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日刊IETF (2025-10-16) Part 3/3

Last updated at Posted at 2025-10-18

こんばんは!
GMOコネクトの名もなきエンジニアです。
よろしくお願いします!

日刊IETFは、I-D AnnounceやIETF Announceに投稿されたメールをサマリーし続けるという修行的な活動です!!
今回は、2025-10-16(UTC基準)に公開されたInternet-DraftとRFCをまとめました。

  • Internet-Draft: 70件
  • RFC: 0件

※投稿数が多いため、3部構成でお届けします。本記事はPart 3(51-70件目)、最終回です。

参照先:

本日の関連ページリンク


その日のサマリー & Hot Topics

  • Part 3では、ルーティング技術の高度化、ポスト量子暗号の実装、そしてネットワーク管理の効率化に関する提案が中心となっています。

  • 特に注目すべきは、BGP SR Policyの拡張やBIER-TEパス、DART(Domain-Aware Routing Technology)など、トラフィックエンジニアリングとパス制御の高度化が進められている点です。これらは、5Gネットワークやクラウドインフラにおいて、低遅延やSLA保証が必要なサービスの実現を支援します。

  • また、IETFのプロセス文書自体の更新提案も含まれており、標準化プロセスの進化も確認できます。

  • セキュリティ面では、OpenPGPやX.509 PKIへのポスト量子暗号統合、Privacy Passの応用、DNSクエリ集約の強化など、多層的なセキュリティ向上策が提案されています。特に、Composite ML-KEMやNIST/Brainpool楕円曲線を用いたPQ/T複合スキームは、段階的な量子耐性移行を可能にする重要な技術です。

  • ネットワーク運用では、RFC 3535の20年後の見直しやvCon、TVR YANG、IOAMの拡張など、運用効率化と可視性向上のための標準化が進められています。

  • 最後に、agent://プロトコルの提案は、AIエージェントの相互運用性を確保するURIフレームワークとして、今後の発展が期待される分野です。

投稿されたInternet-Draft

Algorithm Related IGP-Adjacency SID Advertisement

アルゴリズム関連のIGP隣接SID広告の仕様です。Segment Routingにおいて、異なるアルゴリズム(最短パス、低遅延、高帯域など)に基づくパス計算が可能ですが、隣接SID(Adjacency SID)は特定のアルゴリズムに関連付けられていませんでした。本仕様は、IGP(IS-ISやOSPF)で隣接SIDを広告する際に、どのアルゴリズムで使用可能かを明示的に示す方法を定義します。これにより、複数のアルゴリズムベースのパスが共存する環境でも、各パスが適切な隣接SIDを使用できるようになります。5Gトランスポート、データセンターネットワーク、キャリアバックボーンにおいて、多様なトラフィック要件に対応した柔軟なパス制御が実現されます。

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EAT Measured Component

EAT(Entity Attestation Token)における測定されたコンポーネントの仕様です。アテステーションでは、システムの信頼性を証明するために、個々のソフトウェアコンポーネントやハードウェアモジュールの測定値を報告する必要があります。本仕様は、測定されたコンポーネントの情報(ハッシュ値、バージョン、署名者、測定方法)をEATトークン内で表現する標準的な方法を定義します。これにより、複雑なシステムにおける各コンポーネントの完全性を個別に検証でき、サプライチェーンセキュリティ、ゼロトラストアーキテクチャ、セキュアブートなどの実装が容易になります。IoTデバイス、エッジコンピューティング、クラウドインフラでの信頼性保証に貢献します。

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Applicability of TVR YANG Data Models

TVR(Time-Variant Routing) YANGデータモデルの適用性に関する文書です。TVRは、時間的に変化するネットワークトポロジー(衛星コンステレーション、移動体ネットワーク、間欠接続ネットワーク)でのルーティングを扱います。本文書は、TVR YANGモデルが様々なユースケース(LEO衛星ネットワーク、UAV通信、DTN、災害時ネットワーク)にどのように適用できるかを説明します。各シナリオでの設定例、制約条件、実装上の考慮事項を提供し、TVR技術の実用化を支援します。宇宙通信、次世代モバイルネットワーク、緊急通信システムなど、動的トポロジーを持つネットワークの管理自動化に貢献します。

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In Situ Operations, Administration, and Maintenance (IOAM) Active Measurement for Multi-path

