インストールなしで使えるPython環境
Pythonを学ぶためには、Pythonインタープリタはもちろんですが、IDEも必要です。最近は、(IDEではありませんが)VScodeがよく使われています。また、学習の初期段階で、小さなコードを試すには、Jupyter Notebookがとても便利です。
そして、AIも使えないと困りますね。定番はGitHub Copilotです。学生さんなら、(申請さえすれば)無料でProバージョンが使えます。例えば、GPT-5.1-codexのような最新版を自由に使えるようになります。
そこで、これらをまとめてセットアップするスクリプトを作成しました。完全にポータブルな環境が5~10分程度で生成されます。ポータブルですから、インストールなしで、スクリプトの実行が終わったらそのまま実行できます。仮想環境も必要ありません。スクリプトで必要なだけ環境を作れるからです。いくつ環境を作っても、互いに影響しません。
セットアップ作業
セットアップは、setup.batをダブルクリックで実行するだけです。それだけで完了します。
GitHubからダウンロード
スクリプト等はGitHubにあります。次からダウンロードまたはgitで入手してください
ファイル構成
スクリプトは次のような構成です。
./portable-python-vscode
├─config
│ ├─cleanExtensions.txt VScode拡張機能のリスト
│ └─settings.json ダミー用
├─workspace
│ ├─.vscode
│ │ ├─locale.json 日本語モードの指定
│ │ └─settings.json VScodeの設定
│ └─sample
│ ├─sample.ipynb サンプルのJupyter Notebookファイル
│ └─sample.py サンプルのPythonソースコード
├─launch-vscode.bat VScode起動用バッチファイル
├─README.md
├─setup.bat セットアップ実行用バッチファイル
└─setup.ps1 セットアップスクリプト(本体)
どこか適切な場所(ローカルドライブ推奨)に置いて、setup.batをダブルクリックして実行します。ネットワークの速度にもよりますが、5~10分程度で完了します。
完了後のファイル構成は次のようになります。
./portable-python-vscode
├─python
├─vscode
├─workspace
│ ├─.vscode
│ │ ├─locale.json 日本語モードの指定
│ │ └─settings.json VScodeの設定
│ └─sample
│ ├─sample.ipynb サンプルのJupyter Notebookファイル
│ └─sample.py サンプルのPythonソースコード
├─launch-vscode.bat VScode起動用バッチファイル
└─README.md
必ずlaunch-vscode.batを使って起動してください。
起動時に、.vscode/settings.json等を読み取って反映します。
セットアップされる内容
VScodeと重要な拡張機能、そして、Pythonインタプリターと主要なライブラリをセットアップします。Pythonライブラリは多くの分野を網羅しています。下記のライブラリのリストを見てください。
VScodeの拡張機能はミニマムなセットです。開発する分野に応じて、VScodeのメニューから必要な拡張機能を追加してください。
PythonとVScode
- Python 3.13.0 (Embeddable版)
- Visual Studio Code (Portable版)
インストールされるVS Code拡張機能一覧
Python開発
| 拡張機能名 | 説明 |
|---|---|
| Python | Python言語サポート |
| Pylance | Python言語サーバー(高速・高機能) |
| Python Debugger | Pythonデバッガー |
| Python Environments Manager | Python環境管理ツール |
AI支援
| 拡張機能名 | 説明 |
|---|---|
| GitHub Copilot | AIコード補完 |
| GitHub Copilot Chat | AIチャット機能 |
Jupyter
| 拡張機能名 | 説明 |
|---|---|
| Jupyter | Jupyter Notebook サポート |
| Jupyter Keymap | Jupyterキーバインド |
| Jupyter Cell Tags | セルタグ管理 |
| Jupyter Slide Show | スライドショー機能 |
その他
| 拡張機能名 | 説明 |
|---|---|
| Prettier | コード整形ツール |
| Japanese Language Pack | 日本語言語パック |
インストールされるPythonライブラリ一覧
1. 開発基盤ツール
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| pip | 最新版 |
| wheel | パッケージビルドツール |
2. コード品質・開発支援
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| black | コード整形ツール |
| pylint | 静的解析ツール |
| flake8 | コード品質チェック |
| autopep8 | PEP8準拠の自動整形 |
| isort | import文の自動整理 |
| mypy | 型チェックツール |
3. ユーティリティ
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| requests | HTTP通信ライブラリ |
| python-dotenv | 環境変数管理 |
| tqdm | プログレスバー表示 |
| colorama | ターミナルの色付け |
4. 数値計算・データ分析・可視化
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| numpy | 数値計算の基盤 |
| pandas | データ分析 |
| matplotlib | グラフ描画 |
| scipy | 科学技術計算 |
| seaborn | 統計データ可視化 |
5. Web開発
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| flask | Webフレームワーク(軽量) |
| fastapi | モダンなAPIフレームワーク |
| uvicorn | ASGIサーバー(FastAPI用) |
| beautifulsoup4 | HTMLパーサー(スクレイピング) |
| lxml | XML/HTMLパーサー |
6. ファイル処理
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| openpyxl | Excel読み書き |
| pillow | 画像処理 |
| pyyaml | YAML読み書き |
| xlsxwriter | Excel高度な出力 |
| plotly | インタラクティブなグラフ |
7. テスト・モックデータ
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| pytest | テストフレームワーク |
| faker | ダミーデータ生成 |
8. Jupyter環境
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| notebook | Jupyter Notebook |
| jupyterlab | JupyterLab |
| ipykernel | IPythonカーネル |
| ipywidgets | インタラクティブウィジェット |
| jupyterlab-lsp | Jupyter用LSP |
| python-lsp-server | Pythonの言語サーバー |
9. Webアプリケーション
