はじめに
こちらは エーピーコミュニケーションズ Advent Calendar 2025 1日目の記事です!
2025年を振り返ると、業務も生成AIを使う場面が周囲でも一気に増えました。
弊社でも全社導入されており、実際にこの記事などのアイデア整理や下書きなどにも利用しております。
一方で、技術に詳しくない友人などからもAIに関する話題が増えるとともに、「結局どう使うのが正しいのか分からない」、「怖くて業務に使い切れない」という話を聞くことが多く感じます。
エンジニアの友人でさえもあまり生成AIを活用できていない現状を耳にします。
この様な状況の背景は、技術そのものよりも基礎的な理解の浅さや新しいことを知ること自体を手間に感じてしまうことが原因だと考えています。
こうやって記事にまとめている自分自身でさえも、日々更新されていくAIを取り巻く環境変化に疲れ、しばらくAI関連技術から離れることがあります。
この記事では、「これだけ読んだら大丈夫!」レベルとして「まずここを押さえておくと安定的に利用できる」と感じたポイントを、専門用語をできるだけ避けながら整理しています。
1. 背景:2025年は「生成AIが当たり前になった年」だが、活用は追いついていない
2025年は、社会的にも仕事で生成AIを使うことが特別ではなくなりました。
大企業の9割以上が生成AIを導入済という調査もあり、職場に生成AIがあること自体は珍しくありません。
ただ、導入が進んだからといって、誰もがうまく使えているかといえば話は別です。
データ的にも日常的に使っている社員は2割程度、導入効果を実感できている企業は1割程度にとどまるそうです。
つまり「普及はしたが、うまく活用できていない」というギャップが発生しており、使い方の土台が整理できていないことが原因の一端になる考えています。
まずその土台を整えることを目的にして整理しています。
参考データ:
- 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2025(速報値)」
- ICT総研「2025年7月 法人向け生成AIサービス利用動向調査」
- PwC Japan「生成AIに関する実態調査 2025春」
- デロイト トーマツ「プライム上場企業における生成AI活用調査2025」
2. 整理:「AI」には3つの種類がある
まず「なんとなく使っている」状態から抜け出すには、AIとは何かを知る必要があります。
「AI」と一括りにしがちですが、大きく3つのタイプがあります。
-
識別系AI:「これは何?」を見分ける
スマホの顔認証、写真アプリの自動分類(犬、猫、風景)など。大量の画像から「この特徴があれば犬」とパターンを学習しています。 -
予測系AI:「次はこれでしょ?」と当てる
Amazonの「あなたへのおすすめ」、YouTubeの「次の動画」、Spotifyのプレイリスト自動生成など。過去のデータから「この人は次にこれを好む確率が高い」と予測します。 -
会話系AI:「言葉を組み立てる」
ChatGPT、Claude、Geminiなど、質問に答えたり文章を書いたりするタイプ。膨大なテキストから「この質問には、この言葉の組み合わせが適切」と生成します。
普段「AI」と呼ばれているものとしては、主に3番目の会話系AIとなるため以降は、このタイプ中心の話になります。
3. 仕組み:AIの本質は「パターン認識の超高速マシン」
生成AIの本質はこの一行で説明できる
AIは「次に来る言葉を確率で予測して並べる仕組み」です。
AIは「考えて」いるわけではなく人間のような知性があるわけでもありません。
大量のデータから「このパターンが来たら、次はこれが来る確率が高い」と予測しているだけです。
この本質を理解すれば、AIの得意・不得意、信頼できる範囲、適切な使い方が見えてきます。
身近な3つの例えで理解する「AIの仕組み」
- 予測変換
「よろ」→「よろしく」
これと同じ仕組みで文章を作っています。 - Youtubeのレコメンド機能