マルチパス環境におけるIOAM(In-situ OAM)アクティブ測定の仕様です。IOAMは通常、実際のユーザートラフィックにテレメトリーデータを埋め込みますが、アクティブ測定では専用のプローブパケットを使用します。マルチパス環境では、複数の並列パスが存在し、それぞれのパスのパフォーマンスを個別に測定する必要があります。本仕様は、各パスを明示的に指定してプローブを送信し、パス毎の遅延、ジッター、パケットロスを測定する方法を定義します。ECMP(Equal-Cost Multi-Path)、LAG(Link Aggregation)、Segment Routingマルチパスなど、負荷分散されたネットワークにおける詳細なパフォーマンス分析とトラブルシューティングを可能にします。

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PCE SR Policy Extensions for Path Scheduling

パススケジューリングのためのPCE SR Policy拡張の仕様です。PCE(Path Computation Element)は、ネットワークパスを計算する専用サーバーですが、時間ベースのパス変更をサポートしていませんでした。本拡張は、Segment Routing(SR)ポリシーに対して、特定の時刻や時間帯に異なるパスを自動的に適用するスケジューリング機能を追加します。これにより、計画メンテナンス時の自動迂回、ピーク時の容量拡張、時間帯別のコスト最適化などが可能になります。キャリアネットワーク、データセンター間接続、エンタープライズWANにおいて、運用効率の向上と計画的なトラフィック制御を実現します。PCEPプロトコルを介してスケジュール情報を配布します。

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DART: Domain-Aware Routing Technology Protocol

ドメイン認識ルーティング技術(DART)プロトコルの仕様です。従来のルーティングプロトコルは、ネットワークを単一の平坦な空間として扱いますが、実際のネットワークは複数の管理ドメイン、技術ドメイン、信頼ドメインから構成されています。DARTは、ドメインの境界と特性を明示的に認識し、ドメイン間とドメイン内で異なるルーティングポリシーを適用できるようにします。これにより、ドメイン固有のQoS要件、セキュリティポリシー、コスト制約を考慮した最適なルーティングが実現されます。マルチドメインネットワーク、キャリア相互接続、エンタープライズとクラウドの統合環境において、高度なトラフィック制御と管理の分離を提供します。

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BGP for BIER-TE Path

BIER-TE(Bit Index Explicit Replication - Traffic Engineering)パスのためのBGP拡張の仕様です。BIER-TEは、マルチキャストトラフィックに対して明示的なツリーベースのトラフィックエンジニアリングを提供する技術ですが、パス情報の配布メカニズムが必要です。本仕様は、BGPを使用してBIER-TEパス情報を配布する方法を定義します。これにより、マルチドメイン環境でのBIER-TE展開、動的なツリー構築、障害時の迅速な再ルーティングが可能になります。IPTVサービス、コンテンツ配信、ライブストリーミング、マルチキャストVPNなど、効率的で制御可能なマルチキャスト通信が求められる環境での使用が想定されています。

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An Update of Operators Requirements on Network Management Protocols and Modelling

ネットワーク管理プロトコルとモデリングに関するオペレーター要件の更新文書です。RFC 3535は2003年に発行され、当時のネットワーク運用者の要件をまとめていましたが、20年以上が経過し、ネットワーク環境は大きく変化しました。本文書は、クラウドネイティブ、SDN、ネットワーク仮想化、自動化、AIオペレーション、マルチベンダー環境など、現代のネットワーク運用における新しい要件を整理します。YANG、NETCONF、RESTCONF、gNMI、ストリーミングテレメトリなど、現在の技術に対する評価と今後の方向性を示し、次世代のネットワーク管理標準の策定に重要な指針を提供します。

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PQ/T Composite Schemes for OpenPGP using NIST and Brainpool Elliptic Curve Domain Parameters

OpenPGPにおけるNISTおよびBrainpool楕円曲線ドメインパラメータを使用したPQ/T(Post-Quantum/Traditional)複合スキームの仕様です。ポスト量子暗号への移行期において、従来の暗号と新しいポスト量子暗号を組み合わせたハイブリッドアプローチが重要です。本仕様は、楕円曲線暗号(NIST P-256/384/521やBrainpool曲線)とポスト量子アルゴリズム(ML-KEM、ML-DSA)を組み合わせた複合スキームをOpenPGPで使用する方法を定義します。これにより、現在のセキュリティを維持しながら将来の量子脅威にも対応できる段階的な移行が可能になります。メールの暗号化、ファイル署名、コード署名などでの長期的なセキュリティを確保します。

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Architecture for Service Flow Characteristics and Modal Mapping Based on SDN and ALTO Protocol

