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電子電子散乱は長距離(RPA)と短距離(固有分極)に分けて考える

Last updated at Posted at 2025-10-24

電子系を考えるとき、短距離散乱と長距離散乱に分けて考える。長距離散乱はクーロン力によるもので比較的簡単なものー電子密度による電子散乱。この長距離散乱はそもそも散乱と言わない。電子密度によって電子に力がかかる。このクーロン力の項は「古典的」です。

第一原理計算の大目標の一つは 「二体相関関数」の信頼性の高い計算、です。これがなかなかにむずかしい。まずは基底状態、計算量、数値精度など多くの問題がある。もちろん、表面、分子吸着などいろいろな状況がある。原子位置ダイナミクスとも組み合わしていかないといけない。
この「二体相関関数」とは、非対角項も含めての)電荷ゆらぎ磁気ゆらぎです。まずは固有分極を計算して、それを用いてRPAの枠組みで計算する、ということになる(RPAはコンセプトとしてはクラジウスモソッティの方法と似ている)。

SOCがなければスピン横ゆらぎは完全に電荷ゆらぎから分離される。が、SOCが入るとGreen関数はSOCでスピン反転しうるので分離されない。スピントロニクスでは無視できない。

で、固有分極の計算が問題になる。ダイアグラムの言葉で言えば、クーロン力で分離されるダイアグラムが入らない部分を計算する、ということ。
とにかく、基礎的な量として、固有分極が与えられたなら、電子電子相互作用として、スクリーンされた相互作用WがRPAの結果得られる。

固有分極計算では、電子間の短距離散乱が問題になる(普通のやり方だと、W(omega=0)で計算する)。場合によれば量子力学的に計算せずに、ボルツマン方程式を利用することもある。散乱をいれないのが通常のRPA計算。これを超えるには、はしご近似(2体問題を真面目にとく、大抵はTamm-Darkoff近似で時間方向は固定する)が一般的。

  • 一方、モデル計算では、ハバードモデル(スクリーンされたクーロン相互作用を一点に縮めてしまうからくりをあらかじめ入れこむ)などで計算してしまうことも多い。場合によればおかしな近似であり得る。ハバードモデルではおかしな電荷ゆらぎが出る(ゴールドストンの定理を満たす電荷ゆらぎ)。Fock exchangeのメカニズム(占有状態のみ押し下げる)も入らない。FELX近似は、Baym-Kadanoffの$\Phi[G]$から出発するので自動的に保存則を満たす(対称性ー>ネーターの定理)。それにexchange-pairダイアグラムを全部取り込むのでフェルミ統計が満たされている。FLEXはモデル世界での理論的整合性はよろしい。が、本来は上述の考えにしたがって、その立ち位置、適用範囲を認識した上で使わないといけない。ハバードモデルを真面目に解いてもしかたがない、とも思える(ぼくレベルの人間が言うのも乱暴だが)。

  • 電荷ゆらぎの主要部はプラズマ振動で、(素朴には)クーロンの長距離性のおかげでゴールドストンの定理が破れて、高いエネルギーに出る。なので無視してよろしい、ということになっている。がもちろん一般にはそうではない。とくに表面プラズモンなどの問題がある。

  • 中性フェルミ粒子に対する「ランダウフェルミ流体理論」というのがありその結論は(フェルミ統計を考えた散乱項をもつ)準粒子のボルツマン方程式を解けばよろしい、ということになっている。Silinの拡張というのがあるけどこれはクーロン相互作用をRPA的につけ加えたもの。これは上記の固有分極+RPAに分離する、ということに対応している。

  • スピントロニクスでもFe/Siに電場をかけるのならなんらかの形でRPAをとりこまないとスピン注入$\langle \hat{S}_z \hat{n}\rangle$は定量的には計算できないだろう。

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