QuickSight の行レベルセキュリティ(RLS)を、概要レベルで整理します。
扱うのは「RLS が何をする仕組みで、いつ検討するか」の見当がつくところまでで、実際の設定やチューニングには踏み込みません。
このシリーズは QuickSight の権限を「認証 → 認可 → RLS → IAM 境界」の順にたどる入口記事の3本目です。
この記事では、以下の3つをまとめています。
- RLS が「認証 → ロール×共有」に続く、行を絞る層だということ
- ルールデータセットでどうやって行が絞られるか(概念レベルの仕組み)
- グループ単位でまとめて同じ絞り込みを配れること
「見えるアセット」と「見える行」──層が1段増える
権限を考えるとき、これまでの2本では「誰か」と「どのアセットか」の2つを見てきました。
RLS はそこに「どの行か」という3つ目の層を足します。
段を重ねて並べると、決めている対象が層ごとに違います。
| 層 | 何を決めるか | 担うもの |
|---|---|---|
| 誰か | サインインできる人か | 認証(1本目) |
| どのアセット | そのダッシュボードやデータセットが見えるか | ロール×共有(2本目) |
| どの行 | 見えるアセットの中で、どの行まで見えるか | RLS(本記事) |
上の2層を通ってダッシュボードが見えるようになっても、既定ではそのデータ全体が相手に見えます。
ただし、元になるデータセットに RLS がかかっている場合はそこで行が絞られる、という関係になっています1。
つまり RLS は、共有の「見える/見えない」の内側で、さらに行単位のフィルタを一段かける層です。
RLS の基本メカニズム──ルールデータセットで行を絞る
RLS は、データセット内のどの行をどのユーザーに見せるかを制御する仕組みです1。
仕組みの中心にあるのが、絞り込みの条件だけを集めた別のデータセット、ルールデータセット(権限データセット。公式 UI では「アクセス許可データセット」「ユーザーベースのルール」と表示されます)です。
ルールデータセットは、「どのユーザーに、どの値の行を見せるか」の対応表です。ユーザーを識別する列と、絞り込みに使う列を持ちます。地域列を持つ売上データなら、次のようなイメージになります。
| ユーザー | ルールでの対応(担当地域) | 開いたとき返る行 |
|---|---|---|
| ユーザーA | 東日本 | 東日本の行だけ |
| ユーザーB | 西日本 | 西日本の行だけ |
同じダッシュボードでも、開く人によって返る行が変わります。処理の流れは次の3ステップです。
- ユーザーがダッシュボードを開く
- QuickSight がそのユーザーでルールデータセットを引く
- 対応づいた値の行だけを、元のデータセットから通す
つまずきポイント: RLS は「ダッシュボード側の設定」ではありません。制限がかかるのは元のデータセットで、絞り込み条件はさらに別のルールデータセットが持ちます。この二段構えが、最初は像を結びにくいところです。
アクセス権の付与方式
ルールデータセットの各行には、その行を「見せる」ためか「隠す」ためかの意味づけがあります。方式は2つありますが、2026年7月時点で新規に使うのは実質1つです。
| 付与方式 | 意味 | 現行での扱い |
|---|---|---|
許可方式 GRANT_ACCESS
|
ルールに並べた行だけを見せる | 実質これ一択。新規はこちら1 |
拒否方式 DENY_ACCESS
|
逆向き(隠す側の指定) | 新規データセットでは選べず、後方互換のみ。どの行を見せ/隠すかは現行ドキュメントに明示なし23 |
概要としては許可方式だけ押さえれば十分です。「ルールに並べた行だけを見せる/対応づいていないユーザーやデータには何も渡さない」という素直な方式で1、拒否方式は新規で選べない以上、深追いは不要です。
グループ単位で配る
ルールデータセットは、ユーザーを1人ずつ書く代わりに、グループを識別する列を使って書くこともできます1。
個人ごとに行を並べず、グループ単位でまとめて同じ絞り込みを配れるので、人数が増えても対応表が肥大しにくくなります。
まとめ
- RLS は権限の最後の層: 共有で見えるようになったデータの内側に、行単位のフィルタをもう一段かける。
- 使いどころ: 同じダッシュボードを大勢に配りつつ、人・部署ごとに見える行を変えたいとき。
- 最初の一歩: 元データとは別に「誰に、どの行を見せるか」の対応表(=ルールデータセット)を1枚用意すること。
関連記事
QuickSight の権限を「認証 → 認可 → RLS → IAM 境界」の順にたどる入口記事です。
- 1本目 QuickSight のログイン方式を整理する(認証)
- 2本目 QuickSight のアクセスはロールとリソース共有で決まる(認可)
- 3本目 QuickSight の行レベルセキュリティ(RLS)とは(本記事)
- 4本目 QuickSight の権限と IAM の関係を整理する(IAM 境界)