SDNとALTOプロトコルに基づくサービスフロー特性とモーダルマッピングのアーキテクチャです。異なるアプリケーション(ビデオストリーミング、VoIP、ファイル転送、ゲーム)は、それぞれ異なるネットワーク要件(低遅延、高帯域、高信頼性)を持ちます。本アーキテクチャは、サービスフローの特性を分析し、適切なネットワークパス(モーダル)にマッピングする方法を定義します。SDNコントローラーがネットワークトポロジーとリソースを管理し、ALTOプロトコルがアプリケーションにネットワーク情報を提供することで、アプリケーション認識型のトラフィック制御が実現されます。5G、エッジコンピューティング、コンテンツ配信ネットワークにおける最適なサービス品質の提供を支援します。

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The JSON format for vCon - Conversation Data Container

vCon(Conversation Data Container)のJSON形式仕様のコア文書です。vConは、音声通話、ビデオ会議、チャット、メールなど、あらゆる形式の会話データを標準化されたコンテナに格納するためのフォーマットです。会話の参加者、メディアストリーム、トランスクリプト、メタデータ、分析結果などを包括的に含めることができます。本仕様は、vConの基本構造、必須フィールド、拡張メカニズム、セキュリティ考慮事項を定義します。コンタクトセンター、ビデオ会議プラットフォーム、コンプライアンス記録、会話分析など、会話データの保存・交換・分析を行う様々なアプリケーションで使用できる統一フォーマットを提供します。

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PIM Flooding Mechanism and Source Discovery Enhancements

PIM(Protocol Independent Multicast)のフラッディングメカニズムとソース発見の拡張仕様です。PIMは、マルチキャストルーティングの標準プロトコルですが、新しいマルチキャストソースの発見とレシーバーへの初期配信には遅延が発生することがあります。本拡張は、フラッディングメカニズムを最適化し、ソース情報の迅速な伝播、効率的なツリー構築、不要なトラフィックの削減を実現します。特に、動的にソースが変化する環境(ライブストリーミング、IoTセンサーネットワーク、分散アプリケーション)において、マルチキャスト配信の開始時間を短縮し、ネットワークリソースの効率的な使用を可能にします。

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BGP SR Policy Extensions for Performance-Aware Path Selection

パフォーマンス認識型パス選択のためのBGP SR Policy拡張の仕様です。従来のSegment Routing(SR)ポリシーは、静的なパス制約(特定のノードを経由する、特定のリンクを避ける)に基づいていましたが、動的なパフォーマンスメトリクスを考慮していませんでした。本拡張は、遅延、ジッター、パケットロス率、利用可能帯域などのパフォーマンス指標をSRポリシーの選択基準に含めることができるようにします。これにより、リアルタイムのネットワーク状態に基づいて最適なパスを自動的に選択でき、低遅延アプリケーション、高品質ビデオ、ミッションクリティカルな通信のSLA保証が実現されます。

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Privacy Pass Authentication for Media over QUIC (MoQ)

MoQ(Media over QUIC)のためのPrivacy Pass認証の仕様です。MoQは、QUICトランスポート上でメディアストリーミングを行うプロトコルですが、ボット対策やアクセス制御が課題となります。Privacy Passは、ユーザーのプライバシーを保護しながら認証を行う技術です。本仕様は、Privacy PassをMoQに統合し、視聴者の匿名性を維持しつつ、正当なユーザーのみがメディアにアクセスできるようにします。ライブストリーミング、ビデオオンデマンド、ウェビナー、オンライン教育など、大規模なメディア配信において、プライバシーを尊重したアクセス制御とボット防止を実現します。CDNやストリーミングプラットフォームでの実装が想定されています。

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Strengthening DNS Query Aggregation against ECS-based Attacks

ECS(EDNS Client Subnet)ベースの攻撃に対するDNSクエリ集約の強化に関する仕様です。ECSは、クライアントのサブネット情報をDNSクエリに含めることで、地理的に最適な応答を可能にしますが、これを悪用した攻撃が存在します。攻撃者は、わずかに異なるECS値を持つ大量のクエリを送信し、キャッシュの効率を低下させたり、権威サーバーに負荷をかけたりできます。本仕様は、ECS値の正規化、集約アルゴリズムの改善、異常検出メカニズムにより、ECSベースの攻撃を緩和します。DNSリゾルバー、CDN、コンテンツプロバイダーのセキュリティと性能を向上させます。

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Provider Interface SAV for Customer Cone Sources

カスタマーコーンソースのためのプロバイダーインターフェースSAV(Source Address Validation)の仕様です。SAVは、送信元アドレス詐称を防止する技術ですが、プロバイダーとカスタマーの境界での実装が課題となります。本仕様は、プロバイダーがカスタマーネットワークから受信するトラフィックの送信元アドレスを検証する方法を定義します。カスタマーコーン(顧客とその下流ネットワーク)から正当に発信されるべきアドレス範囲を自動的に学習・維持し、不正なアドレスを持つパケットをフィルタリングします。DDoS攻撃、スプーフィング攻撃、BGPハイジャックなどのインターネット規模の脅威を軽減し、ネットワークセキュリティの基盤を強化します。

