今、ぼくのクリニックは、S製薬主導で開業医が中心となって参加している、スマホをつかったコロナウイルス感染の予後に関する臨床試験に施設登録している。全国で2024.1から症例登録がはじまり、ようやく今月末には、予定されていた10000例の登録が達成されそうな気配である(症例がなかなか集まらず、何回か、登録期間の延長がおこなわれてきた)。ただ、スマホをもたない主義のぼくが、スマホを活用とした臨床試験に施設参加するというのは、なんとも皮肉なのである。
スマホを用いるといっても、ただのアンケート調査とは違う臨床試験である。おそらく10000例登録という数字も、プロの統計屋が、主要評価項目の統計学的結果がでるように決めた数だろう。また、患者への説明、同意文書取得に要する、文書量・所要時間量は、クリニックの診察時間を大いに削る。また、登録者は二つのアプリ(症状記入アプリ、試験説明補助アプリ)をダウンロード。クリニックがデータセンターに連絡して取得したIDと初期パスワードを登録者にわたしてアプリがはじめて開く。経過報告は最初の1週間毎日、だけでなく、(月1の報告ではあるが)6か月後まで続く。その負担は、「協力費」はたった5000円でいいのだろうか?と思えるくらい結構大変だ(せめて、ゾコーバやラゲブリオが買える1.5万円~3万円くらいに引き上げてもいいのでは?とも思えるほど)。また、試験期間延長のたびに、新たな作成された患者への説明文書が送付されてきて、患者にバージョン違いの文書をわたすと、「きつい」お叱りがデータセンターからくる。一方、スマホ入力は、登録者が単独で行うので、どの程度の信頼性があるのか危ぶまれる。など、問題点をあげればきりがないが、一時は10000例登録さえ危ぶまれたが、この夏のコロナの小流行(第12波?第13波?)でとにもかくにもゴールにどりつけそうなことはめでたい、とせねばならなるまい。
この、スマホ臨床試験の詳細は、主導している方たちにおまかせするしかない。ただ、個人的に、このストレスの多い、臨床試験に参加していているうちに、以下のようなアプリを思いついた。技術的には、なんの変哲もないQRコード生成とFlaskでのWEBサーバーを組み合わせただけ。例えば、買い物や注文でつかわれているQRコードの作り方を知っている人なら、誰でも作れるものである。つまり、ここでの新規性は、そのデザインのみである。だが、非常に単純であるが、(少なくとも今までぼくはみたことがないという意味で)新規性と、いろいろな問題をうまくカバーする利点があると思う。
薬剤師がそのサイトにログイン。
「XX薬(具体名)に関してアンケート用QRコードを作成」のボタンをおすと、「そのログインした薬剤師のID,と日時の入った、アンケート用紙」がよみとれるQRコードが作成される。
患者が、自分のスマホでこのQRコードをよみとると、アンケート記入サイトへ(だが、薬剤師ID,日時ごとに、異なるアンケート記載サイトとなる)。副作用、感想等を記入。返信用のメールを記載後、アンケート結果送信。
数か月後、その薬に関するアンケートの集計結果と、謝礼(アマゾンギフトカード)がそのアンケート記入者に送られる(ただし謝礼については、ケースバイケースで、必ずしもこのやり方でなくてよい)。
このシステムで「医薬品使用後のアンケート調査を、〈製薬会社主導ではなく〉販売した薬局の薬剤師たちが主導でおこなう」ことができる。薬剤師みずから(もちろん医師でもいいが)、そのQRコードを作成することで、アンケート対象者の正確性がたもたれ、患者がその(ID,日時情報のはいった)QRコードをよみとることで、単なるアンケートより、正確性が向上し、また匿名性も保持される、と思われる。
現在、大学などの臨床治験や服薬追跡調査は手続きが煩雑で、現場の声が十分に収集できないと感じているが、本システムは、薬剤師(あるいは医師)の判断で簡便にアンケート収集が可能となり、患者の声を「現場から」収集できる革新的な方法だと考えている。
薬剤師(医師)主導のアンケート収集を実現するQRコードシステム
■ 背景
・服薬後アンケートは製薬会社主導が多く、薬剤師が収集・分析に関与しにくい現状があります。
・治験や副作用調査も煩雑な手続きが多く、現場の声が十分に集まりません。
■ 解決策
・薬剤師がワンクリックでQRコードを生成し、患者がスマホで読み取って匿名アンケートを送信できます。
・QRコードには薬剤師IDと発行日時が自動的に紐付けられ、匿名性と信頼性を両立しています。
■ システム概要
・Python(Flask)で構築した軽量なWebアプリケーション
・QR画像生成、アンケート収集、CSV出力に対応
・メールアドレスを任意記入とし、謝礼送付にも対応可能
■ 特徴
✔ 匿名・簡便
✔ 薬剤師(あるいは医師)の判断で導入可能
✔ 店舗現場への導入・実証がしやすい
■ 想定利用シーン
・新薬処方後の副作用調査
・市販薬購入後の満足度調査
・OTC製品や健康食品の体験フィードバック