給与に関連する法改正等のシステム影響
少し前の話になりますが、103万円の壁見直しについて、大きく取り上げられました。
103万円の壁見直しにより、税制が変わり、給与システムは大きな影響を受けます。
給与システムにも色々なパッケージ製品等がありますが、
今回はその中でも、SAPの給与システムでは、税制等の法改正対応をどのような流れで行うのか、
私の経験を書こうと思います。
「給与に関連する法改正等」と言っても、種類は様々です。
1つは、さっき例であげた、103万円の壁見直しのような、税制改正です。
税制改正といっても、その中にも様々あります。
月例給与、賞与、退職金、年末調整、それぞれに関する変更があります。
他には、社会保険に関する変更です。
社会保険の料率変更、標準報酬に関する変更、等々があります。
今回は、主に年末調整に関する、税制改正に対応する流れを書いていきます。
年末調整に関する税制改正対応の流れ
まずは、システム外のところで、年末調整に関する税制改正は、どのような流れで決まっていくのか、
大まかな流れはこんな感じです。
- N-1年12月中旬頃:税制改正大綱の発表
- N年2月頃:税制改正の閣議決定
- N年3月頃:国会で法案成立
- N年9月~10月:年末調整の手引き発表
- N年11月〜12月:年末調整
システム対応の流れはこんな感じです。
- N-1年12月~:税制改正大綱の内容を確認して、システムへの影響を推測
- N年3月~4月:税制改正の内容を元にシステム影響を確認、リソース(人員・予算等)確認
- 上記以降:SAPからの変更内容が周知され次第、対応計画を策定
SAPからノート(パッチのようなものです)がリリースされ次第対応スタート
こう見ると対応期間に余裕があるように見えますが、大体の場合、
SAPからノートがリリースされるのは、8月頃になることが多いです。
各会社にもよりますが、年末調整の社員からの申告受付は、10月末から11月頭にスタートさせます。
そして12月中旬の給与計算で年末調整を行いますので、システム対応のデッドラインは、こんな感じです。
- 10月末:社員からの申告を開始するための機能
- 11月末:社員からの申告内容をシステム登録するための機能
- 12月中旬:年末調整計算に必要な機能
当然のことながら、社員の給与や納税事務等に影響するので、期限は厳守です。
こう見ると、システム対応はおよそ8月~11月の4か月でやりきる必要があります。
さらには、SAPから標準機能の変更内容が発表されないことには、自社で組んでいる
機能への影響や改修方法が確定しないため、その4か月で改修だけではなく、
要件定義もやらないといけません。
ちなみに、もっと言うと1月中旬頃までに、源泉徴収票に関連する対応も必要になります。
そんな短い期間でシステム対応を実施しなければならない中で、
私がコンサルタントとして工夫したことをおまけに書いておきます。
- 年末調整関連機能の保守性をあげる工夫
- ユーザ業務の効率化を図り、システム対応期限をなるべく後ろ倒しにする工夫
- システム対応を迅速かつ止まる事なく実施できる工夫
それぞれ詳しく書くと、記事が1つできそうなので、乞うご期待としつつ、
簡単に概要だけ触れておきます。
年末調整の税制改正対応への工夫
年末調整関連機能の保守性をあげる工夫
年末調整関連機能の保守性を高め、法改正があった場合に、プログラム改修ではなく
パラメーター設定で対応できる範囲を広げることで、工期短縮をはかります。
ただし、パッケージ製品の標準機能はどうすることもできないので、
自社で構築した機能が対象です。
ユーザ業務の効率化を図り、システム対応期限をなるべく後ろ倒しにする工夫
年末調整関連のユーザ業務について、システムによる自動化やフローの効率化により
業務そのものにかかる期間の短縮をはかります。
ユーザ業務が短縮できれば、その分システム対応の期間を少しでも延ばすことが可能です。
システム対応を迅速かつ止まる事なく実施できる工夫
システム対応を迅速に行うには、事前の調査やリソース・予算の確認等々、
事前準備を実施しておかなければ、税制改正の内容決定やSAPからのノート提供を待ってから
それらの準備を始めると、システム対応のスタートダッシュがきれません。
そのため、やりすぎぐらいに準備をしておくことが重要です。
最後に
年末調整と聞くと、年末に訪れるちょっと面倒な申告作業を思い浮かべると思いますが、
給与システムの保守を仕事としている人にとっては、1年前からそれに向けて準備を始めています。
裏では結構苦労しているんです。。。
年末調整を行うときに少しでも思い出してもらえると嬉しいです。