「似た動画の視聴者の傾向から、よく選ばれてきた動画」を出すだけ。 - レシピの共通点
数万のレシピを眺めて「カレーならこれが定番だろう」と組み合わせているだけ。
つまり、もっともらしいけれど間違えることがあるのは当然ということです。
だからもっともらしい誤りが起きる
AIは「正確さ」ではなく「それっぽさ」を返すため、以下は普通に間違えます。
- 固有名詞(人名、会社名、製品名)
- 数字(統計データ、年号、金額)
- 最新情報(学習データの範囲外の情報)
- 専門的な内容(医療、法律、技術的詳細)
仕組みを理解することで、どこを疑うべきかが自然と見えてきます。
4. ガイドライン:日常業務で安全に使うための基本ルール
日常業務で AI を利用するうえで、まずはここで示す基本事項を押さえておけば、重大なトラブルはほぼ回避できます。
ガイドライン1:AIの出力は「素材」であり完成品ではない
- コピペ提出は避ける
- 編集なしで使うと誤情報のリスクがある
- 最終的な責任は AI ではなくユーザーにある
AI の出力は、あくまで叩き台として扱うのが基本です。
ガイドライン2:固有名詞・数字・事実は必ず人間が検証
AIが特に間違えやすいのは次のような情報です。
- 人名
- 会社名・サービス名
- 金額
- 年号
- 統計・数字
- 専門用語(法律・医療など)
ガイドライン3:AIに入力してはいけない情報がある
絶対に入れてはいけないもの:
- 顧客情報
- 契約内容
- 財務データ
- APIキー・パスワード
- 社外秘プロジェクト
- 公表前の仕様やコード
- 人事・評価情報
学習オフであっても情報は外部サービスに送信されるため、「入力すべきでない情報」は確実に避ける必要があります。
この前提さえ押さえておけば、大きなトラブルは回避できます。
ガイドライン4:AIに任せていい仕事/任せてはいけない仕事
AIが得意なこと(任せて良い)
- パターン化された作業(定型文作成、データ分類、レポート作成)
- 大量データの処理(数万件のデータ分析、要約、高速検索)
- 既存知識の組み合わせ(アイデアの切り口、企画の骨子)
- 繰り返し作業(画像の一括編集、コードの自動生成)
AIが苦手なこと(任せてはいけない)
- 文脈の深い理解(皮肉、行間を読む、暗黙の了解、空気を読む)
- 独自の価値判断(倫理的判断、何を優先すべきか、重要度の判定)
- 真に新しい概念の創造(学習データに存在しないもの)
- 感情を込めた表現(本当の共感、心からの励まし、温もりのある言葉)
この境界線を知れば、「AIに任せること」「人間がやること」が明確になります。
ガイドライン5:プロンプトは具体的に書く
悪い例:
マーケティングについて教えて
良い例:
BtoB SaaSのマーケティング戦略を、飲食店の集客に例えて3つ説明して。
各戦略には具体的な実施例も付けてください。
AIは文脈を深く理解できないので、欲しい答えの形まで具体的に指示することが重要です。
ガイドライン6:生成内容を確認するポイント
- 機密情報・禁止情報が含まれていないか
- 固有名詞や数値などの事実関係を確認したか
- 重要な判断をAIに任せていないか
- 出力が目的や想定読者に合っているか
- 内容と表現を人間が確認・編集したか
5. 実践している「AI活用3ステップ」
実際に利用しているAI活用法を紹介します。
ステップ1:検索よりも具体的に指示する
ガイドライン1の内容です。
最初の指示が具体的であればあるだけ目的に近い出力が得られます。
「BtoB SaaSのマーケティング戦略を、飲食店の集客に例えて3つ説明して。各戦略には具体的な実施例も付けてください」
ステップ2:「完成品」ではなく「たたき台」として扱う
ガイドライン2の内容です。
AIは確率で答えを出すので100%正確ではないため、次のような点は必ず確認します。
- 数字(統計データ、年号、金額)
- 固有名詞(人名、会社名、製品名)
- 最新情報
- 専門的な内容(医療、法律、技術的詳細)
