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Strecs3D入門:インストールから応力解析ベースの3Dプリントデータ作成まで

Last updated at Posted at 2025-08-09

Strecs3D入門:インストールから応力解析ベースの3Dプリントデータ作成まで

はじめに

こんにちは!
この記事では、私が開発しているソフトウェア Strecs3D のインストール方法から、データ準備、基本的な使い方までを解説します。

Strecs3Dとは?

Strecs3D は、応力解析の結果にもとづいて、3Dモデルのインフィル(内部充填構造)に粗密を生み出すためのスライサー前処理ソフトウェアです。

  • 力のかかる領域:インフィルをにする
  • 力のかからない領域:インフィルをにする

これにより、モデル全体の軽量化と高い剛性の両立を目指します。

スクリーンショット 2025-08-08 2.47.39.png

SDIM1333のコピー.JPG


1. Strecs3Dのインストール

まずは Strecs3D をインストールしましょう。

  1. Strecs3DのGitHubページ にアクセスします。
  2. リリースページ へ移動し、お使いのOS(macOS / Windows)に合ったインストーラーをダウンロードします。

Windowsの場合

ダウンロードしたセットアップウィザードの指示に従ってインストールを進めてください。

macOSの場合

ダウンロードした .dmg ファイルを展開し、Strecs3D のアイコンを「アプリケーション」フォルダにドラッグ&ドロップしてください。

インストール後、ソフトウェアを起動して以下のような画面が表示されれば成功です。

スクリーンショット 2025-08-09 18.35.33.png


2. 準備するファイル

Strecs3D で使用するファイルは以下の2つです。

  1. STLデータ:3Dプリントするパーツの形状データ
  2. VTUデータ:応力解析の結果データ

このチュートリアルでは、以下のソフトウェアを使ってデータを準備します。

  • 3Dモデリング:Autodesk Fusion
  • 応力解析(FEM):FreeCAD

補足
Strecs3D は、Fusionに搭載されているFEM解析機能から出力された .vtu データも使用可能です。ただし、Mac版Fusionでは解析結果をうまく出力できないバグが存在するようです。


3. データ準備①:STLデータの作成 (Fusion)

まず、Fusionで簡単な片持ち梁のモデルを作成します。今回はシンプルな直方体です。

スクリーンショット 2025-08-09 18.37.26.png

モデルが完成したら、以下の2種類のファイルを出力します。

  1. STEPファイル (.step)
    後ほどFreeCADで応力解析を行うために使用します。
  2. バイナリSTLファイル (.stl)
    Strecs3D 本体で使用します。STLにはアスキー形式とバイナリ形式がありますが、v1.0.0では必ずバイナリ形式を選択してください。

4. データ準備②:応力解析 (FreeCAD)

次に、FreeCADで応力解析を行います。(FreeCADの説明のため、FreeCADの使用方法がわかる方は読み飛ばしていただいて構いません)

なお、FreeCADを使用した解析のわかりやすい記事を参考として置いておきます。
https://cosmosdesign2021.com/fc019fem/

環境
この記事では FreeCAD v1.0.0 を使用しています。UIを一部カスタマイズしているため、デフォルトの状態とは見た目が異なる場合があります。

STEPファイルのインポートと保存

  1. FreeCADで新規プロジェクトを立ち上げ、先ほどFusionからエクスポートした STEPファイル をインポートします。
  2. インポート後、一度プロジェクトファイルを保存しておきましょう。

FEM解析のセットアップ

  1. ワークベンチを FEM に切り替えます。
  2. ツールバーにある A のアイコン(解析コンテナーを作成)をクリックします。

スクリーンショット 2025-08-09 18.39.14.png

① 材料の選択

丸いアイコン(材料を割り当て)をクリックし、今回は材料として PLA を選択します。

スクリーンショット 2025-08-09 18.41.32.png

② 境界条件の設定(拘束と荷重)

【拘束】

  1. 拘束アイコン(固定拘束を作成)をクリックします。
  2. 表示されたダイアログで Add をクリックし、固定したい面を選択します。今回は片持ち梁の端面を固定します。

スクリーンショット 2025-08-09 18.44.10.png

【荷重】

  1. 荷重アイコン(力を加える)をクリックします。
  2. ダイアログで Add をクリックし、力を加えたい面を選択します。
  3. 力の方向(下向き)と値(今回は 20 N)を設定します。

スクリーンショット 2025-08-09 19.39.17.png

③ 解析メッシュの作成

  1. インポートしたSTEPモデルをツリービューで選択した状態で、メッシュ作成アイコン(N または G と書かれたアイコン)をクリックします。今回は G(Gmsh)を使用します。
  2. メッシュサイズを設定します。サイズを小さくすると精度が上がりますが、計算時間が長くなります。Strecs3D ではそこまで高精度なメッシュは必要ないため、適度なサイズで十分です。

