2025年に使い始めて良かったツール10選
2025年に個人的に使い始めて、開発体験が向上したと感じたツールを紹介します。
Claude Code
これを言っておかないと嘘になるので、まず紹介します。
ご存知の通り、AIコーディングエージェントの覇権ツールで以下の特徴を備えています。
- コーディングにおいて最高峰のモデル(執筆時点ではOpus 4.5)がサブスク範囲で使用できる
- サブエージェントやエージェントスキルといったコーディングのクオリティを限界まで上げるための機能をいち早く取り入れている
前者は特に重要で、基本的に従量課金だったCline/RooCodeから多くのユーザーが移行し、そのままロックインに成功した印象があります。
モデル性能も重要です。たとえば最近話題のAntigravityは機能面で確かに優れていそうですが、問題解決能力はOpus 4.5に比べると(執筆時点でPreview段階の)Gemini 3.0 Proは大きく劣るため、やはりClaude Codeの牙城を崩すには一歩及んでいないように見えます。
逆にCursorは、Opus 4.5がサブスク範囲で使える上に、Claude Codeにはない独自機能がv2以降で大量に追加されています。ぶっちゃけコスト的にあまり触れなかったのでどちらの方が良かったかは言えません。2025年は個人的には完全にClaude Codeの年でした。
TrailBase
軽量なSupabase代替として登場した、セルフホスト専用のバックエンドプラットフォームです。Rust製でパフォーマンスが非常に高く、ベンチマークではSupabaseの約40倍とされています。メモリ使用量は100MB程度で、Supabaseは6GB程度であることを考えると非常に軽量であることが分かります。
React等のSPAのビルドディレクトリを指定して起動すれば、同一プロセスで静的ホスティングもできる点が便利で、コンテナ化すれば単一のコンテナでフルスタックのWebアプリケーションとして起動できるので、VPSだけではなくFargateやCloud Run等のサービスでもリーズナブルに運用できます。
実はSupabase代替のOSSとしてPocketBaseというものもあり、こちらはかなりTrailBaseと似ています。WASMでカスタムエンドポイントを書けたり、ハードに使用した際のパフォーマンスはTrailBaseが上回るのが差別化ポイントです。SQLやWASM等の標準規格を薄くラップしているだけなので、習得した知識がポータブルなのも魅力です。逆にPocketBaseの方が認証周りの機能が豊富なので、採用する際は慎重に比較してください。
marimo
リアクティブなPython Notebookです。従来のJupyter Notebookがある種命令的だったのに対し、marimoはセルの依存関係をDAG(有向非巡回グラフ)で管理し、変更があったセルの下流を自動的に再実行する宣言的な振る舞いをします。jQuery→React/Vue.jsのパラダイムシフトと似た感覚で、フロントエンドにも馴染みがある方にとっては特に取っ付きやすいと思います。
ファイル形式は純粋なPythonスクリプトなので、Gitでのバージョン管理が容易です。また、作成したNotebookをスクリプトやWebアプリとしてデプロイすることもできます。
個人的にはJulia版が欲しいところです。
ClickStack
ClickHouseが提供するオールインワンのObservabilityスタックです。ClickHouse、OpenTelemetry Collector、HyperDX UIを統合し、ログ・メトリクス・トレース・セッションリプレイを一つのプラットフォームで扱えます。
従来のLGTMスタック(Loki/Grafana/Tempo/Mimir)と比較すると、複数のステートフルなシステムを管理する必要がなく、クロスシグナル相関もネイティブで対応しています。SQLとLucene両方のクエリ構文に対応しているのも使いやすいポイントです。
まだ実現できないことも多いですが、構築・管理があまりにも楽なので、コスト面からNewRelicやDatadogを採用できない時には、ぜひ採用検討してみてください。
Aurora DSQL
AWSが提供するPostgreSQL互換の完全サーバーレスな分散SQLデータベースです。
元々サーバーレスと呼ばれるRDBは、ほとんどが単純なオートスケール機能を持ったものや、使用量に関わらず基本料がかかるものでした。DynamoDBのように最初から完全にリクエスト単位(厳密には違いますが)で課金されるサーバーレスRDBはAurora DSQLが初ではないでしょうか。この課金体系はお金のない組織や個人にとってはかなりありがたいです。
分散データベースなので外部キー制約が使えなかったり、PostgreSQLなのに拡張機能が使えなかったりと、制限は多いですが大抵のアプリケーションでは問題ないはずです。
byethrow
軽量でTree-shakableなTypeScript向けResult型ライブラリです。個人的にはバックエンド開発においてResult型は必須だと考えていますが、どうしうてもTypeScriptでバックエンドを書いた方が良い場面は存在します。
TypeScriptにResult型相当の機能を与えるライブラリとして、effect-tsやfp-tsがありますが、これらは独自の概念の習得が必須で、新しくプログラミング言語を覚えるかのような体験でした。
byethrowの構文はかなりシンプルですが機能を削りすぎておらず、ドキュメントに記載の通り「シンプルとパワフルの間のスイートスポット」をまさに体現したライブラリであると感じます。クラスではなくプレーンオブジェクトでResultを表現するため、JSONシリアライズが可能で、React Server ComponentsのServer Actionsとの相性も良好です。
Connect (ConnectRPC)
gRPC-Web互換のRPCフレームワークです。Buf社が開発しており、TypeScriptとGoに対応しています。
React Server ComponentsやServer ActionsをBFFとして使用する場合、「基本的にはBFF経由でバックエンドにアクセスしたいが、一部クライアントから直接アクセスしたい」といった要件が発生する場合があります。そういった場合に、バックエンドとフロントエンド間を型安全に通信するにはどうすれば良いでしょうか?