「AIが作った下書きを、自分の知識と判断で仕上げる」というスタンス。
ステップ3:「考える時間」ではなく「作業時間」を減らす
AIに任せるのは、以下のようにパターン化できる作業です。
- 定型文作成(メール返信、議事録の骨子、報告書のフォーマット)
- コードの骨格生成(関数の雛形、テストコードの作成)
- 要約(長文ドキュメントの要点整理、技術記事の概要作成)
- アイデア出し(機能の名前候補、UI設計の選択肢)
- 翻訳・校正(英語ドキュメントの日本語化、文章の推敲)
逆に、最終的な技術判断、セキュリティ判断、優先順位の決定は必ず人間が行います。
6. 勘違されがちな「AIの誤解4つ」
日常的に便利に使っていると自分でも勘違いしてしまいそうになりますが、これらの誤解が起きやすいです。
誤解1:AIは「思考」している
統計的な確率計算をしているだけです。
意識も、理解も、感情もありません。
「次に来る言葉の確率」を計算しているに過ぎません。
誤解2:AIは「全て知っている」
学習したデータの範囲内でしか答えられません。
学習データに含まれていない情報は答えられません。
誤解3:AIの答えは「常に正確」
「最も確率が高い答え」を出しているだけで、正確性は保証されていません。
特に、数字や固有名詞、専門的な内容では間違いが頻発します。
これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
誤解4:AIには「創造性」がある
AIが生成するものは、全て既存データの組み合わせです。
真に新しい概念を生み出すことはできません。
ただし、その組み合わせ方が斬新に見えるため、創造的に感じられることはあります。
7. 実務で使える「実践プロンプト3選」
ここからは、実際に業務で使える汎用性の高いプロンプトを紹介します。
プロンプト1:長文の要約
以下の文章を、3つの箇条書きで要約してください。
各項目は1文(30字以内)にしてください。
要約の対象:重要なポイント、アクションアイテム、期限
[長文を貼り付け]
プロンプト2:技術ドキュメントの説明文作成
以下の技術的な内容を、非エンジニアにも分かりやすく説明する文章を作成してください。
【対象読者】技術的な詳細は分からないが、概要を理解したい人
【文字数】300字以内
【含める要素】
1. 何ができるのか(機能)
2. なぜ便利なのか(メリット)
3. どんな場面で使うのか(ユースケース)
[技術的な内容を貼り付け]
プロンプト3:企画のアイデア出し
[テーマ]について、以下の条件で5つのアイデアを出してください。
【条件】
- ターゲット:[具体的なペルソナ]
- 予算:[金額や規模]
- 期間:[実施期間]
- 制約:[技術的制約、リソース制約など]
【出力形式】
各アイデアには以下を含めてください:
1. アイデア名(10字以内)
2. 概要(50字以内)
3. 実現方法(具体的なステップ3つ)
4. 想定される効果
これらをコピペして、[ ]内を自分の状況に置き換えるだけで使えます。
注意:機密情報の取り扱い
業務で使う際は、機密情報や個人情報をAIに入力しないよう注意してください。
特に顧客情報、社内の機密データ、認証情報などは絶対に入力しないでください。
(設定などで学習されないAIもありますが、マスキングなどをする形で基本的に入れない様にしておくと安心です。)
8. おわりに
この記事では、生成AIを業務で扱ううえで最低限押さえておくと安定するポイントを、できるだけ平易な言葉で整理しました。
生成AIが当たり前になった今、必要なのはどこが強みでどこが弱いのかを把握したうえで、上手に付き合っていくことだと考えています。
生成AIらしい文章というだけでも嫌厭されがちな今だからこそ正しく理解して正しく便利に使っていきましょう。
この土台があるだけで、日々の業務での使い勝手が大きく変わり、誤情報リスクの回避もしやすくなります。
もし実際に運用してみて気づいた点や工夫があれば、共有いただけると非常に参考になります。