フェルミ粒子のランダウ理論というのがある。相互作用のあるフェルミ粒子系においては、準粒子という概念が導入できる、そして低エネルギー励起は「準粒子」で記述できる、とする理論である。
平たく言えば、固体などにおいても「一体有効ハミルトニアンを考えて、それによる独立粒子近似で励起を考えるとだいたい計算できるはずですよ、まあ場合によったら準粒子間の相互作用を考えたらいいかもしれないです」という理論である。
一般にはフェルミ流体理論は一様電子ガスで議論されるが、「半導体のフェルミ流体理論」のほうが考えやすいし実用的でもある。まず相互作用のない系での半導体バンド構造を得ておくーすなわち、一体ハミルトニアンを外場が与えると考える。そして、その外場を徐々に電子間相互作用に置き換えていくことを考える。このときバンド構造(準粒子バンド)は保持しながら導入していく。(これはバンド構造保持型の断熱的な相互作用導入である. Adiabatic connection(ADC). )
バンドギャップがある場合、しきい値内の準粒子バンド(VBM-gapからCBM+gapのバンド)の寿命は無限大である。しきい値をこえるとペア生成(オージェ)による寿命が生じる。この「しきい値内の準粒子バンド(VBM-gapからCBM+gapのバンド)の寿命は無限大である」という点は重要である。電子間相互作用に置き換えていくとき、しきい値内の準粒子バンド構造は不変に保てるのである。
言い方を変えると、「しきい値内のバンド構造を保つような断熱的相互作用導入の仕方が存在する」ということである。電子間の相互作用がものすごく大きいにもかかわらず準粒子は(フォノンを無視するなら)散乱をうけることなく運動することができる。平たく言えば、
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電子が低エネルギーからガッチリ詰まったものが基底状態である、という点は相互作用導入によっても変わらない。相互作用がある場合に厳密に言えば「電子付加エネルギー」と「電子引き抜きエネルギー」に有限の差がある。この差がバンドギャップ。これは厳密に証明できるはずの事実。付加あるいは引き抜き、とそれをペアにした光学励起は区別して考える。
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そのような基底状態での低エネルギーでの素励起(VBM、CBM近傍での励起)は準粒子による。準粒子とは、あたかも相互作用がないかのように振る舞う粒子(固有値、固有関数で指定されるバンド構造)のこと。
これが半導体物理の基礎となっている。半導体はおそろしく完全結晶に近く透明で量子力学が有効に適用できる。そして実学的でもある。またこの考えは分子を考えるときや金属を考えるときなど、一般的な電子励起を考えるときでも有効である。
ミューオン(別の荷電粒子)ならどうなるか?別の粒子なので交換相関項のうちの相関項しか働かない。単純には電子を押しのけながら走っていくという物理的な状況になる。プラズマ振動数が高いので、ゆっくり動くほどに大きく電子を押しのける必要があると思う。高速になるとだんだんに電子を押しのけなくても走れるようになる。
質量が全く違うのできちんと考えないといけない。
占有数もゼロであり自己エネルギー項(相関項)の計算も全く違っている。
参考ではあるがHedin Lundquvistによる一様電子ガスでの自己エネルギー補正は

である(交換相関項はキンク的な形のもの。相関項は交換項の寄与をおおきく打ち消している。相関のみの寄与はHF項-交換相関項。)。