OpenAPIやGraphQLは構成が過剰になりがちで、純粋なgRPCはクライアントコンポーネントから呼び出す際にEnvoy等のプロキシが必要になります。また、これらの複数要素を組み合わせるのも、やはり設計が複雑になります。Connectは基本的にはgRPCサーバーとして振る舞いますが、ブラウザからプロキシも無しに直接呼び出しが可能で、Protobufベースの型安全性も確保できるため、RSC環境での最適解だと感じています。
Connect自体の完成度も方向性も非常に優れていると感じますが、対応言語が少ないのは明らかにネックなので、この後の進展にも期待です。
Zed
VSCodeのターミナルでClaude Codeを使用するとUIが崩壊することがあったため、VSCodeフォークではないエディタを探してたどり着きました(途中でNeovim等も試しました)。
Rust製の高速なコードエディタで、この記事も一旦Zedを使ってローカルで執筆していますが、プレビューを含めて明らかにサクサクしていて書いていて気持ちがいいです。
去年までは日本語入力に難があった記憶がありましたが、2025年に入ってからはかなり安定してきたのか、今の所大きな不満はなく使えています。
CodeRabbit
AIを活用したコードレビューツールです。よくあるLLMベースのレビュー機能は差分を自然言語と同様の仕組みで解釈しますが、CodeRabbitはAST(抽象構文木)を分析することでより高精度なレビューが可能です。
Claude Codeで書いたコードを同じ仕組みのLLMにレビューさせても問題を見つけづらいので、このように違う仕組みのレビューツールがあると、確かに問題の捕捉率があがる感じがします。
Claude CodeやCursorと組み合わせることで、人間がほとんど介在せずともある程度のクオリティで「コーディング→レビュー→修正」のサイクルを回せるようになります。
DeepSeek API
サービスにLLM APIを組み込む際、廉価版モデルを使いたくなることがあります。DeepSeek V3.2は、そのような用途に最適な高コスパモデルです。
以下は2025年12月時点での廉価版モデルの価格比較です(100万トークンあたり):
| モデル | Input | Output |
|---|---|---|
| DeepSeek V3.2 | $0.28 | $0.42 |
| GPT-5 mini | $0.25 | $2.00 |
| Claude 4.5 Haiku | $1.00 | $5.00 |
DeepSeekはInput価格こそGPT-5 miniとほぼ同等ですが、Output価格が約5分の1と非常に安価です。また、パフォーマンス面でもこれらの廉価版モデルとほぼ同等とされています。
中国企業のサービスであるため、機密性の高いデータには不向きですが、用途を選べばかなりコスパが良いです。
2025年使い始めたけどやめたもの
- スペック駆動開発系のもの
- 既存のスペック駆動開発ツールはまとめて要件を一気に書き出すものが多く、それの修正に結局時間が取られる感じがした
- Claude CodeのPlanモードが優秀すぎたため、必要性を感じなくなった
- Convex
- TypeScriptファーストなSupabase代替
- SupabaseはSQLファーストなので、TypeScript慣れしているとConvexの方がDXが高いと今年話題に
- 結局ビジネスルールをTypeScriptで書く必要が出てくるので、Next.jsでフルスタックに開発するのと体験はあまり変わらなかった
まとめ
以上です。今年は気になってるけど触れなかったものもいっぱいありました(S3 Vectorsとか)。皆さんもオススメのツールがあれば教えてください。