みなさんこんにちは!
Google Cloud Next Tokyo 26 にて開催されたセッション 「BigQuery 2026:AI 時代のデータウェア ハウスはどこへ向かうのか?最新アップデート徹底解説」(D1-DA-01) を聴講してきました。
スピーカーは Google Cloud のデータ アナリティクス スペシャリスト テックリード 山田 雄 氏。米国の Google Cloud Next '26 で発表された最新アップデートを中心に、2026年の BigQuery が目指す「自律型データ基盤(Agentic Data Cloud)」のアーキテクチャとロードマップが凝縮された、非常に密度の高いセッションでした。
本記事では、現地で撮影したスライド資料やデモ内容を交えながら、2026年の BigQuery がどのように進化し、これからのデータ活用現場をどう変えていくのかを技術的背景とともに徹底解説します。
1. BigQuery が目指すパラダイムシフト:“System of Intelligence” から “System of Action” へ
セッションの冒頭で提示されたのは、データウェアハウス が果たす役割の根本的な変化です。

※スライド:“System of intelligence” から “System of action” へ
これまでの DWH は、データを集約して人間がダッシュボードやレポートで確認し、意思決定を下すための「System of Intelligence(知能のシステム)」でした。
しかし、2026年の BigQuery が掲げるビジョンは、データ基盤そのものが AI エージェントと統合され、自律的にデータを読み解いて次の業務アクションまで駆動する 「System of Action(行動のためのシステム)」 への進化です。
この変化は、具体的に以下の 3 つの軸で整理されています。
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01. 「人間の規模」から「エージェント(Agent)」の規模へ
人間では処理しきれない膨大な非構造化データ(PDF、画像、音声など)やリアルタイムのストリームデータを、AI エージェントが常時監視・分析します -
02. 受動的なインテリジェンスから「自律的な実行(Action)」へ
単なる静的な分析結果の提示にとどまらず、次の業務プロセスや後続システムへの連携を自動的にトリガーします -
03. データから「意味を持つナレッジ」へ
単なるテーブルの集合体から、ビジネスの文脈や因果関係を理解した「ナレッジ」へと昇華させます
「データを溜めて可視化する」という受動的な運用から、データ基盤が「能動的に業務を動かす」存在へとシフトしていることが明確に示されました。
2. AIエージェントの「思考」を支える Knowledge Catalog と Universal Context
AI エージェントがビジネスの現場で正確な判断を下すためには、生(RAW)のテーブルデータを与えるだけでは不十分です。従来の RAG(検索拡張生成)のように単にテキスト検索やベクトル検索を行うだけでは、ビジネスルールやデータ同士の複雑な依存関係を正しく解釈できず、ハルシネーションや不正確な集計を引き起こす原因になります。
この「RAWデータ」と「自律型AIアクション」の間に存在するギャップを埋める核心技術として発表されたのが Knowledge Catalog(Universal Context Engine) です。

※スライド:Knowledge Catalog:Always-on universal context engine
Knowledge Catalog は、常時接続型のコンテキストエンジンとして機能し、以下の 5つの階層アーキテクチャ によって AI エージェントに必要な文脈を自動付与・強化(Enrichment)します。

※スライド:AI エージェント向け ユニバーサル コンテキスト アーキテクチャ
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01. 技術メタデータの統合(Technical metadata aggregation)
データソースの接続情報、生データスキーマ、リネージ(系統)を企業全体で統合し、単一のビューを提供します -
02. 意図駆動の強化(Intent driven enrichment)
実行ログやクエリパターンを分析し、データの関連性や実際の利用傾向を継続的に学習・強化します -
03. 組織のナレッジ(Institutional knowledge)
業務プレイブック、ビジネスオントロジー、タクソノミー(分類体系)、社内規定などの固有知識を体系化します -
04. セマンティックナレッジ(Semantic knowledge)
一元管理されたビジネスメトリクス(売上計算ロジック等)、KPI、ガードレール、ビジネスルールを定義・適用します -
05. パーソナライズ(Personalization)
取得したコンテキストとデータアクセスを、特定のユーザー権限、業界、ユースケースに応じて安全に最適化します
これまでデータエンジニアが手動で行っていたメタデータ管理や意味付け(セマンティクス整理)を、Gemini との連携によってマネージドかつ自動的に行う環境(Smart Storage)が整いつつあります。
3. 不確実性を排除する BigQuery Graph Analytics & Measures
データの関係性をより高度かつ決定論的に捉えるため、既存のテーブルデータ上にグラフ構造を定義する BigQuery Graph Analytics(CREATE PROPERTY GRAPH)が紹介されました。

※スライド:BigQuery Graph Analytics
AI エージェントが通常のテーブル検索を行う場合、複数テーブル間の結合関係を推測しながらクエリを組み立てるため、計算に時間がかかったり誤ったパスを辿ったりするリスクがあります。グラフ分析を導入することで、データ間の関係性が「点と点をつなぐネットワーク」として明示されます。
さらに、ビジネスの集計ロジック(平均・合計などの計算定義)をグラフの実行レイヤーに直接埋め込む BigQuery Measures が組み合わされました。
これにより、AI は生のテーブルから曖昧な計算ロジックを推測するのではなく、あらかじめ厳密に定義された Measures(指標)を呼び出す形になるため、推測に頼らない確実な AI 推論が可能になります。
💡 会場で公開された比較デモのインパクト
会場では、「“Fiberglass” を材料とした製品を購入した顧客は誰か?さらにその顧客が他に購入した製品は?」という、複数ステップをまたぐ検索のデモが実演されました。

