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量子コンピューター関連ニュースの振り返り(2019年版)

Last updated at Posted at 2019-11-30

こんにちは。量子ベンチャー Quemix の 竹澤です。
今年も「量子コンピュータ Advent Calendar 2019」に参加しています。

最近量子コンピューターに興味を持った方も多いことですし、初日の軽めの読み物として、この1年のニュースを振り返ってみたいと思います。
ただし、日本のニュースを書くと、どうしても自分に近い話になってややこしいので、グローバルなニュースを中心にしました。

2018年12月

2018年は3月にGoogleがBristleconeという72量子ビットの量子プロセッサーを発表1して、年内に量子超越(Quantum Supremacy)を証明すると言っていました。
時は過ぎ、12月になり、2日にAdvent Calendarを書いたあと、年内ってあと1ヶ月だよな、果たしてGoogleから発表があるかな、とぼんやり思っていました。

そんな中、12月中旬に突然飛び込んできたニュースは、IonQがイオントラップ方式で160量子ビットを実現2というものでした。それも2019年にはプライベートベータを開始するということでした。いままで割と超伝導量子ビット一色だったところにイオントラップの話題が出てきて、それも160量子ビットってことで、年末に量子関係の方を会うとみんなこの話をしていました。

IonQ、1原子を1量子ビットとする“イオントラップ”型量子コンピュータ
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1158837.html

2019年1月

年が明けて1月、毎年の年初に開催される米国のCESでIBMが新しいハードウェアの発表をしました。IBMは量子コンピューターの性能指標として量子ボリューム(Quantum Volume、以下QV)というのを提唱していて、この新型機はQV16とのこと。それ以前のマシンが、QV4、QV8、と来ていたので、IBMは量子コンピューターにもムーアの法則のようなものがある3と言っています。

IBMが世界初ゲート型商用量子コンピューターIBM Q System Oneを発表
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/event/18/00042/00027/

2019年2月

2月にはD-Wave社からも次世代機の発表がありました。以前は2019年春に出すといっていたハードウェアですが、結局2020年に出るということで1年ぐらい遅れることになったようです。
最近ではD-Waveは量子コンピューターではなく(量子)アニーラーもしくは(量子)アニーリングマシンと称するというのが一般的になってきましたが、組み合わせ最適化の用途に限定すると、富士通のデジタルアニーラー4、東芝ソリューションズのSBM5、日立のCMOSアニーリングマシンやMomentum Annealing6、NECが開発中のものなど、2019年を通してハード・ソフトともにいろいろ競合も揃ってきた1年でしたね。

Dウェーブ次世代機、5000量子ビットで2020年出荷
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41905150R00C19A3000000/

あと、Honeywellも量子コンピューターを作っている7という話が出ていたのもこの頃だったのではないでしょうか。

2019年3月〜6月

この時期はあまりニュースのない時期でした。
古澤先生の著書8や、武田先生の発表9が少し話題になっていた記憶があります。

2019年7月〜8月

某氏のTwitterで「量子コンピューター界初のM&Aを観測」的な話があり、海外か日本か?日本だったらどこ?みたいな話で(一部で)盛り上がりました。結局ハード開発をしているRigettiがソフトウェア開発をしているQxBranchを買収10するという、ありがちなストーリーの買収でした。「日本であそこがあそこを買ったら面白いね」と言っていたのは夢で終わりました。

2019年9月

IBMは2017年11月に50量子ビットのプロトタイプを開発したと発表していましたが、それを超える53量子ビットのハードウェアがいよいよIBM Qパートナー向けに公開11されることになりました。

IBMが53量子ビットの量子コンピューターを近日公開
https://jp.techcrunch.com/2019/09/19/2019-09-18-ibm-will-soon-launch-a-53-qubit-quantum-computer/

2019年10月

今年最大の盛り上がりは10月です。
まずは政策系のニュースですが、海外に比べて日本の量子コンピューティングに対する投資額が少ないのが懸念材料でした。こちらはJSTの嶋田義皓さんが私達のプライベートイベントで投影された資料です。
Screen Shot 2019-11-21 at 18.17.41.png

そんななか、日本もようやく投資額の引き上げを検討したようで、こんなニュースが出ました。300億円の一部でも我々のようなベンチャーにも回ってくることを願うばかりです。

量子技術 米中の背中追う 政府、予算倍増めざす
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO50549010T01C19A0TJN000/

そして10月23日にGoogleの量子超越性の論文が公開12されました。直前には日経新聞が一面に量子コンピューター記事を載せたり、直後にIBMが量子超越性に異議を唱えたりと慌ただしい一週間でした。

「超計算」人類の手中に グーグル実証か
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51143200Y9A011C1MM8000/?n_cid=DSREA001

その後の盛り上がりは皆さんご存じのとおりです。NHKをはじめとする大衆メディアも一斉に(誤解を受けそうな表現も含めて)報道しました。ちなみにGoogle Trendsを見てみると、10月23日の週は、量子コンピューターが人気ワードになっていました。赤が「Quantum Computing」、青が「量子コンピュータ」というキーワード検索で、ここ1年の急激なピークが10月23日の週に来ています。
Interest over time.png

2019年11月

Microsoftが自社のイベントIgniteでAzure Quantumを発表しました。面白いのが実行環境で、Microsoft製のほか、IonQ、Honeywell、qci(Quantum Circuits, Inc.)のハードが(全てではないと思いますが)数ヶ月以内に利用できるようになる13、とされています。これは楽しみですね。

マイクロソフト「Azure Quantum」で提携--Honeywellの量子コンピューティング責任者に聞く
https://japan.zdnet.com/article/35145104/

最後に

そういえば、今年は一般向け書籍もたくさん出ましたね。2018年に比べて量子コンピューティングに対する情報量が圧倒的に増えました。
ますますエキサイティングになってきたこの業界、次の1年も楽しみです。

本日以降は、エンジニアの皆さんの力作記事が続くので、約1ヶ月間楽しめそうですね。

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