1.はじめに:なぜ今、AIエージェントなのか?
こんにちは!
毎日届く大量のメールの仕分け、会議の予定調整、議事録作成…こうした定型業務に追われ、本来の創造的な仕事に集中できないと感じていませんか?特に、ゴールデンウィークや夏季休暇明けに、大量のメール処理に半日も費やしてしまう、そんな経験はありませんか?
Google Cloud Next Tokyo 25で言及されたように、2025年が「AI エージェント元年」である今、AIは単なるツールから、私たちの仕事を自律的にサポートする存在へと進化しています。
本記事では、Google Cloud の新しいプラットフォーム「Google Agentspace」を実践し、メールの内容を読み取り、カレンダーに自動で予定を登録するAIエージェントを構築した内容を共有します。この記事が、AIエージェントの世界に足を踏み入れるきっかけとなり、みなさんの働き方を変えるヒントになれば幸いです。
Google Cloud Next Tokyo の詳細については、こちらをご確認ください。
2.Google Agentspace とは
Google Agentspace は、2025年7月31日に一般提供(GA)が開始されたばかりです。
AIエージェントの最大の特徴は、人間のように「思考」し、「行動」する能力です。
- 思考:状況を理解し、次に何をすべきかを判断する。
- 行動:判断に基づいて、外部システムに働きかけ、タスクを実行する。
Google Agentspace は、プログラミングのコードを書く代わりに、使用するツールやサービスを設定することで、この「思考」と「行動」を直感的に繋げられるプラットフォームです。Gmail や Google カレンダーをはじめ、ServiceNow、Salesforce、GitHub など、様々なサービスと連携するためのコネクタが豊富に用意されています。
Google Agentspace の詳細はこちらの公式ページでご確認ください
3.ノーコードで実現する業務自動化のPoC
今回、AI エージェントの可能性を確かめるために、PoC(概念実証)を行いました。PoCのゴールは、「Gmail のメールを読み取り、内容を分析し、Google カレンダーに自動で予定を登録する/返信メールを作成する」ことです。
この結果を得るためには、単にプロンプトを入力するだけでなく、事前に Agentspace コンソールでエージェントに具体的な指示を学習させる必要があります。 例えば、メール内容の分析方法や、一覧表示のフォーマット、返信メールのスタイル等が該当します。
この事前学習を経て、エージェントは「思考」と「行動」を連携させ、以下の3つのステップでタスクを実行します。
ステップ1:AIによるメールのインテリジェントな仕分け
メール本文を深く理解し、その推論によってタスクの緊急度や種類を AI が自律的に判断します。プロンプト設定により、受信メールの中から「これは会議の予定調整メールだ」と認識させ、アクションが必要なものを自動で仕分けできます。
ステップ2:スケジュールを確認し、返信文を作成する
AI がメールから「会議のタイトル」「日時」「参加者」といった情報を正確に抜き出します。さらに、Google カレンダーの空き状況を確認し、最適な候補日を提案する返信メールの文案を自動で生成します。
ここでは、ワンショットプロンプトを活用し、AI に返信文の形式を学習させています。これにより、定型的な文案を自動生成できるようになります。
ステップ3:カレンダーを操作し、予定を作成する
AI が抽出した情報と、カレンダーを操作するツールを繋げることで、自律的にカレンダーにアクセスし、予定を作成します。
この一連の流れをノーコードで実現できたことは、AIエージェントが複数のサービスを横断し、一連のタスクを自動で完了できることを示しています。
4.環境設定手順(操作ガイド)
ここでは、Google Agentspace を試すための環境設定手順を、画面イメージと合わせてまとめました。
今回は Google 1st-party データソースである Google カレンダー と Gmail を対象に検証を進めていきます。
4.1 Cloud コンソール での環境設定
・Agetspace の作成
Cloudコンソールで、Agentspace の有効化、アプリケーションの作成、カレンダーと Gmail のコネクタ設定を行います。
・OAuth 同意画面の設定とクライアント作成
