こんにちは、GMOコネクトの名もなきエンジニアです。
よろしくお願いします!
日刊IETFは、I-D AnnounceやIETF Announceに投稿されたメールをサマリーし続けるという修行的な活動です!!
今回は、2025-10-20(UTC基準)に公開されたInternet-DraftとRFCをまとめました。
- Internet-Draft: 443件(本記事では351-375件目を掲載)
- RFC: 0件
※本日は投稿数が非常に多いため、25件ごとに分割して掲載しています。
参照先:
その日のサマリー & Hot Topics
第15部では、YANGモデルの成熟と標準化が多角的に進んでいます。YANGモジュールファイル名規約、YANGスキーマ比較、ネットワークインベントリソフトウェア拡張、NVO3プロトコル基本YANGモデルなど、YANGエコシステムの基盤整備が充実しています。また、SCIONデータプレーンの定義により、SCION制御プレーンと合わせて完全なパス認識型ネットワークアーキテクチャが形成されつつあります。
AI Agent時代のインフラ標準化も進展しており、Internet of Agents(IoA)向けDNS問題定義・要件分析、AI Agent認証・認可のOAuth拡張考察など、AI駆動型インターネットの基盤技術が議論されています。さらに、グリーンネットワーキングの視点も強化され、CATS(Computing-Aware Traffic Steering)におけるグリーン課題、PETRA拡張など、環境負荷を考慮したネットワーク設計が重視されています。RPKI、リモートアテステーション、DLEP拡張、IPv4/IPv6変換など、既存技術の改善も継続しています。
投稿されたInternet-Draft
YANG module file name convention
YANGモジュールファイル名規約を提示します。現在のYANGモジュールファイル名を拡張し、バージョン、リビジョン、組織などの情報を含められるようにします。大規模YANGライブラリの管理を容易にし、モジュールの識別と依存関係解決を改善します。YANGモジュールの配布とバージョン管理における相互運用性を向上させます。
DLEP Radio Quality Extension
Dynamic Link Exchange Protocol(DLEP)の拡張を定義し、受信無線信号の品質情報を提供します。信号強度、ノイズレベル、SNR(信号対雑音比)などの無線品質メトリクスをリアルタイムで交換することで、モバイルアドホックネットワークにおける適応的ルーティングと帯域管理を改善します。
Semantic Definition Format (SDF) for Data and Interactions of Things: Compact Notation
Semantic Definition Format(SDF)は、ドメイン専門家がIoTデバイスのデータとインタラクションの定義を作成・保守するためのフォーマットです。このドラフトは、SDFのコンパクト表記法を定義し、より簡潔で人間が読みやすい形式を提供します。IoTデバイスモデリングの生産性を向上させます。
Path Energy Traffic Ratio API (PETRA) Augmented
指定されたパスのEnergy Traffic Ratioおよびその他のエネルギー関連メトリクスについて、ネットワークに問い合わせるAPIを説明します。カーボンフットプリント、再生可能エネルギー比率、PUE(Power Usage Effectiveness)など、より包括的な環境影響データを提供します。グリーンルーティングとサステナブルなネットワーク運用を促進します。
Further considerations on AI Agent Authentication and Authorization Based on OAuth Extension
Agent Communication Network(ACN)は、多くの業界において有望で基本的なインフラストラクチャになりつつあります。このドラフトは、OAuth拡張に基づくAI Agent認証・認可のさらなる考察を提供します。AI Agent間の安全な通信と、細粒度アクセス制御の実現を目指します。
RPKI Publication Server Best Current Practices
RFC 8181 RPKI Publication Serverとそのrsync(RFC 5781)およびRRDP(RFC 8182)サーバーを運用するためのベストカレントプラクティスを説明します。RPKIインフラストラクチャの信頼性、可用性、セキュリティを向上させるための運用ガイドラインを提供します。グローバルなルーティングセキュリティ基盤の強化に貢献します。
Validity of SR Policy Candidate Path