※スライド:(デモ)通常のエージェント vs グラフを理解しているエージェント
通常のエージェント(グラフ理解なし)は、関連するテーブルを何度も探し回るため無駄な SQL 試行が多く、回答までに長い時間がかかっていました。一方で、グラフを理解しているエージェントは GRAPH_EXPAND を活用し、点と点(材料 ➔ 製品 ➔ 顧客 ➔ 他製品)の因果関係を一瞬で正確に辿って回答を出していました。
AI エージェントの検索速度と精度を高める上で、データをグラフ構造としてモデル化することがいかに強力であるかがよく分かるデモでした。
4. 開発体験とインフラの進化:Conversational Analytics & Fluid Scaling
BigQuery 2026 では、開発者やビジネスユーザーが AI を活用するためのインターフェースやインフラ面でも大きなアップデートがありました。
4.1 自然言語でデータと対話する Conversational Analytics(GA)
BigQuery 内のデータと自然言語で安全に対話できる Conversational Analytics for BigQuery が一般提供開始(GA)となりました。

※スライド:Conversational Analytics for BigQuery
設定画面では、対象のデータソースだけでなく、システムプロンプト(Instructions)、検証済みクエリ(Verified Queries / ゴールデンクエリ)、用語集(Glossary)を細かく定義できます。

※スライド:Conversational Analytics 設定例
あらかじめ「正解となる SQL 構文」や「社内固有のビジネス用語」を登録しておくことで、AI の表記揺れやハルシネーションを防ぎ、現場のビジネスユーザーでも安心して自然言語による分析を行えるよう設計されています。
4.2 拡張された SQL AI 関数群
Python や外部フレームワークを組むことなく、SQL だけで高度な AI 処理を呼び出す関数も大幅に拡張されています。
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要因特定(
AI.KEY_DRIVERS):
売上やユーザー数の変化に対し、どのデータセグメントが統計的に影響を与えたかを自動特定 -
言語指示による要約(
AI.AGG):
レビューや問い合わせログなどの非構造化データを自然言語指示でグループ単位に集約・要約 -
軽量データ処理(
AI.IF/AI.SCORE/AI.CLASSIFY):
条件判定、品質・感情のスコアリング、マルチラベル分類をクエリ内で直接実行 -
高度な時系列分析(
AI.FORECAST/AI.DETECT_ANOMALIES):
TimesFM 等のモデルを活用し、事前トレーニングなしで予測や異常検知を実行 -
自律型エンベディング生成(
AI.EMBED):
テーブル定義時に設定しておくことで、データ挿入時に自動でベクトル化とインデックス同期を実施
4.3 開発と運用の負担を減らす Gemini Cloud Assist
開発体験の進化として見逃せないのが、アシスタント機能 Gemini Cloud Assist の強化です。

※スライド:Gemini Cloud Assist:Query Optimization
画面上の Optimize ボタンを押すと、Gemini がクエリの実行計画やスキャン量を自動で解析します。例えば「このままだと 125 GB スキャンされてしまう」といったクエリに対し、日付フィルター(BETWEEN)を用いた最適化案を提示し、右下の Apply & Run ボタンで修正・実行まで完了してくれます。コスト削減やパフォーマンス改善が目に見えて実感できる機能です。

※スライド:Gemini Cloud Assist:Data Lineage Analysis
さらに、「このカラムがどのテーブルで使われているか?」といった影響調査も、Gemini と対話するだけで自動でデータリネージ(系統図)を解析・描画してくれます。
人間にとって依存関係が直感的にわかりやすくなるのはもちろん、リネージがメタデータとして蓄積されることで Gemini 自身の「データ構造の理解」が深まり、AI エージェントによる推論やクエリ生成の精度が一段と高まる という点も非常に大きなメリットです。
4.4 スパイク処理に強い「BigQuery Fluid Scaling」
インフラ面の目玉として紹介されたのが BigQuery Fluid Scaling です。
AI エージェントによる処理は、人間と異なり突発的かつスパイク的なアクセスが発生しやすい傾向があります。Fluid Scaling では、実際に使用した計算リソースに対して 最低課金時間ゼロ・秒単位 で課金され、事前の複雑なスロット割り当て設定なしで自動スケールします。従来構成と比較して 最大 +34% のコスト削減 を実現できるとのことです。
その他、リージョンを跨いだクエリ実行を容易にする Global Queries や、VS Code・Claude Code 等の開発環境と統合する Google Cloud Data Agent Kit など、開発者の運用負荷を減らす機能が多数発表されました。
5. まとめ
今回のセッションを通じて実感したのは、BigQuery が「高速な SQL 検索エンジン」から「AI エージェントと共に働く自律型データ基盤(Agentic Data Cloud)」へと完全に次のフェーズへ移行したということです。
- Knowledge Catalog や Graph Analytics によってデータにビジネスの文脈と因果関係を与え、
- Conversational Analytics や SQL AI 関数 で直感的なインターフェースを提供し、
- Fluid Scaling によってスパイク的な AI 処理を低コストかつ柔軟に支える。
これらが統合されることで、データ基盤が単なる保管庫(System of Intelligence)にとどまらず、業務を能動的に動かすパートナー(System of Action)へと進化する未来像が明確に示されました。
本セッションで示された「AI が自律的にデータを読み解き、行動まで駆動する」という世界観は、先日私が Developer Stage で登壇したセッション:「BigQuery と Gemini 最前線! SQL で画像データを構造化・エージェント分析」(D1-DEV-07)でご紹介したアプローチとも深く通じるものがあり、非常に感慨深い聴講となりました。
本セッションで示されたコンセプトを「具体的にどのようなアーキテクチャや SQL コードで実現するのか」について興味を持たれた方は、関連する以下の記事もご覧ください!
【Next Tokyo 26】BigQuery × Gemini で実現する自律型データ基盤
※Next Tokyo 26 公式アンバサダーとして参加・執筆しています。
#GoogleCloudNext #NextTokyoアンバサダー

