QuickSight を使い始めて最初に戸惑いやすいのが、サインインまわりの用語です。
「ネイティブ」「IAM フェデレーション」「IAM Identity Center」と、名前は似ているのに指すものが違います。
とくに IAM フェデレーション と IAM Identity Center は混同しやすい2つです。
なお、この記事で扱うのは「どうやってサインインするか(認証)」だけで、サインイン後の「何を見られるか(認可=ロールや権限)」には踏み込みません。
この記事で整理したいこと
この記事で整理するのは、次の3点です。
- QuickSight のサインイン方式にはどんな種類があるのか(全体像)
- よく混同する IAM フェデレーション と IAM Identity Center は何が違うのか
- 自分の環境がどの方式で動いているか、その見当のつけ方
この記事はサインイン方式(認証)の全体像に絞ります。以下は扱いません。
- MFA(多要素認証。サインイン方式に並ぶものではなく、どれかに足す要素です1)
- SCIM プロビジョニング、SAML メタデータ等の具体的な設定
- トラブルシュート
- 認可(ロールや共有)
QuickSight は Amazon Quick へ改称され、QuickSight 自体は「Amazon Quick Sight」機能として継続します。API や既存の設定は変更なしとされています2。正確な発表時期や、画面ラベルが「QuickSight」「Quick Sight」のどちらで表示されるかまでは本記事では確認できていないため、踏み込みません。
サインイン方式の全体像
QuickSight のサインインには複数の方式があり、公式ドキュメントでも認証まわりのツールとして IAM Identity Center・IAM federation・AWS Directory Service の AD・SAML SSO・MFA が並んでいます3。
ここでは「誰がユーザーを管理するか」で2つの系統に分けて整理します。
- 系統A:ネイティブ: QuickSight 自身がユーザーを管理する
- 系統B:外部ID連携(フェデレーション): QuickSight の外にある仕組みにユーザー管理を委ねる
ただし、この2系統はあくまで理解のための整理で、公式の厳密な分類ではありません。
公式の一次的な区分は API に現れていて、ユーザー登録時の IdentityType は IAM / QUICKSIGHT / IAM_IDENTITY_CENTER の3値です4。以降の「系統A/B」は、この3値を分かりやすく束ね直した呼び方です。
系統A ネイティブ(QuickSight 自身がユーザー管理)
| 方式 | API IdentityType
|
誰がユーザーを管理するか | エディション条件 |
|---|---|---|---|
| QuickSight-managed | QUICKSIGHT |
QuickSight 自身 | Standard / Enterprise |
系統B 外部ID連携(フェデレーション)
| 方式 | API IdentityType
|
誰がユーザーを管理するか | エディション条件 |
|---|---|---|---|
| IAM ユーザー・ロール | IAM |
AWS の IAM | Standard / Enterprise |
| IAM フェデレーション(SAML 2.0) | IAM |
企業の IdP + IAM ロール | Standard / Enterprise |
| IAM Identity Center | IAM_IDENTITY_CENTER |
IAM Identity Center | Enterprise のみ |
| Active Directory | — | AWS Directory Service の AD | Enterprise のみ |
系統の A/B は前掲の整理、API の IdentityType は API リファレンス4、エディション条件は AWS のサインアップ設定ドキュメント3によります。
系統A ネイティブ(QuickSight 自身がユーザー管理)
系統A は、QuickSight 自身がユーザーを持つ方式です。
- 流れ: 管理者がメールアドレスでユーザーを招待 → 招待された人が QuickSight のユーザーとしてサインイン
- 特徴: 外部の IdP を用意しなくても完結する(Standard エディションでも「QuickSight 内で完結」または「IAM 連携」の範囲が使える3)
- 向く場面: 社内の ID 基盤と切り離して、まず QuickSight だけを小さく触りたいとき
系統B 外部ID連携(フェデレーション)
系統B は、QuickSight の外にある仕組みにユーザー管理を委ねる方式です。
まず素朴なのが、AWS の IAM ユーザーやロールをそのまま QuickSight に登録する形。そこから連携先を広げていくと、次の方式が出てきます。
IAM フェデレーションと IAM Identity Center ─ どこが違うのか
混同しやすいのが、この2つです。同じ SSO 的な体験に見えても、担い手と適用範囲が違います。
| 観点 | IAM フェデレーション | IAM Identity Center(旧 AWS SSO) |
|---|---|---|
| ひとことで | QuickSight が IAM ロール経由で企業の IdP を相手にする | AWS 横断のサインイン基盤にまとめて委ねる |
| 仕組み | SAML 2.0 で企業の IdP と直接連携し、サインイン時に IAM ロールを引き受ける | AWS アカウント・サービスをまたぐサインインを束ねる |
API の IdentityType
|
IAM |
IAM_IDENTITY_CENTER |
| エディション | Standard / Enterprise | Enterprise のみ |
※ API 上の区別は4、エディション条件は3による。IAM フェデレーションは、IdP 側のグループを QuickSight へ同期する機能を持ちません5。
連携先としての AD とサードパーティ IdP
- Active Directory: AWS Directory Service の AWS Managed Microsoft AD と AD Connector の両方に対応。オンプレミスの AD も、AD Connector やフェデレーション経由でつなげます6
- サードパーティ IdP: SAML 2.0 に対応していれば連携でき、AD FS・Okta・Ping などが例に挙がります5
-
OIDC(
CUSTOM_OIDC・COGNITO): web identity federation = IAM ロールへの紐づけとして使えます。ただしネイティブなアカウント ID の供給源とは別枠です47
どの方式を使えるか&自分の環境の見分け方
使える方式はエディションで決まります。
- IAM Identity Center・Active Directory: Enterprise エディション限定3
- IAM フェデレーション・SAML SSO: Standard / Enterprise の両方3
- Standard: 「QuickSight 内でユーザー管理を完結」または「IAM と連携」の範囲3
自分の環境がどれかを見分ける手がかりは、次のあたりです。
- サインイン画面: QuickSight 独自のログインか、企業の IdP や AWS のサインインに飛ぶか
- 入口: AWS マネジメントコンソール経由か、QuickSight 固有の URL からか
※ 画面からの見分けは断定しづらいため、確実なのはアカウントを作成した管理者に「どの ID 方式で作ったか」を確認することです。
関連記事
QuickSight の権限を「認証 → 認可 → RLS → IAM 境界」の順にたどる入口記事です。
- 1本目 QuickSight のログイン方式を整理する(認証)(本記事)
- 2本目 QuickSight のアクセスはロールとリソース共有で決まる(認可)
- 3本目 QuickSight の行レベルセキュリティ(RLS)とは
- 4本目 QuickSight の権限と IAM の関係を整理する(IAM 境界)