Google Apps Script (GAS) でWebアプリを作成する際、サーバー側（.gs）のデータをオブジェクトや配列のままクライアント側（.html）に渡したい場面がよくあります。

しかし、安直に JSON.stringify して渡そうとすると、データの中に日本語、改行コード、ダブルクォーテーション(") などが含まれている場合に、ブラウザ側で SyntaxError や文字化けが発生してハマることがあります。

この記事では、あらゆる文字が含まれていても絶対にエラーにならない、堅牢なデータの受け渡し方法をメモとして残します。

❌ よくある失敗例（アンチパターン）

サーバー側で JSON.stringify した文字列を、そのまま Scriptlet (<?= ... ?>) で HTML に埋め込む方法です。

GAS側 (.gs)

JavaScript

function doGet() {
  const data = {
    message: 'これは "引用符" です', // ← これが鬼門
    note: '改行も\nあります'
  };
  const template = HtmlService.createTemplateFromFile('index');
  template.jsonData = JSON.stringify(data); 
  return template.evaluate();
}

HTML側 (.html)

HTML

<script>
  // エラーになる！
  const data = JSON.parse('<?!= jsonData ?>');
</script>

発生するエラー

ブラウザのコンソールに以下のようなエラーが出ます。

Uncaught SyntaxError: Bad escaped character in JSON
または
Uncaught SyntaxError: Unexpected token

❌ なぜ普通に埋め込むと失敗するのか？

「日本語や特殊記号が含まれているからエラーになる」と思われがちですが、実は { msg: "Hello" } のような最もシンプルなデータであっても、以下の方法ではエラーになります。

JSON.stringify はデータを {"key":"value"} のような文字列に変換しますが、この中には必ずダブルクォーテーション(") が含まれます。これをHTMLやJSのコード内に埋め込むと、HTMLの属性を閉じる " や、JSの文字列を閉じる ' と衝突してしまい、構文が破壊されるためです。

失敗するメカニズム

データのJSON化
JSON.stringify は、仕様上必ず キーと値をダブルクォーテーション(") で囲みます。
JavaScript
```
// 元データ: { msg: "Hello" }
// 変換後:   {"msg":"Hello"}
```
HTMLへの埋め込み（衝突）
これを HTML の属性（valueなど）に埋め込むと、HTMLの属性を囲む " と JSONデータ内の " が衝突します。
HTML
```
<input type="hidden" value="<?!= jsonData ?>">

<input type="hidden" value="{"msg":"Hello"}">
```
ブラウザの解釈
ブラウザは value="{" までを属性値とみなし、そこで属性を閉じてしまいます。その後に続く msg":"Hello"}" が「タグ内の不正な文字（ゴミ）」として扱われ、SyntaxError や Malformed HTML（形式が正しくないHTML）エラーが発生します。

結論

つまり、データの中身に関わらず、「JSON文字列を生のままHTML属性（valueなど）に埋め込むこと」自体が、構造的に不可能です。

これに加えて、GASのテンプレートエンジン特有の挙動により、改行コードやエスケープ文字（\）が含まれると Bad escaped character エラーも併発するため、問題はより深刻化します。

だからこそ、「引用符も記号も含まない形式（Base64）」に変換して受け渡す方法が、唯一の安全な解決策となります。

✅ 解決策：Base64エンコード（UTF-8対応）× 隠しフィールド

この問題を解決する鉄板の方法は以下の通りです。

サーバー側: データを Base64 にエンコードして渡す。（" や改行を英数字に変換して無害化する）
受け渡し: <script>タグ内ではなく、<input type="hidden"> に埋め込む。（JSの構文エラーリスクをゼロにする）
クライアント側: 受け取ったBase64を、日本語（UTF-8）に対応した方法でデコードする。

1. サーバー側の実装 (.gs)

GAS標準の Utilities を使ってエンコードします。
ポイントは、そのままエンコードするのではなく、一度 UTF-8 のバイト配列 (getBytes()) に変換してから WebSafe な Base64 にすることです。これをしないと日本語が文字化けします。

JavaScript

// ✅ 解決策のサーバー側コード (.gs)
function doGet() {
  // 引用符、改行、絵文字を含んだ「壊れやすい」データ
  const data = {
    id: 101,
    name: "山田 太郎",
    memo: "ダブルクォート(\")も、\n改行も、絵文字(🎉)も、\n全て文字化けせずに渡せます。"
  };

  const template = HtmlService.createTemplateFromFile('index');
  
  // 【重要】JSON化 -> UTF-8バイト配列 -> Base64(WebSafe)エンコード
  const jsonString = JSON.stringify(data);
  const blob = Utilities.newBlob(jsonString);
  template.encodedData = Utilities.base64EncodeWebSafe(blob.getBytes());

  return template.evaluate()
    .addMetaTag('viewport', 'width=device-width, initial-scale=1')
    .setSandboxMode(HtmlService.SandboxMode.IFRAME);
}

2. クライアント側の実装 (.html)

HTML側では、隠しフィールドで受け取り、JSでデコードします。 window.atob() は日本語（マルチバイト文字）を直接扱うと文字化けするため、Uint8Array と TextDecoder を組み合わせて復号します。

HTML

<!DOCTYPE html>
<html>
  <body>
    <input type="hidden" id="server-data" value="<?!= encodedData ?>">

    <h1>データ受け渡しテスト</h1>
    <div id="output"></div>

    <script>
      document.addEventListener('DOMContentLoaded', () => {
        // 1. 隠しフィールドからBase64文字列を取得
        const base64String = document.getElementById('server-data').value;
        
        // 2. デコードしてオブジェクトに戻す
        const data = decodeBase64Json(base64String);
        
        console.log(data);
        document.getElementById('output').innerText = data.memo;
      });

      /**
       * 日本語対応 Base64デコード関数
       * @param {string} base64String
       * @return {Object|null}
       */
      function decodeBase64Json(base64String) {
        if (!base64String) return null;
        try {
          // WebSafe Base64 ('-' -> '+', '_' -> '/') に置換
          const base64 = base64String.replace(/-/g, '+').replace(/_/g, '/');
          
          // ブラウザ標準機能でデコード (この時点ではLatin1)
          const binaryString = window.atob(base64);
          
          // バイナリ文字列を Uint8Array (バイト配列) に変換
          const len = binaryString.length;
          const bytes = new Uint8Array(len);
          for (let i = 0; i < len; i++) {
            bytes[i] = binaryString.charCodeAt(i);
          }
          
          // TextDecoder で UTF-8 として文字列化 (これで文字化けしない！)
          const decoder = new TextDecoder('utf-8');
          const jsonString = decoder.decode(bytes);
          
          return JSON.parse(jsonString);
        } catch (e) {
          console.error("Base64 Decode Error", e);
          return null;
        }
      }
    </script>
  </body>
</html>

まとめ

GASからHTMLへ複雑なデータを渡すときは、以下の手順を踏むのが最も確実です。

GAS側: JSON.stringify → Utilities.newBlob().getBytes() → Utilities.base64EncodeWebSafe
HTML側: <input type="hidden"> で受け取る
JS側: atob → Uint8Array → TextDecoder('utf-8') → JSON.parse

この構成にしてからは、Bad escaped character や Unexpected token といったエラーには一切悩まされなくなりました。日本語や特殊記号を含むデータを扱う際は、ぜひこのパターンを使ってみてください。