SRポリシーは1つ以上の候補パス(CP)から構成され、ある時点で1つだけがアクティブになります。このドラフトは、SR Policy候補パスの有効性を定義し、パス選択とフェイルオーバーのロジックを明確化します。Segment Routingネットワークにおける信頼性の高いトラフィックエンジニアリングを実現します。
DLEP Radio Band Extension
Dynamic Link Exchange Protocol(DLEP)の拡張を定義し、無線リンクで使用される周波数帯域に関する情報を提供します。2.4GHz、5GHz、6GHz、ミリ波など、異なる周波数帯の特性を考慮した最適なルーティング判断を可能にします。マルチバンド無線環境での効率的なネットワーク運用を支援します。
DLEP Radio Channel Utilization Extension
Dynamic Link Exchange Protocol(DLEP)の拡張を定義し、無線チャネルの利用率を提供します。チャネルの混雑状況をリアルタイムで共有することで、適応的なチャネル選択、送信レート制御、ルーティング判断を改善します。スペクトラム効率の向上とネットワークパフォーマンスの最適化に貢献します。
Concise Selector for Endorsements and Reference Values
Remote Attestation Procedures(RATS)アーキテクチャにおいて、VerifierはAttesterの信頼性を評価するためにEndorsementsとReference Valuesを必要とします。このドラフトは、これらを選択するための簡潔なセレクター形式を定義し、アテステーション処理を効率化します。
A YANG Network Data Model of Network Inventory Software Extensions
基本Network Inventory YANGモデルを拡張し、コンテナ、仮想マシン、ソフトウェア定義機能など、非物理ネットワーク要素(NE)をサポートします。NFV、SDN、クラウドネイティブネットワーキング環境における仮想リソースのインベントリ管理を標準化します。物理と仮想の統合管理を実現します。
IP/ICMP Translation Algorithm
Stateless IP/ICMP Translation Algorithm(SIIT)を説明し、IPv4とIPv6パケット間を変換します。IPv4/IPv6共存期における重要な変換技術の更新版であり、実装経験と新しいユースケースを反映した改善を含みます。IPv6移行を支援する基盤技術を強化します。
YANG Schema Comparison
YANGスキーマの2つのリビジョンを比較して変更の範囲を決定し、それらの変更が下位互換性があるかどうかを判断するアルゴリズムを規定します。YANGモデルのバージョン管理と依存関係管理を自動化し、スキーマ変更の影響評価を効率化します。ネットワーク管理システムのアップグレード計画を支援します。
Multipath Support for IGMP/MLD Proxy
Internet Group Management Protocol(IGMP)/Multicast Listener Discovery(MLD)プロキシでマルチパス受信をサポートするフレームワークを規定します。複数の経路を通じてマルチキャストトラフィックを受信することで、冗長性と帯域集約を実現します。マルチキャスト配信の信頼性と効率を向上させます。
Framework for High Performance Wide Area Network (HP-WAN)
高速・高スループットデータ転送のためのホスト・ネットワーク協調を可能にするフレームワークを定義します。データセンター間通信、科学データ転送、大規模コンテンツ配信など、100Gbps以上の帯域を効率的に利用するためのプロトコルスタック最適化と協調制御を提案します。
Green Challenges in Computing-Aware Traffic Steering (CATS)
モバイルエッジコンピューティングネットワークが計算タスクをクラウドデータセンターからネットワークエッジに移すにつれ、タスクの実行場所選択が環境に与える影響を考慮する必要があります。このドラフトは、CATSにおけるグリーン課題を議論し、エネルギー効率と環境負荷を考慮したトラフィックステアリングの重要性を強調します。
RPKI Trust Anchor Constraints
Resource Public Key Infrastructure(RPKI)Relying Parties(RP)は通常、5つのTrust Anchors(TA)で構成されます。このドラフトは、RPKI Trust Anchorに制約を設定する方法を定義し、よりきめ細かい信頼管理を可能にします。RPKIの柔軟性と安全性を向上させます。
Realization of Composite IETF Network Slices
