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こんにちは、GMOコネクトの名もなきエンジニアです。
よろしくお願いします!

今日は...443件もの投稿があり、震え散らかしています笑

日刊IETFは、I-D AnnounceやIETF Announceに投稿されたメールをサマリーし続けるという修行的な活動です!!
今回は、2025-10-20(UTC基準)に公開されたInternet-DraftとRFCをまとめました。

  • Internet-Draft: 443件(本記事では1-25件目を掲載)
  • RFC: 0件

※本日は投稿数が非常に多いため、25件ごとに分割して掲載しています。

参照先:


その日のサマリー & Hot Topics

2025年10月20日は、Internet-Draftが443件という驚異的な数が投稿された特別な日となりました。IPv6関連の技術仕様、WebTransport、JOSE(JSON Object Signing and Encryption)、トランスポート層の最適化など、多岐にわたる分野のドラフトが提出されています。特にIPv6のアドレス自動設定の堅牢性向上、マルチパスルーティング、ネットワークパフォーマンス測定などのインフラ技術が目立ちます。セキュリティ分野では、SSH証明書フォーマットやGNSS認証のためのTESLA更新など、認証と暗号技術の進化も見られます。

WebTransportプロトコルスタックに関する複数のドラフトが投稿され、HTTP/3およびHTTP/2上での信頼性の高いデータ転送やマルチストリーミング機能の標準化が進行中です。また、JSON Web Proof(JWP)やJSON Proof Token(JPT)といった次世代の暗号証明技術、AI Agentの識別管理、バッファブロート対策、さらには6GシステムにおけるAI Agent通信など、最先端技術の標準化活動が活発化しています。IoT、産業用ネットワーク、衛星通信、Bluetooth Low Energyなど、多様なユースケースに対応する技術提案が多数含まれています。


投稿されたInternet-Draft

Improving the Robustness of Stateless Address Autoconfiguration (SLAAC) to Flash Renumbering Events

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IPv6のステートレスアドレス自動設定(SLAAC)において、フラッシュリナンバリングイベントに対する堅牢性を向上させる提案です。ネットワーク設定情報が明示的な通知なしに無効化されるシナリオにおいて、ローカルホストが古い設定を使い続けてしまう問題に対処します。急速なプレフィックス変更が発生した場合でも、既存の接続を維持しながら新しいアドレスへスムーズに移行できる手法を提案しており、企業ネットワークやISP環境での運用安定性向上に貢献します。


RSVP-TE Extensions for Multipath Traffic Engineered Directed Acyclic Graph Tunnels

Draft Link

マルチパストラフィックエンジニアリングを実現するためのRSVP-TE拡張仕様です。有向非巡回グラフ(MPTED)トンネルを用いることで、重み付けされた負荷分散を実現するトラフィックエンジニアリング構造を提供します。複数の経路を同時に活用した効率的なトラフィック分散と冗長性確保を可能にし、ネットワーク障害時の迅速なフェイルオーバーや帯域の効率的利用を実現します。大規模データセンターやキャリアネットワークにおける高可用性とパフォーマンス最適化を支援します。


Source IPv6 Address Programmability

Draft Link

IPv6送信元アドレスのプログラマビリティを実現する新しいアプローチを提案しています。SRv6などのIPv6ベーストンネリング技術がトランスポートネットワークに展開され、VPNやSFCといったサービスをユーザーに提供する環境において、送信元アドレスの動的制御を可能にします。アプリケーションやネットワークポリシーに基づいた柔軟なアドレス管理により、SDN環境でのトラフィックエンジニアリングの高度化と、ネットワーク運用の自動化・効率化を促進します。


PCEP extensions for energy consumption

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PCEPプロトコルにエネルギー消費情報を組み込むための拡張仕様です。ネットワークのエネルギー効率を考慮した経路計算を実現するため、エネルギー消費情報の種類、収集方法、およびPCEPメッセージでの伝達方法を定義します。グリーンネットワーキングの推進において重要な役割を果たし、環境負荷の低減とコスト削減を両立させたネットワーク運用を支援します。カーボンニュートラルを目指すデータセンターやキャリアネットワークでの活用が期待されます。


