
✅ 思いついたらすぐにチケットを切る
「これは軽いメモ程度かな?」と思っても、まずはチケットに残す習慣をつけましょう。
後から精査・補足すればよく、完璧さより記録を残すことが優先です。
✅ 対応しない課題も削除しない
「対応しない」と判断した経緯こそ重要な資産です。
削除せず、却下理由を明記して残しておくことで、同じ議論を繰り返さずに済みます。
✅ 親子課題を活用する
大きな作業は親チケットにし、タスク単位で子チケットに分割しましょう。
ツールに孫課題の機能がない場合は、タグや命名規則で関係性を明示するのも有効です。
✅ チケット起点で議論する
まずチケットを作る → 議論する → 結論を追記するという流れを徹底することで、
記録性と透明性が担保されます。
チケットがないまま話を進めるのは原則NGとするのが理想です。
✅ チケット粒度は「数時間〜1日以内」
1チケット = 1目的・1作業が原則です。
進捗は「何%」よりも、子チケットの完了数で可視化しましょう。
✅ 会話もチケットベースで行う
「どこまで終わってる?」「あれ対応した?」は、必ずチケット番号かタイトルで話す習慣を。
属人的な認識ズレを防ぎ、記録性も担保されます。
チケットにない作業は存在しないくらいの意識が理想です。
✅ お客様からの問い合わせもチケット化する
Backlogなどを使っている場合、問い合わせフォーム → API → チケット登録の流れを自動化すると抜け漏れ防止に。
また、テンプレートの整備は必須です。
ITに不慣れな方でも書けるように、項目を明示したフォームを用意しましょう。
✅ ステータスはチームで統一して使う
Backlogをベースとしたステータス設計の一例:
ステータス | 説明 |
---|---|
未対応 | 着手前 |
仕様問題 | 仕様上実現不可能。対応不要と判断してクローズ |
保留中 | コメント待ちや一時中断中 |
凍結中 | 現時点で対応予定はない(将来的に検討する可能性あり) |
差し戻し | テストNGなどにより、対応者へ再作業指示された状態 |
処理済み | 実装完了済み。ただしデプロイや確認作業は未実施 |
デプロイ済み | 開発環境にデプロイ済み(テスト未着手 or テスト中) |
打鍵中 | テストチームが検証中 |
完了 | 実装・確認・デプロイ含めてすべて完了、または対応しないことが正式に決定済み |
よくある失敗パターン(アンチパターン)
- 粒度が大きすぎて誰も追えないチケットを放置
- 実装内容が変わってもチケット名を直さず、「何の対応か分からない」状態に
- 1つのチケットに複数修正を詰め込みすぎてクローズできない
- チャットや口頭だけで依頼してしまい、記録が残らず責任も曖昧に
おわりに
すべての作業や認識は、文章にしてチケットで残すことが本当に大切です。
口頭だけのやりとりでは記録が残らず、誰が何を決めて、どう動いたのかが曖昧になります。
一方、チケットに残しておけば、過去の経緯をたどることができ、類似課題の再利用やナレッジ共有にもつながります。
「文章に残す」「チケットで管理する」――この基本を徹底することで、
属人性を排除し、チームとしての一貫性と再現性が生まれます。
チケット管理の仕組みは、一度崩れるとチームの信頼や運用が破綻しかねません。
しかし逆に言えば、ほんの少しのルールと意識の共有だけで、チームがスムーズに回り始めるのも事実です。
完璧を目指す必要はありません。
まずは、「気軽にチケットを切ること」から始めてみてください。