2020/1/22にNTTドコモが6Gの技術コンセプトを出しました。実は、このコンセプトの裏返しが「プロが考える5Gの弱点」になっています。皮肉ながら、5Gの弱点を整理する意味で、とても秀逸なコンセプトあり、解説します。
(お知らせ)ドコモ、6Gに向けた技術コンセプト(ホワイトペーパー)公開
1. <6G>コンセプトの各項目へのコメント
1.1. 超高速大容量通信
ここは、5Gの量的な拡張であるため、特筆すべきところはありません。
1.2. 超カバレッジ拡張
1.2.1. どこでもGbpsレベルのサービス提供、エリアカバー率100%
逆にいえば、5Gはエリアカバレッジに課題があるということです。これは、私の記事での主要論点の1つであり、追認されました。
1.2.2. 新たなサービスエリア(空、海、宇宙、・・)
本領域は5Gとは大きな関連はありませんが、日本ではソフトバンク社が強くアピール1している分野であり、現時点から数年後までのフロンティアです。ドコモとしてもキャッチアップを図る意思だと考えます。10年後で良いのでしょうか・・?
1.3. 超低消費電力・低コスト化
1.3.1. 充電不要な超低消費電力端末
逆にいえば、5Gは低消費電力化が難しいということです。私の記事ではカバーされていない話題ですが、関連記事がありました2。
1.3.2. 低価格ミリ波デバイス
逆にいえば、ミリ波デバイスは高い、ということです。私の一連の記事では、カバレッジを理由にミリ波の普及はかなり厳しいと論じていますが、細かいデバイスコストまでは言及していませんでした。
1.4. 超低遅延
1.4.1. E2Eでの超低遅延<1ms
逆にいえば、5Gは無線網内区間だけ超低遅延なのであり、クライアント〜サーバーのエンドツーエンドの遅延には課題が残る、ということになります。これは、私の記事での主要論点の1つであり、追認されました。
私の記事では、さらに、アプリケーション含めたエンドツーエンドの遅延にも言及していますが、そこまで対応するのは6Gでも無理なのですね。
1.4.2. 常時超低遅延
逆にいえば、5Gの無線網区間超低遅延というのも、保証値ではない、ということです。私の記事ではカバーされていない話題です。
1.5. 超高信頼通信
逆にいえば、5Gでは、製造ラインの制御とか、自動運転(の制御)とかに使うのは、無理であるこということになります。私の記事でも言及しています。
1.6. 超多接続&センシング
1.6.1. 超多数AIデバイス > 1000万デバイス/1平方km
ここは、5Gの量的な拡張であるため、特筆すべきところはありません。AIに文脈上の意味はありません。
1.6.2. 超高精度位置情報サービス < 誤差10cm
逆にいえば、5Gの位置情報は誤差数10cmである、ということです。この分野もソフトバンクは現時点で訴求しています3が、10年後でよいのでしょうか?
2. まとめ
まとめると、今回の6G技術コンセプトは、以下で構成されていました。
- 私の記事の追認
- 私の記事でもカバーできていない5Gの弱点の明確化
- 5Gの単純な量的拡張
- 5Gの範疇ではないが、他社がすでに別手段で実現していることを6Gの中で再発明したいとドコモが考えるもの
狙いと異なる使い方をして申し訳ありませんが、ドコモの技術者は5Gの限界を深く理解しており、高い技術力を持っていると思いました。