2025年10月9日、AWSのBI機能であるAmazon Quick Suiteがリリースされました。
従来のAmazon QuickSightというBI分析サービスは、Amazon Quick Suiteに統合され、AIエージェントなどの新機能が追加されています。
(※新機能に関する詳細はこちらの公式ブログをご参照ください。)
「この変更、コストへの影響無いよね?」
という疑問が現場で出てきたため、再確認も兼ねて調査してみました。
結論
Amazon Quick Suite のリリースと同時に、ロールに応じて次のような料金変更があります。
- Reader → 変更なし ($3 per user/month)
- Reader Pro → 変更なし ($20 per user/month)
- Author → 変更なし ($24 per user/month)
- Author Pro → 値下げ (\$50 → $40 per user/month)
また、$250のインフラストラクチャ料金(Proユーザーが存在し、Q&Aを有効化している場合に発生)に関しても引き続き変更はありません。
参考:Reimagine business intelligence: Amazon QuickSight evolves to Amazon Quick Suite
このことから、従来のAmazon QuickSight機能のみ利用している分には、直接的なコスト増の懸念は無さそうです。
ただし、Amazon Quick Suiteから使用できる以下の新機能では、それぞれ従量課金の仕組みがあるため注意が必要です。
- Quick Research
- Quick Flows
- Quick Automate
- Quick Index
これらの新機能の料金体系について詳しく解説していきます。
Amazon Quick Suiteのサブスクリプション
Amazon Quick Suiteには以下の2種類のサブスクリプションが用意されています。
これらのサブスクリプションの契約をすることによって、Amazon Quick Suiteから提供される新機能を利用することが可能です。
-
Professional: $20/月
ビジネスユーザー向けのAmazon Quick Suiteの主要機能のみ利用が可能。
QuickSightのReader Proロールを使用していたユーザーは、Professionalサブスクリプションで利用できる機能にアクセス可能。 -
Enterprise: $40/月
Amazon Quick Suiteで提供されるすべての機能が利用可能。Quick Automateの作成等、高度な機能も利用できる。
Amazon QuickSightのAuhtor Proロールを使用していたユーザーは、Enterpriseサブスクリプションで利用できる機能にアクセス可能。
従量課金要素について
基本的にはAmazon Quick Suiteのサブスクリプションの範囲内で新機能を利用することができます。
しかし、新機能を多用する場合には追加の従量課金が発生するかもしれません。
それぞれの機能の従量課金要素について解説します。
Quick Research、Quick Flows、Quick Automateの従量課金
これらの機能は 「エージェント時間」 という単位で料金が発生します。
エージェント時間について、公式の料金ページからの抜粋ですが、簡単にいえばエージェント機能の実行に要した時間と思っておけば良さそうです。
Advanced agentic capabilities like Quick Flows, Quick Automate, and Quick Research are measured by "agent hours" based on the amount of time they take to run. Each subscription includes sufficient agent hours to cover typical usage.
このエージェント時間は、それぞれのサブスクリプションに最初から含まれており、Quick Research用とQuick Flow・Quick Automate用でそれぞれ枠が設けられています。
各サブスクリプションにあらかじめ割り当てられているエージェント時間は以下の通りです。
| Professional | Enterprise | |
|---|---|---|
| Quick Research | 2時間 | 4時間 |
| Quick Flow・Quick Automate | 2時間 | 4時間 |
割り当てられているエージェント時間を超えて利用したい場合は・・・?
各サブスクリプションによって取るべき対応が変わります。
- Professional → Enterpriseにアップグレードが必要
-
Enterprise → 超過5分ごとに追加で従量課金が発生
- Quick Research: 1時間あたり$6
- Quick Flow・Quick Automate: 1時間あたり$3
料金シミュレーション
- 同じ月に、Quick Researchを5時間、Quick Flow・Quick Automateを4時間使用する
上記のケースで、各サブスクリプションでどのようになるのかシミュレーションしてみます。
- Professionalサブスクリプションの場合
Quick Researchについて、サブスクリプションの範囲で割り当てられているエージェント時間(2時間)を超過しています。
よって、Enterpriseプランにアップグレード(\$20 → $40)が必要です。
- Enterpriseサブスクリプションの場合
Quick Researchは、サブスクリプション内で割り当てられているエージェント時間(4時間)に加えて、1時間分の課金が発生します。
Quick Flow・Quick Automateは、サブスクリプション内の割り当て(4時間)でおさまるため、追加課金は発生しません。
よって、以下の計算で料金が算出されます。
\$40 (サブスクリプション料金) + $6 (Quick Researchエージェント時間/1時間の料金) * 1時間 = \$46
Quick Indexの従量課金
Quick Indexは、ソースコンテンツから抽出されたテキストを保存するための、ストレージ容量に基づいて料金が発生します。
テキスト保存で使用される追加ストレージは、1MBあたり$1です。
ただし、Quickアカウントには毎月50MB分の無料ストレージが含まれているため、その容量を超えると従量課金が開始されます。
51MB分のテキストを出力したら、初めて1$の課金がなされるというイメージです。
加えて、マルチメディア処理にも以下のような追加の課金が発生します。
これらはストレージ単位ではなく、画像の枚数や音声・動画の長さあたりの課金です。
無料利用枠についてもドキュメントに言及が無いため、不用意な課金が発生しないよう注意が必要かもしれません。
| 料金 | |
|---|---|
| 画像 | 1イメージあたり$0.003 |
| オーディオ | 1分あたり$0.006 |
| 動画 | 1分あたり$0.05 |
まとめ
- 従来のAmazon QuickSight機能のみ利用している分には、直接的にコスト増は発生しない。
- Professional、Enterpriseのサブスクリプションで割り当てられている枠内であれば、Quick Suiteの新機能の利用にも追加料金はかからない。
- Quick Suite新機能を多用する場合は、追加料金が発生する可能性がある。
実際に調べてみると、想像以上に複雑な料金体系だと感じました。
しかし、一般的な利用範囲内であればコストが急増する、なんて心配は特に無さそうですね。
参考になれば幸いです!