WebTransport over HTTP/2

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HTTP/2上でWebTransportを実現するための仕様提案です。クライアント・サーバー間の相互作用のために設計された低レベル通信機能セットを、HTTP/2インフラストラクチャ上で提供します。HTTP/3が利用できない環境でも、WebTransportの機能を活用できるようにするフォールバックメカニズムとして機能し、既存のHTTP/2インフラを活用しながらマルチストリーミングや優先度制御などの高度な通信機能を実現します。幅広いネットワーク環境でのWebTransport採用を促進します。


SSH Certificate Format

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SSHプロトコルにおけるユーザーおよびホスト認証のための証明書フォーマットを定義する提案です。シンプルでありながら堅牢な証明書構造を提供し、従来の公開鍵認証に加えて証明書ベースの認証を導入することで、大規模環境での鍵管理の効率化とセキュリティの向上を実現します。証明書のライフサイクル管理、失効メカニズム、拡張属性の定義など、エンタープライズ環境での実用性を重視した仕様となっています。PKIインフラとの統合により、よりセキュアで管理しやすいSSH認証環境を構築できます。


Multiple Hop Unaffiliate BFD

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双方向転送検出(BFD)プロトコルにおける、複数ホップの非関連BFDセッションに関する提案です。2つの転送エンジン間の通信障害を迅速に識別するよう設計されたBFDを、より柔軟な形で利用できるよう拡張します。特定のインターフェースやルーティングプロトコルに紐づかない独立したBFDセッションを確立することで、多様なネットワークトポロジーやユースケースに対応します。ネットワークの障害検出能力を向上させ、高可用性システムの構築を支援します。


WebTransport over HTTP/3

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HTTP/3上でWebTransportプロトコルを実装するための仕様です。Webセキュリティモデルに制約されたアプリケーションクライアントが、リモートアプリケーションと通信できるようにするプロトコルフレームワークを提供します。QUICトランスポート層を活用し、低遅延かつ信頼性の高い双方向通信を実現します。マルチストリーミング、データグラム送信、ストリーム優先度制御など、WebSocketsを超える柔軟な通信機能を提供し、リアルタイムアプリケーション、オンラインゲーム、ビデオ会議システムなどでの活用が期待されます。


Source Buffer Management

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ネットワークにおけるバッファブロートの有害な影響に対する認識が高まる中、送信元バッファ管理の新しいアプローチを提案しています。過去10年間のネットワーク側での取り組みに加えて、送信側でのバッファ管理を改善することで、遅延の増大やパケットロスを抑制します。アプリケーションとトランスポート層の協調により、適切な送信レート制御とバッファ管理を実現し、ネットワーク全体の応答性とパフォーマンスを向上させます。


TESLA Update for GNSS SBAS Authentication

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TESLA(Timed Efficient Stream Loss-tolerant Authentication)プロトコルを、ICAO(国際民間航空機関)が衛星航法補強システム(SBAS)で使用するために、現代の暗号技術に更新する提案です。衛星測位システムのスプーフィング攻撃やメッセージ改ざんを防ぐため、効率的で遅延に強い認証メカニズムを提供します。航空、海事、自動運転などの安全が重視される分野において、信頼性の高い測位情報を保証するための認証基盤を強化します。


WIMSE Applicability for AI Agents

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Agentic AIへのWIMSE(Workload Identity in Multi-System Environments)の適用について議論するドラフトです。AI Agentの独立したアイデンティティと認証情報管理メカニズムを確立するための枠組みを提案しています。複数のシステム環境で動作するAI Agentが、安全かつ信頼性の高い方法で相互に認証し協調動作できるようにすることで、次世代のAI駆動型アプリケーションのセキュリティ基盤を構築します。


Responsiveness under Working Conditions

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長年にわたり、遅延、ラグ、バッファブロートとして認識されてきた応答性の欠如について、実際の作業条件下でのネットワーク応答性を測定・評価する手法を提案しています。単純な遅延測定だけでなく、実際のトラフィック負荷がかかった状態でのネットワークパフォーマンスを評価することで、ユーザー体験により直結した品質指標を提供します。ISPのサービス品質評価や、ネットワーク機器の性能ベンチマークにおいて、より実践的な評価基準となります。