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Composite ML-KEM for use in X.509 Public Key Infrastructure

X.509公開鍵基盤で使用するためのComposite ML-KEMの仕様です。ML-KEM(Module-Lattice-Based Key-Encapsulation Mechanism)は、NISTが標準化したポスト量子鍵カプセル化メカニズムですが、既存のPKIとの互換性を保ちながら導入するにはハイブリッドアプローチが有効です。本仕様は、従来の鍵交換アルゴリズム(RSA、ECDH)とML-KEMを組み合わせた複合スキームをX.509証明書で使用する方法を定義します。両方のアルゴリズムを同時に使用することで、現在のセキュリティを維持しつつ量子耐性も獲得できます。TLS、VPN、コード署名、PKI全般において段階的なポスト量子移行を実現します。

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IETF Working Group Guidelines and Procedures

IETFワーキンググループのガイドラインと手順を定義する文書です。RFC 2418の更新版として、IETFのワーキンググループがどのように運営されるべきか、チェアの責任、参加者の行動規範、コンセンサスの形成方法、文書の進行プロセスなどを定義します。オンライン会議の普及、GitHub連携、より多様な参加者の増加など、現代のIETFの状況を反映した更新が含まれています。透明性、包括性、効率性を重視した新しいガイドラインにより、IETFの標準化プロセスがより円滑に機能し、グローバルなインターネットコミュニティの協力が促進されます。IETF自体のガバナンスとプロセス改善に関する重要な文書です。

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The Internet Standards Process

インターネット標準化プロセスを定義する文書です。RFC 2026の更新版として、インターネット標準がどのように作成、レビュー、承認、発行されるかを規定します。Internet-Draftの提出、ワーキンググループでの議論、IESGレビュー、RFCとしての発行、標準トラック(Proposed Standard、Internet Standard)の進行など、標準化のライフサイクル全体をカバーします。現代の開発実践(継続的統合、オープンソースコラボレーション)や技術環境の変化を反映した更新が含まれています。IETFの標準化プロセスの公式な定義として、インターネット技術の発展を支える基盤となる重要な文書です。

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The agent:// Protocol -- A URI-Based Framework for Interoperable Agents

相互運用可能なエージェントのためのURIベースフレームワーク、agent://プロトコルの仕様です。AIエージェントが普及する中、エージェントを一意に識別し、発見し、通信するための標準化されたメカニズムが必要です。agent://プロトコルは、エージェントのURIスキームを定義し、エージェントの種類、能力、エンドポイント、認証情報などを表現します。これにより、異なるプラットフォームやベンダーのAIエージェントが相互に通信し、協調して動作できるようになります。エージェント間メッセージング、サービスディスカバリー、マルチエージェントシステム、AIマーケットプレイスなど、分散AIエコシステムの基盤インフラストラクチャとなることが期待されます。

Draft Link

発行されたRFC

本日はRFCの発行はありませんでした。

編集後記

  • Part 3では、インターネットルーティングの高度化とポスト量子暗号の実装が大きなテーマでした。BGP SR Policyの拡張やDARTプロトコルは、アプリケーション要件に応じた柔軟なパス制御を実現し、次世代ネットワークの基盤となります。

  • また、OpenPGPやX.509 PKIへのポスト量子暗号統合は、長期的なデータ保護とデジタル署名の信頼性確保に不可欠です。RFC 3535の20年後の見直しは、ネットワーク運用者の要件がどのように変化したかを示す貴重な文書となるでしょう。

  • 最後に、agent://プロトコルの提案は、AIエージェント時代の相互運用性確保に向けた先駆的な取り組みです。

  • 3部構成でお届けした2025年10月16日の日刊IETFですが、70件という大量の提案を通じて、セキュリティ、ルーティング、AIエージェント、ネットワーク管理など、多岐にわたる分野で同時並行的に標準化が進んでいることが確認できました。

  • 特に、ポスト量子暗号への移行準備、AIエージェントの相互運用性、そしてネットワークのプログラマビリティ向上という3つの大きな潮流が見て取れます。

  • これらの標準化活動が実を結ぶ数年後のインターネットが、どのように進化しているか、引き続き注目していきたいと思います。


最後に、GMOコネクトでは研究開発や国際標準化に関する支援や技術検証をはじめ、幅広い支援を行っておりますので、何かありましたらお気軽にお問合せください。

お問合せ: https://gmo-connect.jp/contactus/

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