Agentspace が Google アカウントにアクセスするための OAuth 設定を行います。
(*1)リダイレクトURI:https://vertexaisearch.cloud.google.com/oauth-redirect を設定
(*2)Agentspace アクション追加時、クライアントID、クライアントシークレットを使用
4.2 Google Agentspace での設定
ウェブアプリの URL から Agentspace にアクセスします。
右上の設定ボタンを選択し、personalization メニューから、Calendar と Mail を承認します。
このときGoogleアカウントへのアクセス許可が求められるため、許可します。
4.3 検証データの準備
検証にあたり、事前に Google カレンダーに予定を10件、Gmail にメールを10件、それぞれテストデータを作成しておきます。
以上で検証を始める準備が整いました。
5.Agentospace の操作と検証結果
いよいよ、検証用に作成したカレンダーとGmail のテストデータを使って、エージェントを動かしてみます。
5.1 カレンダーの読み取り確認
「今週の予定を教えて」と入力すると、カレンダーの予定が一覧で表示されました。
ここは想定通りの動作です。
5.2 メールの読み取り確認
「メールを一覧表示して」と入力すると、受信トレイのメールが一覧で表示されました。ここも想定通りの動作です。
5.3 メールの仕分け確認
ここからが、Agentspace の実力の見せどころです。
「メールを仕分けして」と入力すると、AI がメールの内容を分析し、重要メールや会議メールを抽出してくれました。
・重要メールの確認
「1」を選択してみます。アクションは「内容を確認する」です。
対象メールの本文が表示されました。期日が設定された緊急度の高いメールであることが分かります。
・会議予定の自動登録
「2」を選択してみます。アクションは「予定を登録する」です。
こちらは、次期プロジェクトのキックオフミーティングへの参加依頼です。
AI が、8月26日(火)11:00~の空き時間を確認し、カレンダーに予定を登録するか尋ねてきます。問題なさそうなので、このまま「送信」を選択します。
会議が作成されたようです。
カレンダーを確認すると、8月26日(火)11:00~ 次期プロジェクトのキックオフミーティングが登録されました。
・日程調整の自動メール返信
「3」を選択します。アクションは「日程調整のメールを作成する」です。
AI がカレンダーを確認し、先方の希望日時が埋まっていたため、候補日時を探して返信メールのひな形を自動生成してくれました。
メール内容を確認し問題なさそうなので、このまま「送信」を選択します。
メールが送信されたようです。
メールボックスを確認すると、日程調整のメールが届いています。
今回は検証のため自分からメールを発信しており、返信メールも自分へ届きました。
これらの一連の作業は、手作業なら数時間かかるところを、わずか数分で完了することができました。日々のルーチンワークを効率化し、業務効率を向上させることが期待できます。今後、さらなる検証と安定性の確保により、これらのタスクを完全自動化することも可能になると考えています。
6.まとめと今後の展望
今回の AI エージェント開発を通じて、Google Agentspace の手軽さと可能性を強く実感しました。緊急度の高いタスクを優先的に対応できる時短のメリットに加え、大量のメールから重要タスクを見落としてしまうリスク軽減につながることも確認できました。
- ノーコードで「頭脳」と「手足」を繋ぐ
Agentspace はプログラミングの壁を越え、誰でもAIエージェントを構築できる「AI 活用の民主化」を可能にします。AI はメールの内容を深く読み込み、生成AIの推論によって種類や重要度を判断し、自律的に行動できます。この仕組みにより、手作業では数時間かかっていた作業を、わずか数分で処理することができました。 - 未開拓の領域を「深掘り」する価値
Agentspace は、今後も継続的な機能拡張が予定されています。公開が予定されている Agent Designer や、より高度なカスタマイズが可能な ADK(Agent Development Kit)を活用すれば、さらに複雑なタスクに取り組むことができるでしょう。
私たちは大きな可能性を秘めたこの分野で、AIエージェントと共に新しい働き方を創造するチャンスに直面しています。この記事が、みなさんの学びを深めるきっかけになれば幸いです。