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| streamlit | データアプリ開発フレームワーク |
10. デバッグ
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| debugpy | Python デバッガー(VS Code用) |
11. ゲーム開発
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| pygame | 2Dゲーム開発 |
| arcade | 初心者向けゲームライブラリ |
| pyglet | OpenGLベースのゲーム開発 |
12. 機械学習・統計
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| scikit-learn | 機械学習ライブラリ |
| statsmodels | 統計モデリング |
13. データベース
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| sqlalchemy | ORM(データベース抽象化) |
| psycopg2-binary | PostgreSQL接続ドライバ |
14. API開発強化
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| pydantic | データバリデーション |
| httpx | 非同期HTTPクライアント |
15. 日本語処理
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| janome | 日本語形態素解析 |
16. ターミナル出力
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| rich | リッチなターミナル出力 |
17. カスタムライブラリ
| ライブラリ名 | 説明 |
|---|---|
| kbinput | キーボード入力ライブラリ(カスタム) |
使い方
① launch-vscode.batをダブルクリックして起動します。ここで、拡張機能がロードされるタイミングが遅れて、英語モードの表示になる場合があります。
② 英語モードで表示された場合は、一度終了し、もう一度起動し直すと日本語モードで起動します。
③ まず、VScodeにPythonインタープリタを認識させる必要があります。
④選択ウィンドウが開くので、[python.defaultInterpreterPath 設定でPythonを使用する・・・] をクリックします

④もう一度、Pythonのパスを設定するウィンドウが開きますが、×をクリックして閉じます

以上でPythonを認識したので、これ以降は自由にコードを書いて実行できます。
なお、sample.ipynbファイルは、Jupyter Notebookのファイルです。開いて確認してください。
⑤Copilot
Copilot(AIエージェント)を使うには、事前にGithubのアカウントを取得しておく必要があります。また、ログイン認証は2段階認証にしておかなくてはいけません。
その上で、初回だけ、GitHubにログインしてアカウントを接続する作業が必要です。上の画面は、まだ接続していな状態です。右下隅の[Signed out]と書かれているCopilotアイコンをクリックし、画面の指示に従って接続してください。
いろいろなカスタマイズ
画面のテーマの変更
画面のテーマ色はLight+です。デフォルトのDark+にするには次のようにします。
- VS Code の 左の下端にある歯車(⚙)アイコンをクリック
- 「テーマの選択(Color Theme)」 をクリック
- テーマ一覧が表示される
- 「Default Dark+」 を選ぶ
スクリプトのカスタマイズ
スクリプトのカスタマイズは比較的簡単です。違うバージョンのPythonをインストールしたりできます。VScodeの拡張機能やpythonのライブラリも追加や削除できます。
異なるバージョンのPythonに変更する
例えば、3.14.0に変える時は、setup.ps1ファイルの次の部分を変更します。青い背景部分を3.14.0、または314に変更するといいでしょう。https://www.python.org/ftp/python をウェブでのぞいてみると、いろいろなバージョンの詳細がわかります。
ただ、Pythonのバージョンが新しすぎると、VScodeやその拡張機能が対応していないこともあるので、新しければいいというものではありません。慎重に決定してください。
VScodeの拡張機能
VScode本体は毎月バージョンアップされるので、スクリプトでは最新安定版をダウンロードする設定にしています。変更するのは拡張機能です。config/cleanExtensions.txtに、セットアップする拡張機能のリストがあります。内容は次の通りです。
config/cleanExtensions.txt
esbenp.prettier-vscode
github.codespaces
github.copilot
github.copilot-chat
github.remotehub
github.vscode-github-actions
ms-ceintl.vscode-language-pack-ja
ms-python.debugpy
ms-python.python
ms-python.vscode-pylance
ms-python.vscode-python-envs
ms-toolsai.jupyter
ms-toolsai.jupyter-keymap
ms-toolsai.jupyter-renderers
ms-toolsai.vscode-jupyter-cell-tags
ms-toolsai.vscode-jupyter-slideshow
ms-vscode.remote-repositories
この内容を変更すればセットアップする拡張機能を変更できます。
拡張機能の名前は、一度手動でセットアップした後、vscodeフォルダのある場所で、次のコマンドを実行するとわかります。
.\vscode\bin\code.cmd --list-extensions
これで名前を調べて、cleanExtention.txtに追加するなどしてください。
Pythonライブラリの編集
スクリプトの85行目以降に、インストールする項目が並んでいます。
# pipのアップグレード
Write-Host " pip をアップグレード中..."
& ".\python\python.exe" -m pip install --upgrade pip
# wheelのインストール
Write-Host " wheel をインストール中..."
& ".\python\python.exe" -m pip install wheel
# コード整形・静的解析ツール
Write-Host " [1/17] コード整形・解析ツールをインストール中..."
& ".\python\python.exe" -m pip install black pylint flake8 autopep8 isort mypy
# ユーティリティ系
Write-Host " [2/17] ユーティリティをインストール中..."
& ".\python\python.exe" -m pip install requests python-dotenv tqdm colorama
--- 以下省略 ---
この例にならって、追加したいライブラリを記述してください。
インストール後の追加などは、VSCodeで、[表示]メニューから[ターミナル]を開くと、pipコマンドでライブラリの追加や削除ができます。
ただし、python -m pip ~のように、python経由で実行してください。pipは、環境を生成した時のPythonのパスを記憶しているので、環境を移動している場合は、pip単体で起動すると動作しないからです。
次はpip listを実行してみた例です。
追記:
2025-12-27
tcl/tkはポータブル版のPythonからは削除されていて使えないようになっています。
そこで、非ポータブル版のpythonからtcl/tkの関連コードをコピーすることにより使えるようにしました。