JSON Proof Algorithms

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JSON Web Proof(JWP)、JSON Web Key(JWK)、JSON Web Signature(JWS)で使用される暗号アルゴリズムと識別子を登録する仕様です。選択的開示やゼロ知識証明など、プライバシー保護技術を活用した新しい証明メカニズムを実現するための基盤を提供します。JOSEエコシステムを拡張し、より高度なプライバシー保護機能を持つ認証・認可システムの構築を可能にします。


JSON Web Proof

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JOSE標準群が確立したJSONベースのコンテナ形式(鍵、署名、暗号化)を拡張し、プライバシー保護を重視した証明メカニズムを提供する仕様です。選択的開示や非連結性など、従来のJWTでは実現困難だった高度なプライバシー機能を実現します。IANAレジストリを活用して標準化を進め、分散型IDシステムや匿名認証が求められるアプリケーションでの活用が期待されます。


JSON Proof Token and CBOR Proof Token

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JSON Proof Token(JPT)は、3者間でクレームを転送するための、コンパクトでURL安全かつプライバシー保護を実現する表現形式です。JPTのクレームは、発行者によってデジタル署名または署名付きMAC(メッセージ認証コード)で保護された状態で伝達されます。選択的開示機能により、必要最小限の情報のみを提示することができ、ユーザーのプライバシーを保護しながら認証・認可を実現します。CBOR版も併せて定義され、IoTなど帯域制約のある環境でも利用可能です。


Applicability Statement for IETF Core Email Protocols

Draft Link

電子メールは、現役で使用されている最も古いインターネットアプリケーションの1つです。メール転送とメッセージフォーマットのプロトコルは長年にわたり進化してきました。このドラフトは、IETF標準化されたコア電子メールプロトコルの適用性を明確化し、現代のメールシステムにおける各プロトコルの役割と推奨される使用方法を示します。SMTP、IMAP、POP3などの基本プロトコルと、セキュリティ拡張、認証メカニズムの適切な組み合わせ方を提供します。


Standard Communication with Network Elements (SCONE) Protocol

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ネットワーク経路上の機器がエンドポイントに対して、達成可能な最大スループットに関する見解を提供できるプロトコルを定義します。ネットワーク要素が持つ帯域幅やキャパシティ情報を、エンドポイントに通知することで、より効率的なレート制御とトラフィック管理を実現します。輻輳制御アルゴリズムの改善や、アプリケーションレイヤーでの適応的ビットレート制御に活用でき、ネットワークリソースの最適利用を促進します。


Happy Eyeballs Version 3: Better Connectivity Using Concurrency

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現代のインターネット上で動作する多くの通信プロトコルはホスト名を使用します。これらは複数のIPアドレスに解決されることが多く、それぞれ異なる特性を持つ場合があります。Happy Eyeballsアルゴリズムの第3版として、並行接続を活用したより優れた接続性の実現を目指しています。IPv4とIPv6のデュアルスタック環境において、複数のアドレスファミリーやネットワーク経路を同時に試行することで、接続確立の高速化とフォールバックの改善を実現し、ユーザー体験を向上させます。


A YANG Data Model for Multipath Traffic Engineering Directed Acyclic Graph (MPTED) Tunnels and Junctions

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MPTEDトンネルとジャンクションの表現、取得、および操作のためのYANGデータモデルを定義します。有向非巡回グラフを用いたマルチパストラフィックエンジニアリングの設定と管理を、標準化されたデータモデルで実現します。ネットワークの自動化、プログラマビリティの向上、異なるベンダー機器間の相互運用性確保に貢献し、SDN環境での高度なトラフィックエンジニアリングを支援します。


The WebTransport Protocol Framework

Draft Link

WebTransportプロトコルフレームワークの全体像を示すドキュメントです。Webセキュリティモデルに制約されたクライアントが、セキュアな多重化トランスポートを用いてリモートサーバーと通信できるようにする仕組みを包括的に説明します。HTTP/2、HTTP/3、データグラム、信頼性ストリームなど、複数の仕様がどのように連携してWebTransportエコシステムを構成するかを明確化し、実装者や開発者に全体像を提供します。