スクリーンショット 2025-08-09 19.40.07.png

④ 解析の実行と結果のエクスポート

材料、拘束、荷重、メッシュの4つが準備できたので、解析を実行します。

  1. ツリービューで SolverCcxTools を選択した状態で、Run solver calculations ボタン(再生ボタンのようなアイコン)をクリックします。
    (このアイコンが見つからない場合は、ツールバーのドロップダウンメニューなどを確認してください)
  2. 数秒待つと計算が完了します。
  3. STEPモデルと解析メッシュを非表示にして、結果を見やすくします。
  4. ツリービューで Pipeline_CCX_Results をクリックし、タスクパネルの Coloring -> Fieldvon Mises Stress を選択すると、応力分布が色で表示されます。

スクリーンショット 2025-08-09 19.41.56.png
スクリーンショット 2025-08-09 19.43.20.png

  1. 応力分布が正しく計算されていることを確認したら、結果をエクスポートします。
  2. Pipeline_CCX_Results を選択した状態で、ファイル -> エクスポート を選択します。
  3. ファイル形式として FEM Result VTK (*.vtu) を選択し、保存します。

これで、Strecs3D に必要な STLファイルVTUファイルが揃いました!


5. Strecs3Dでの操作

いよいよ Strecs3D を使っていきます。

  1. Open stl file をクリックし、Fusionから出力した STLファイル をインポートします。
  2. Open vtu file をクリックし、FreeCADから出力した VTUファイル をインポートします。

スクリーンショット 2025-08-09 20.06.36.png

領域分割とインフィル設定

  1. Process ボタンをクリックすると、応力に応じてモデルが4つの領域に分割されます。これらの領域ごとに、異なるインフィル密度を割り当てることができます。
  2. 右側のスライダーで、各領域のプレビュー表示(表示/非表示、透明度)を調整できます。
  3. 左側のスライダーで、各領域を分割する応力の閾値を調整できます。「〇〇 MPa 〜 〇〇 MPaの範囲には、インフィル密度を〇〇%にする」という設定が可能です。

今回は、力がかかっていない領域から順に、インフィル密度を 8%, 20%, 30%, 50% と設定しました。

スクリーンショット 2025-08-09 20.07.26.png

3mfファイルのエクスポート

対応スライサー
現在、Strecs3DUltimaker CuraBambu Stadio に対応しています。(今後、対応スライサーを増やす予定です)

設定が完了したら、Export ボタンをクリックして 3mf ファイルを出力します。
このファイルには、モデルの形状情報に加えて、各領域のインフィル密度情報などが含まれています。


6. スライサーでの最終確認 (Bambu Studio)

Bambu Studioで、先ほど出力した 3mf ファイルを読み込みます。

そのままスライスを実行すると、Strecs3D で設定した通り、力のかかる部分には密なインフィル、かからない部分には疎なインフィルが自動で生成されます。

スクリーンショット 2025-08-09 20.08.22.png

スライスプレビューでインフィルの様子を確認しやすくするために、以下の設定にしています。

  • トップソリッドレイヤー:0
  • ボトムソリッドレイヤー:0
  • インフィルパターン:ジャイロイド (Gyroid)

スライサーでのインフィル密度微調整

余談ですが、最終的なインフィル密度はスライサー側でも調整できます。
Bambu Studioでは、オブジェクトタブに切り替えると、Strecs3D で分割された各パーツ(領域)が表示されます。ここで、それぞれのインフィル密度を最終的に微調整することが可能です。

スクリーンショット 2025-08-09 20.08.58.png

ここまでできれば、あとは通常通りに3Dプリントを実行するだけです。


7. 完成!

こちらが実際に3Dプリントしたものです。設計通り、力のかかる部分に密なインフィルが生成されているのがわかります。

SDIM1333のコピー.JPG


まとめ

今回は、Fusion, FreeCAD, Bambu Studio を用いて Strecs3D を使う方法を解説しました。
しかし、これらのツールにこだわる必要はありません。STL, VTU, 3mf の各ファイル形式を扱えるソフトウェアであれば、他のCAD、CAE、スライサーでも同様のワークフローを実現できます。(ver1.0.0では完全に対応しきれていないソフトウェアが存在します。それらについては、今後のアップデートで対応していきます。)

バグ報告や機能要望などがありましたら、Strecs3D のGitHubリポジトリのIssuesや、開発者のX (旧Twitter) アカウントまでお気軽にご連絡いただけると嬉しいです。

なお、Strecs3Dを使用しての感想や作例なども #Strecs3D で共有してもらえれば嬉しいです!

最後までお読みいただきありがとうございました!

X: https://x.com/tamutamu3D
GitHub: https://github.com/tomohiron907/Strecs3D

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