前書き
こんにちは、あの記事の人です!
あの記事: オブジェクト指向が5000%理解できる記事
IT業界にはIoTトイレというものが存在します。簡単に言えばトイレの空室状況や滞在時間が確認できるシステムです。IT業界の男子トイレは埋まっていることが多く、よく従業員から不満が出るのです。
さてこのIoTトイレ、私が知るだけでも10社が独自開発をしています。特に従業員が業務の空き時間を活用して会社の問題点を改善できる仕組みがあるところでは、IoTトイレが発明されやすいようです。
さて、本題。
何故IT業界はトイレにIoTを導入したがるのか
IoTトイレを発明(それも車輪の再発明を)してしまう状況にはIT企業としての問題点が隠れています。今回はこれを解説していきたいと思います。
現場課題
現場とはトイレです。IT企業の普通のトイレを使う人達はどんな課題を抱えているのでしょうか。
- トイレユーザーにとっての課題
- トイレが空いていないことが多いのでストレスになる
- 空いてるトイレを探して練り歩く必要があるため業務効率が低下する
- 経営者にとっての課題
- 滞在時間が長すぎる(サボっている)従業員がいて生産性が低下している
IoTトイレはこれらの課題を解決するために生まれたものです。しかし、IoTトイレは本当にこれらの有効なソリューションなのでしょうか。考えてみましょう。
IoTトイレは有効か
トイレが空いていないことが多いのでストレスになる・空いてるトイレを探して練り歩く必要があるため業務効率が低下する
これらに関しては、空室状況が見れたり予約ができたりすればある程度解決できるのかも知れませんね。でも、そもそも従業員が100人いてトイレが3つとかだと、予約がいっぱいになるなんてこともあるでしょう。更には、予約がいっぱいになることを恐れて、トイレを仮押さえする人が出てくる可能性もあります。トイレに行きたい気持ちはスケジューリングできないので、いくらこういった機能があっても根本的には何も解決していないのです。
滞在時間が長すぎる(サボっている)従業員がいて生産性が低下している
これに関しては、IoTトイレでは何もできません。多分、長時間トイレに滞在している人がいることは分かるようになると思うのですが、それが誰であるかを特定したり、長時間滞在が体調不良なのかサボりなのかを外から判断したりするのは、プライバシーの侵害です。せいぜい張り紙をする程度の対応しかできないので、やっぱり根本的には何も解決していないでしょう。
本質的なソリューションのアイデア
コンサルの有名な話で「ホームセンターにドリルを買いに来る人はドリルではなく穴が欲しいのだ」なんてのがありますが、IoTトイレについては「穴が欲しい人が掘れないドリルを自作」している状況です。どのように解決するべきでしょうか。
トイレを増やす
真正面から課題を解決しにいきます。そもそも需要に対して供給が足りていないのですから。「そんなスペースはない!」「そんな費用はない!」なんて目先のことばかり考えていては話になりません。トイレのために損失が発生しているのですから。
従業員を減らす
逆転の発想です。リモートワークやサテライトオフィスなどを導入してトイレあたりの従業員数を削減しましょう。
モチベを上げる
トイレでサボっている人は別にそこにトイレがあるからサボっているわけではないんですね。登山家ではないので。退屈な仕事そのものが悪いのです。モチベーション管理の仕組みを組織として導入し、仕事の質を上げることでトイレ問題を解決しましょう。トイレは悪くないのです。
課題に対するソリューションは必ずしもITであるとは限りません。IT屋だからといって何でもかんでもITで解決しようとするのはやめましょう。
後書き・いつまでプロダクトアウトなのか
結論。IT業界がトイレにIoTを導入したがる理由は、トイレ問題が切実である一方でIT以外のソリューションが見えていないからです。そしてこれこそがIT企業が抱える問題なのです。
それは、つまるところプロダクトアウトであるということです。プロダクトアウトというのは企業が自社のリソースを活用して製品やサービスを作ることです。IT企業であれば当然ITの観点からどんな製品やサービスを作るか考ますね。
しかし、前述の通り課題のベストな解決策はITであるとは限らないのです。とくに厄介なのが想定ユーザーが開発者であるITエンジニア自身なので、ついつい良いアイデアであると思い込んでしまうという点です。
これからの時代、課題を発見したら、最適なソリューションを発見するために想定ユーザーにインタビューを繰り返すといったマーケットインの発想がない会社は苦しくなっていくでしょう。
IoTトイレを発明してしまった企業・方は、是非マーケットインの考え方を身に着けてみてください。
書籍を紹介するとすれば、スタートアップマニュアルという事業立ち上げの有名な教科書がありますので、こちらを参考にされると良いかと思います!