はじめに
ネットワークの冗長化などを目的に、複数のスイッチを一体化して動作させる「スタック構成」は多くの現場で利用されていると思いますが、今回はHPEのスイッチを使ったスタック構成について触れる機会がありましたので、記事にしたいと思います。
HPEのスイッチでは、このスタック技術を IRF(Intelligent Resilient Framework) と呼びます。
本記事では、HPE 5710スイッチ を用いたIRF構成の基本手順と設定ポイントについて紹介します。
構成
今回の設定では、最終的な構成はこのような形になります。
FGE1/0/25とFGE2/0/26、FGE1/0/26とFGE2/0/25を接続します。
※設定を入れるまでは接続しないようにしてください
※FGE=FortyGigaポート

設定
SW#1に設定を入れていきます
[SW#1] irf member 1 priority 30
[SW#1] interface range FortyGigE1/0/25 to FortyGigE1/0/26
[SW#1] shutdown
[SW#1] irf-port 1/1
[SW#1] port group interface FortyGigE1/0/25
[SW#1] irf-port 1/2
[SW#1] port group interface FortyGigE1/0/26
[SW#1] interface range TFortyGigE1/0/25 to FortyGigE1/0/26
[SW#1] undo shutdown
[SW#1] irf-port-configuration active
[SW#1] save
この設定では、SW#1に「メンバー1」というIRFIDを割り当てて、優先度を30に設定しています。
また「IRFポート1/1」に物理インターフェイス「FortyGigE1/0/25」を、「IRFポート1/2」に物理インターフェイス「FortyGigE1/0/26」を割り当てています。
最後にIRFポートの設定をアクティブ化(有効化)しています。
※irf設定を入れるポートは事前にshutdownしておきます。
shutdownさせておかないと以下のようなエラーが出て設定ができません。
Please shutdown the current interface first.
続いて、SW#2に設定を入れていきます
[SW#2] irf member 1 renumber 2
[SW#2] save
[SW#2] reboot
再起動後...
[SW#2] irf member 2 priority 10
[SW#2] interface range FortyGigE2/0/25 to FortyGigE2/0/26
[SW#2] shutdown
[SW#2] irf-port 2/1
[SW#2] port group interface FortyGigE2/0/25
[SW#2] irf-port 2/2
[SW#2] port group interface FortyGigE2/0/26
[SW#2] interface range FortyGigE2/0/25 to FortyGigE2/0/26
[SW#2] undo shutdown
[SW#2] irf-port-configuration active
[SW#2] save
デフォルトではスイッチのメンバーIDは「1」になっているため、「メンバー2」というIRFIDを割り当てます。
再起動後、メンバーIDが2になったスイッチに、優先度10を設定します。
「メンバー2」になっているためポートの表記が「FortyGigE2/0/~」となります。
SW#1と同様に「IRFポート2/1」に物理インターフェイス「FortyGigE2/0/25」を、「IRFポート2/2」に物理インターフェイス「FortyGigE2/0/26」を割り当てます。
このあとSW#2の電源を落とし、構成のように接続を行い、SW#2の電源を入れます。
SW#2が立ち上がると、SW#1から設定を読み込み、IRF(スタック)が構成されます。
※接続が間違っていると以下のようなメッセージが出て、IRFが組めません。
Port Forty2/0/25 Connect fail,Reason:IRF-Port is the same,please check.
確認
以下のコマンドでIRFの状態を確認できます。
display irf
[SW#1] display irf
MemberID Role Priority CPU-Mac Description
*+1 Master 30 ****-****-****
2 Standby 10 ****-****-****
Priorityを30としているSW#1がMasterになっていることが確認できます。
※メンバーIDの前の
*はMasterを表します
+はログインしている機器を表します
display irf topology
[SW#1] display irf topology
Topology Info
-------------------------------------------------------------------------
IRF-Port1 IRF-Port2
MemberID Link neighbor Link neighbor Belong To
1 UP UP 2 ****-****-****
2 UP UP 1 ****-****-****
IRFのLinkがUPしていることがわかります。
まとめ
今回、初めてHPEのIRF構成に取り組んでみて、色々新しい発見がありました。
特に、CiscoではStackWiseのような専用インターフェースが必要であるのに対し、IRFではスタック用のポートが固定されておらず、任意のポートを柔軟に選択できる点は、設計の自由度が高いと感じました。
初期構築にあたっては戸惑う部分もありましたが、IRFの仕組みを理解することで、よりスケーラブルで冗長性の高いネットワーク設計が可能になることを実感しました。
今後もHPEならではの特徴を活かした構成に挑戦していきたいと思います。
参考サイト