ネットワークスライスは、特定のService Level Objectives(SLO)とService Level Expectations(SLE)を持つ接続サービスを提供します。このドラフトは、複数のネットワークドメインやテクノロジーを横断する複合IETFネットワークスライスの実現方法を定義します。エンドツーエンドのネットワークスライシングを実現します。
Base YANG Data Model for NVO3 Protocols
オペレーターがNetwork Virtualization over Layer 3(NVO3)プロトコルを設定・管理するために使用できる基本YANGデータモデルを説明します。VXLAN、NVGRE、Geneveなどのオーバーレイネットワーク技術を統一的なインターフェースで管理できるようにし、データセンターネットワークの自動化を促進します。
Problems Statement and Requirements Analysis of DNS for Internet of Agents (IoA)
AI駆動時代において、DNSは技術進歩とともに進化し、複雑で多様な要件に対応する必要があります。このドラフトは、Internet of Agents(IoA)向けDNSの問題定義と要件分析を提供します。AI Agent発見、動的リソース解決、信頼できるAgent識別など、新しいDNS要件を明確化します。
Common BMP Route-Monitoring Messages for Routes Unchanged by Policy
監視対象ルーターのインバウンドポリシーによって変更されていない経路は、Pre-Policy Adj-RIB-InとPost-Policy Adj-RIB-Inの両方に含まれます。このドラフトは、ポリシーによって変更されていない経路のための共通BMP Route-Monitoringメッセージを定義し、重複情報の送信を削減します。
SCION Data Plane
パス認識型ドメイン間ネットワークアーキテクチャSCION(Scalability, Control, and Isolation On Next-Generation Networks)のデータプレーンを説明します。制御プレーンと合わせて、パス選択の自由度、トラストドメイン分離、DDoS攻撃耐性を実現する完全なアーキテクチャを形成します。
Remote Attestation with Multiple Verifiers
IETF RATSアーキテクチャは、Verifierの重要な役割を定義しています。複雑なシステムでは、この役割を複数のVerifierが実行する必要があります。このドラフトは、複数Verifierによるリモートアテステーションを定義し、分散的かつ多層的な信頼性評価を可能にします。
Best Practices for CMS SignedData with Regards to Signed Attributes
Cryptographic Message Syntax(CMS)は、署名属性の有無に基づいて異なる署名検証動作を持ちます。このドラフトは、署名属性に関するCMS SignedDataのベストプラクティスを提供し、セキュリティと相互運用性を向上させます。署名メッセージの正しい生成と検証を促進します。
Proxy Load Balancing in the Remote Authentication Dial In User Service (RADIUS) Protocol
Remote Authentication Dial In User Service(RADIUS)プロトコルのプロキシ運用者を支援するいくつかの方法を説明します。プロキシサーバー間の負荷分散、フェイルオーバー、パフォーマンス最適化のための技術を提供し、大規模RADIUS展開における可用性と応答性を向上させます。
編集後記
第15部では、YANGエコシステムの成熟が顕著です。ファイル名規約、スキーマ比較、ネットワークインベントリソフトウェア拡張、NVO3基本モデルなど、YANGを中心としたネットワーク管理基盤が体系的に整備されています。これにより、マルチベンダー環境でのネットワーク自動化が実用レベルに達しつつあります。特にYANGスキーマ比較は、バージョン管理と変更影響評価を自動化する重要な機能です。
SCIONデータプレーンの定義により、制御プレーンと合わせてパス認識型ネットワークアーキテクチャの完全な仕様が揃いました。送信元が経路を選択でき、トラストドメインが分離された革新的なインターネットアーキテクチャが標準化されつつあります。また、Internet of Agents(IoA)向けDNS問題定義は、AI Agent時代のインターネットインフラがどのように進化すべきかという重要な問いを提起しています。グリーンCATSやPETRA拡張など、環境負荷を考慮したネットワーク設計の重要性も強調されており、持続可能なインターネットの実現に向けた取り組みが本格化しています。第16部もお楽しみに!
最後に、GMOコネクトでは研究開発や国際標準化に関する支援や技術検証をはじめ、幅広い支援を行っておりますので、何かありましたらお気軽にお問合せください。