CoAP over GATT (Bluetooth Low Energy Generic Attributes)

Draft Link

コンピューターや携帯電話から制約デバイスへの相互作用は、使用されるネットワーク技術の違いと利用可能なAPIによって制限されています。このドラフトは、Bluetooth Low Energy(BLE)のGATT(Generic Attributes)上でCoAPプロトコルを動作させる方法を定義します。BLE接続を介してCoAPの豊富な機能を利用できるようにすることで、IoTデバイスとの通信を統一的なAPIで実現し、開発者の負担を軽減します。


Metric Normalize for IGP Flex-algo

Draft Link

ネットワーク内の複数のリンクが同じメトリックを持つ場合、転送時にECMP等価リンクとして負荷分散に使用できます。しかし、わずかなメトリックの違いがあると、意図しない経路選択が発生する可能性があります。このドラフトは、IGP Flexible Algorithm(Flex-algo)におけるメトリック正規化手法を提案し、より均等で予測可能な負荷分散を実現します。大規模ネットワークでのトラフィックエンジニアリングの精度向上に貢献します。


Transmission of IPv6 over Multidrop Serial Bus/Token Passing (MS/TP) Networks

Draft Link

MS/TP(Multidrop Serial Bus/Token Passing)は、RS-485物理層のメディアアクセス制御方式であり、主にビルオートメーションやBACnetネットワークで使用されています。このドラフトは、MS/TPネットワーク上でIPv6パケットを伝送するための仕様を定義します。ビル管理システムや産業用制御システムにおいて、IPv6の普及を促進し、レガシーなシリアルバスネットワークと最新のIPベースシステムの統合を実現します。


AI Agent protocols for 6G systems

Draft Link

AI Agent間およびAgentとツール間の通信は、6Gシステムにおいて極めて重要になると予想されています。3GPP TR 22.870は、様々なユースケースとそれに対応する要件を概説しています。このドラフトは、6Gシステムにおいて想定されるAI Agentプロトコルとその特性について議論します。次世代通信インフラとAI技術の融合により、自律的なネットワーク管理、インテリジェントなリソース配分、動的なサービス最適化などが実現され、6Gの重要な差別化要因となります。


Lightweight Authorization using Ephemeral Diffie-Hellman Over COSE (ELA)

Draft Link

EDHOC(Ephemeral Diffie-Hellman Over COSE)は、制約のあるシナリオでの使用を想定した軽量認証鍵交換プロトコルです。このドキュメントは、EDHOCと組み合わせて使用する軽量認可メカニズムを定義します。IoTデバイスや組み込みシステムなど、計算資源やメモリが限られた環境でも、セキュアな認証と認可を実現できるようにします。OAuth 2.0のような既存の認可フレームワークを、制約デバイスに適した形で提供します。


編集後記

2025年10月20日という1日で443件ものInternet-Draftが投稿されるという、まさに記録的な日となりました。これはIETFコミュニティの活発な活動と、インターネット技術の急速な進化を象徴する出来事です。IPv6、WebTransport、JSON Web Proof、AI Agent、エネルギー効率、バッファブロート対策など、あらゆる分野で技術革新が同時進行しており、インターネットインフラの次世代化が着実に進んでいることを実感します。

特に注目すべきは、WebTransportエコシステムの包括的な標準化が進んでいる点と、JSON Web Proofによるプライバシー保護技術の発展、そして6GシステムにおけるAI Agent通信プロトコルなど、未来を見据えた技術提案が多数含まれていることです。また、SSH証明書フォーマットやTESLA更新など、既存の重要プロトコルのセキュリティ強化も継続的に行われています。次回の第2部もお楽しみに!


最後に、GMOコネクトでは研究開発や国際標準化に関する支援や技術検証をはじめ、幅広い支援を行っておりますので、何かありましたらお気軽にお問合せください。

お問合せ: https://gmo-connect.jp/contactus/

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