この記事はトラストバンクAdventCalendarの記事になります。
パブリテック事業部の大場です。
現在は「LoGoチャット」のプロダクトオーナー(PO)をしています。
計画通りに進まない現場でPOに求められる視点
POはプロダクトバックログ(PB)を整え、優先順位を決め、チームに渡すのが役割です。
PBを作成するとき、多くの場合は少し先の状態を想定し、計画しながら作成していると思いますが、実際の現場では、計画通りに進むことの方が少なく、常に何かしらの想定外が発生します。思ったより実装が重かった、チームの状況が変わった、ステークホルダーや顧客の要望が変わったなど理由はさまざまですが、「計画が前提としていた状態」が簡単に崩れることは珍しくありません。
想定外に対してまったく準備ができていないと、そのたびにバックログを一から練り直すことになります。その結果、チームは立ち止まり、「次に何をやるのか」を決めるために時間を使い、価値提供が遅れたり、優先順位の低いPBIが上位に残り続けたりします。
このような経験から、私は「正確な計画を作ること」以上に、不確定な未来とどう向き合い、どう準備しておくかが、POにとって重要であると考えるようになりました。
以下では、私が未来の想定外に対応するために普段考えていることを整理します。
予測と予見
私は、「予測」と「予見」の2つに分けて考えています。
予測
データに基づく推測です。
過去のベロシティや実績をもとにしたスケジュール感、リリース時期の見立てなどがこれにあたります。再現性があり、関係者にも説明しやすい一方で、データが示せない変化そのものまではカバーできません。
予見
日々の観察から生まれる推測です。
チームの発言の変化、リファインメントでの詰まり方、ステークホルダーの発言など、数字には表れにくい違和感から、「このまま進むと何が起きそうか」を想像します。
POにはどちらか一方ではなく、両方の視点を持ち、いくつかの起こり得るパターンを想定しておくことが求められます。
想定外には「種類」がある
想定外も、大きく分けて2つの種類があると考えています。
コントロールできる想定外
たとえば、チーム内の要因によるものです。
- 受け入れ条件の解釈違い
- チームの成熟度に対して重すぎるPBI
- 暗黙の前提が共有されていない状態
これらは完全に防ぐことはできなくても、事前に兆しを捉えたり、早めに気づける可能性が高い想定外です。
コントロールできない想定外
一方で、外的要因による想定外もあります。
- 組織方針の急な変更
- 法制度や市場環境の変化
- 外部依存のトラブル
これらは、予見すること自体が難しく、コントロールもできません。
両方について備える必要はありますが、特に「コントロール可能な想定外」 に注目すべきだと考えています。できるだけ早く検知して想定外の発生リスクを下げる、もしくは発生した場合の影響を小さくすることが重要です。
想定外を検知する予見的な実践例
具体的に私が実践している方法として一つ挙げると、リファインメントの前にPBIのストーリーポイント(SP)を想定しておくというのがあります。もちろん、見積もりはチームの仕事ですので、POがSPを決めたり、当てにいく必要はありません。
ここで重要視しているのは、チームの見積もりとの差分です。
もし想定と大きくズレた場合、そこには何かしらのギャップがあります。受け入れ条件の認識差かもしれませんし、前提理解やチームの成熟度の違いかもしれません。そのギャップは、「将来、想定外が起きそうなポイント」を早めに教えてくれます。ギャップそのものは悪いことではなく、スプリントに入る前に気づけたこと自体が価値となります。
こうした点はスプリントに入る前であれば解消できる場合も多く、結果として、未来に想定外が発生するリスクを下げることにつながります。
「少し先を見る」ときに気をつけていること
想定外を含めて考える際、私は未来を細かく決めにいかないようにしています。詳細すぎる計画や想定は、それ自体に工数がかかるだけで、実際にはほとんどその通りにならないからです。
やるべきなのは、状況が変わった場合に、優先順位が高いものだけを事前に準備しておくことです。
何かが起きたときに、「では次に何をやるか?」をすぐに示せる状態を作っておく。
それによって、チームを止めずに動かしながら、その先を考える時間を確保することができます。
予見という言葉を使うと、「未来を正確に見通すこと」だと思われるかもしれませんが、未来を当てるためのものではなく、変化が起きたときに素早く適応するための準備だと考えています。
細かい未来は考えすぎない。
ただし、何も考えずに今だけを見る状態にはしない。
そのバランスを意識するようにしています。
まとめ:予見は立場を問わず必要な思考
ポイント
- 計画通りに進まないことは前提として受け入れる
- 予測(データ)と予見(観察)の両方を使って考える
- 想定外には「コントロール可能なもの」と「難しいもの」がある
- 特に、事前に検知・対処できる想定外に注目する
- 未来を当てるのではなく、変化に素早く適応できる状態を作る
POはプロダクトの価値と優先順位を担う立場として、予見を明確な責務として引き受けているという認識を持っていますが、予測や予見の思考自体はどの立場においても必要だと考えています。
変化に強い組織を目指す上では、POが少し先を見て判断の余白を作り、チームが今に集中できる状態を整えること、そしてチームもまた、それぞれの立場から未来への違和感を持ち寄れる状態を作ることが重要だと考えています。