AIがコードを書いてくれる時代に、これから一から学ぼうとする人は減っているはずだ——そう思っていました。
「AIに仕事を奪われる」「エンジニアはオワコン」「今のうちに生き残る準備を」。こういう記事が明らかに増えているのを見ていると、なおさらそう思えてきます。感情で決めても仕方ないので、Qiitaの記事数を5年分さかのぼって数えてみました。
結果は逆でした。「未経験です」と名乗って学び始める記事は、2026年はまだ8月なのに、すでに2025年の一年分を超えていました。 同じ時期に、「生き残れるか」を語る不安の記事も過去最高ペースで増えています。順に見ていきます。
まず数えてみた:学ぶ人の発信は、減っていない
「みんなAIに頼って、もう基礎なんてやらない」「未経験者はもう入ってこない」——不安記事がよく描く空洞化の絵です。ところが、学び側の投稿数はまったく逆でした(数値はQiita記事数、created範囲での実測。2026は8月19日までのYTD)。
| 記事に含まれる語 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026(8/19まで) |
|---|---|---|---|---|---|
| tag:初心者 | 5,757 | 5,380 | 7,344 | 9,365 | 6,191 |
| 入門 | 4,413 | 4,584 | 4,573 | 7,074 | 5,262 |
| アルゴリズム | 3,085 | 3,297 | 4,391 | 6,018 | 4,756 |
| 未経験 | 1,485 | 1,794 | 2,008 | 2,842 | 3,682 |
いちばん象徴的なのが「未経験」。2026年はまだ7か月半で3,682件、すでに2025年通年(2,842件)を突破しています。年末まで残り4か月以上あることを考えると、この差はさらに広がる見込みです。初心者・入門・アルゴリズムも、崩れるどころか高水準を維持しています。
少なくとも投稿の量で見る限り、「AIがあるから誰も学ばない」は事実と反対でした。参入障壁が下がったから増えたのか、不安を煽られてかえって基礎固めに走る人が増えたのか、そこまではこの数字だけでは分かりません。
(検索条件:「未経験」「入門」「アルゴリズム」は本文・タイトルの語句検索、「tag:初心者」はタグ検索。集計単位は記事であり著者数ではなく、同一記事が複数語にまたがって計上されることもあります。)
同じ時期に、「不安」の言葉も過去最高ペースだった
学びの発信が減っていない一方で、不安の言葉が気のせいだったわけでもありません。こちらもはっきり増えています。
| 記事に含まれる語 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026(8/19まで) |
|---|---|---|---|---|---|
| エンジニア × 不安 | 426 | 501 | 665 | 1,160 | 1,462 |
| エンジニア 市場価値 | 167 | 257 | 402 | 628 | 887 |
| 生き残り/生き残る | 445 | 468 | 488 | 646 | 1,063 |
| AIに仕事を奪われる | 19 | 77 | 88 | 307 | 480 |
「エンジニア×不安」「エンジニア 市場価値」「AIに仕事を奪われる」は、いずれも2026年はまだ7か月半で、すでに2025年通年を超えています。中でも「生き残り/生き残る」は、2022〜2024年は400〜500件台でほぼ横ばいだったのに、2025年に646件、2026年は8月19日時点ですでに1,063件——2025年通年の約1.6倍のペースです。
背景で膨らんでいるのは、もちろんこれです。
| 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026(8/19まで) | |
|---|---|---|---|---|---|
| 生成AI | 874 | 3,684 | 7,329 | 17,404 | 21,809 |
生成AI関連の投稿が増えたのと同じ時期に、不安に関する語を含む投稿も増えています。因果関係はこの集計だけでは分かりませんが、少なくとも「不安の言葉が増えた年」と「学びの言葉が減った年」は一致していませんでした。
指数化すると見える:不安が立ち上がった年に、学びも立ち上がっていた
生の件数だと基準の水準がバラバラで比較しにくいので、2024年を100とした指数で4つの語を並べ直してみます。
| 記事に含まれる語 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026(8/19まで)* |
|---|---|---|---|---|---|
| 生き残り/生き残る | 91.2 | 95.9 | 100.0 | 132.4 | 217.8 |
| AIに仕事を奪われる | 21.6 | 87.5 | 100.0 | 348.9 | 545.5 |
| 未経験 | 74.0 | 89.3 | 100.0 | 141.5 | 183.4 |
| 入門 | 96.5 | 100.2 | 100.0 | 154.7 | 115.1 |
*2026列は8月19日までの累積値を2024年通年基準で指数化した参考値です(年途中のため、他年と単純な水準比較はできません)。
「生き残り」が2024年から2025年にかけて100→132.4へ立ち上がったのと同じ年、「未経験」も100→141.5へ立ち上がっています。2026年もこの上昇は両方とも続いています。
「『生き残れるか』が増えた年に、『未経験です、始めました』も増えていた。」
これは「人」の数字ではなく、「投稿」の数字だ
ここまでの数字は、Qiita上でその語を含む投稿が何本あったか、という関心・発信の分布です。学ぶ人の実人数でも、実際の学習時間でも、就業市場の分布でもありません。「未経験」を含む記事には転職体験記や採用記事も混ざりますし、語の揺れや重複計上もあります。
その前提のうえで言えることは、次の一点に絞られます。
「不安が増えた」ことと「学習が止まった」ことは、同じデータからは言えない。少なくともQiitaでは、両方が増えている。
「未経験」からの発信が増えていることは、「もう誰も新しく始めていない」という悲観論への反証にはなります。ただし、就職のしやすさやエンジニアとしての市場価値までは、この数字だけでは判断できません。それは別の指標で確かめる必要があります。
まとめ
- 「未経験」を含む発信は2026年、まだ8月の時点ですでに2025年通年を突破している
- 同じ期間、「生き残り」系の不安を含む発信も過去最高ペース(2025年通年の約1.6倍)で増えている
- 指数化(2024=100)すると、両者は同じ年に同時に立ち上がっている——「不安が増えた年は学びが止まった年」ではなかった
- ただしこれはQiitaの投稿数であって、学ぶ人の実数でも雇用市場の証拠でもない。「始める人が消えた」への反証にはなるが、市場価値の保証にはならない
いま日本の開発者が実際に何を学び、何を使っているかは、tasklog にデータでまとめています。不安な記事を1本読んだら、次はこちらで"実際に書かれている・使われている技術"を数字で確認してみてください。
- いま最も書かれている技術:https://s-tasklog.com/studies/most-written-tech
- 実際に使われているAIツール:https://s-tasklog.com/studies/most-used-ai-tools
※集計元:Qiita API(Total-Count、tasklog調べ、2026年8月19日実測)。2022〜2025は年間(created範囲)、2026は1月1日〜8月19日のYTD暫定値。集計単位は記事であり著者数ではなく、検索方式(語句検索/タグ検索)も語ごとに異なります。数字は継続更新のため変動します。