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AI時代に、「正しい答えを持っているだけ」では足りなくなる理由

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私は普段、事務業務に携わっています。

業務改善やDXにも関わる中で、AIが職場に浸透することによって、組織や専門部署に求められるものが変わり始めていると感じています。

AIは「答えに到達するまでの時間」を大幅に短縮した

生成AIの登場により、以前であれば専門部署へ問い合わせていた内容も、まずAIに聞くという人が増えてきました。

社内で契約しているAIであれば、過去のマニュアルや運用案内を参照し、それらしい回答を返してくれます。簡単な問い合わせであれば、十分に役立つ場面も多くなっています。

一方で、AIは古い情報も参照します。

すでに運用が変更されている場合や、例外的なケースでは、誤った回答をすることもあります。

AIエージェントを利用し、回答が難しいものを専門部署へエスカレーションする仕組みがあれば、専門部署が最終的な回答をすることもできます。

しかし、通常のチャット型AIでは、利用者がAIの回答をそのまま信じて手続きを進め、後になってトラブルになることがあります。

なぜ、回答が少し変と思ってもそのまま進めるのか

ここで、疑問があります。

違和感を感じたのに、なぜ専門部署へ確認しないのか。

個人的には、問い合わせ後の待ち時間や不透明さが理由になっていると感じています。

例えば、問い合わせをしても、次のような状態になることがあります。

  • いつ回答が返ってくるのかわからない
  • 現在どこまで確認が進んでいるのかわからない
  • そもそも問い合わせが受け付けられたのかもわからない

もちろん、その場ですぐに回答できない内容もあります。

それでも、次のような進捗共有があるだけで、問い合わせをした側の受ける印象は大きく変わります。

  • 「○日までに確認します」
  • 「現在、関係部署に確認しています」
  • 「回答まで数日かかる見込みです」

AIは間違うことがありますが、数秒で何らかの回答を返してくれます。

一方、人間や専門部署が正しい答えを持っていても、1週間も返事がなければ、利用者は別の手段を探し始めます。

つまり、利用者がAIを選ぶ理由は、AIのほうが正確だからとは限りません。

すぐに反応が返ってくるから選ばれている場合もあるのだと思います。

人は「待つこと」に厳しくなった

AIによって、待たずに情報を得られる体験が身近になりました。

その結果、従来の問い合わせ対応とのギャップが目立つようになったのではないでしょうか。

YouTubeなどの動画を倍速で視聴することが一般化したように、情報も短時間で手に入ることが当たり前になりつつあります。

以前であれば、

担当者が休暇なのかもしれない。

と数日待てたものが、今では数時間、場合によっては数分でも長く感じることがあります。

これは良い悪いという話ではなく、社会全体の期待値が変わったのだと思います。

AIの普及によって変わったのは、回答を作る方法だけではありません。

利用者が許容できる待ち時間そのものが変わりつつあります。

シャドーITはなぜ生まれるのか

私は、業務改善やDXの関係で情報部門とやり取りすることがあります。

その中で感じるのは、次のような状態が意外と多いことです。

  • 問い合わせた内容について進捗共有がない
  • 検討中なのか、却下されたのかわからない
  • どこまで話が進んでいるのかわからない
  • 数週間またされたのに、理由の詳細がないままできない

もちろん、情報部門にも事情があります。

セキュリティや契約、既存システムへの影響など、慎重に確認しなければならないことも多いでしょう。また、ユーザ部門に専門用語で伝えても伝わらない等…

問い合わせの結果として、

セキュリティ上の理由で実施できません。

という回答を受けることもあります。

セキュリティの確保は重要です。しかし、利用者側からすると、次の点も重要です。

  • なぜできないのか
  • どのようなリスクがあるのか
  • 代替手段はあるのか
  • 条件を変えれば実施できるのか
  • 将来的に実現する可能性はあるのか

こうした情報がないまま結論だけを伝えられると、利用者は、

正式な手続きを踏んでも、何も変わらない。

と感じてしまうことがあります。

その結果として、

  • 個人で別のツールを使う
  • 承認されていないクラウドサービスを利用する
  • 非公式な方法で業務を進める

といったシャドーITにつながります。

もちろん、ルールに反する方法を選ぶことが正当化されるわけではありません。

一方で、シャドーITを利用者個人のモラルだけの問題として扱っても、根本的な解決にはならないと思います。

その背景には、

正規のルートでは、いつまで待てばよいのかわからない。

相談しても、代替手段が示されない。

という組織側の課題が存在することもあります。

セキュリティのために設けた正式な手続きが利用されなくなれば、結果的に組織全体のリスクが高まります。

そのため、シャドーITを防ぐには禁止するだけでなく、正規のルートを利用しやすくすることも必要なのではないでしょうか。

AI時代に専門部署へ求められるもの

AIの性能が向上したからといって、専門知識の価値がなくなるとは思っていません。

AI時代に専門部署へ求められるのは、すべての答えを抱え込むことではありません。

正しい情報を維持し、判断根拠を言語化し、例外を適切に判断し、その結果を組織全体で再利用できる仕組みに変えることです。

専門部署の価値は、正解を知っていることから、組織全体が正解へ到達できる仕組みをつくることへ移っていく。

そして、即答できない場合でも進捗や見通しを伝え、利用者を不安なまま放置しないことも、AI時代における専門性の一つになるのだと思います。

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