はじめに
これまでの連載で、Jouleの設定手順と制約事項を解説してきました。この記事では、実際に発生する問題とその対処法を扱います。
SAP公式ドキュメントのTroubleshootingセクションに記載されている問題は2件です。いずれも、これまでの連載で扱った設定項目(IAS・NavigationService・Build Work Zone)に関連しています。
問題1:Joule画面が空白になる
症状
Jouleの画面を開いても、何も表示されない(空白のまま)状態になります。
根本原因
Corporate Identity Provider(Azure ADやOKTAなど)をユーザーログインに使用している環境で発生します。
対処法
Identity Authenticationにおいて、Corporate Identity ProviderをJouleアプリケーションのDefault Identity Providerとして設定していることを確認します。
確認内容:
- IAS管理コンソールでJouleアプリケーションの設定を開く
- Identity ProviderのDefault設定が、利用している
Corporate Identity Provider(Azure AD、OKTAなど)に
なっているか確認する
IASを社内のCorporate Identity Providerと連携させている環境では、Default Identity Providerの設定が漏れていると、認証の経路が正しく確立されず、画面が表示されないという症状につながります。
#14で触れた「IASをCorporate IdPへの強制認証プロキシとして設定してはいけない」という制約とは別の問題です。今回のケースは、Default Identity Providerの設定漏れに起因します。
問題2:Jobrun・Jobsync成功後にナビゲーションボタンが表示されない
症状
JobrunまたはJobsyncが正常に完了したにもかかわらず、Jouleのナビゲーションボタンが表示されません。
対処法
以下の4点を順番に確認します。
1. SAP BTPサブアカウントのNavigationService destinationの
設定を確認する
2. SAP BTPサブアカウントでSAP Build Work Zoneアプリケーションを
開き、製品統合時に作成したContent Channelを選択する
3. Token Service URL Typeが「Dedicated」に設定されているか
確認する
4. SAP Build Work Zoneアプリケーションを手動でリフレッシュし、
サービスプロバイダーの詳細が更新されているか確認する
Token Service URL Typeの設定は見落としやすい項目です。「Dedicated」になっていない場合、Build Work Zone側でサービスプロバイダーの情報が正しく取得できず、ナビゲーションボタンが表示されない状態になります。
トラブルシューティングの考え方
この2つの問題は、いずれも認証・ナビゲーション周りの設定に起因しています。これまでの連載で扱った内容と対応させると、以下のように整理できます。
問題1(画面が空白)
→ #3で解説したIAS(認証)の設定に関連
問題2(ナビゲーションボタンが非表示)
→ #4・#5で解説したNavigationServiceとBuild Work Zoneの
設定に関連
Jouleが正しく動作しない場合、まず「認証(IAS)の問題か、ナビゲーション(Build Work Zone)の問題か」を切り分けると、対処の方向性が見えやすくなります。
画面自体が表示されない場合はIAS側の設定を、画面は表示されるがナビゲーションが機能しない場合はBuild Work Zone側の設定を、それぞれ優先的に確認するという順序になります。
まとめ
- 公式ドキュメントに記載されているトラブルシューティングの事例は2件
- 画面が空白になる問題は、Corporate Identity ProviderのDefault設定漏れが原因
- ナビゲーションボタンが表示されない問題は、NavigationService destinationやToken Service URL Typeの設定確認が対処法
- 症状によって、IAS側・Build Work Zone側のどちらを優先的に確認すべきかが分かれる
次回は、Microsoft 365 Copilotとの連携について解説します。
用語解説
Default Identity Provider
IASにおいて、特定のアプリケーションに対するログイン認証で標準的に使用されるIdentity Providerの設定。Corporate Identity Providerと連携する環境では、この設定が必須となる。
Jobrun / Jobsync
IPSにおける同期処理の実行単位。ユーザー・権限情報をソースシステムからターゲットシステムへ反映する処理を指す。
Content Channel
SAP Build Work Zoneにおいて、外部システムから取得したコンテンツを管理する単位。製品統合時にContent Providerとして設定したものが、Content Channelとして表示される。
Token Service URL Type
Build Work ZoneがNavigationServiceとの通信に使用するトークンサービスのURLタイプ設定。「Dedicated」に設定する必要がある。