Unity 6世代のロードマップ詳細と、最近リリースされた Unity 6.3 LTS およびそれ以降の技術仕様について、2025年12月の最新情報をもとにまとめてみました。
特にURP(Universal Render Pipeline)における RenderGraphへの完全移行スケジュール は、既存プロジェクトの運用に大きく関わるため注意が必要です。
※本記事についての、リリース時期や仕様は変更される可能性があります。
📅 Unity 6世代のリリーススケジュール
Unity 6世代は長期的な運用が見込まれており、以下のスケジュールでLTS(Long Term Support)が登場する予定です。
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Unity 6.0 LTS
- 現行のLTS。Nintendo Switch 2 への対応が含まれます。
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Unity 6.3 LTS
- 最新LTS。2025年12月にリリースされました。
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Unity 6.7 LTS
- 2026年末にリリース予定。Microsoft開発の高速ランタイム CoreCLR の実験的導入。
- 動的グローバルイルミネーション (Dynamic GI) のサポートが予定されており、ライティング環境の完全なリアルタイム化に向けた進化が期待されます。
🎨 Unity 6.3 / URPのグラフィックス新機能
Unity 6.3 LTSにて実装、または強化される主なグラフィックス機能です。
1. Deferred+ (Deferred Plus)
URPにおける新しいレンダリングパスです。
- Opaque(不透明): G-Bufferを使用するDeferredライティングで処理。
- Transparent(半透明): Forward+と同様に処理。
ライトをスクリーンスペースで効率的に振り分けつつ、半透明オブジェクトも適切に描画できるハイブリッドなモードです。
2. VRS (Variable Rate Shading)
頂点シェーダーの計算は維持したまま、暗部など目立たない箇所のフラグメントシェーダーの解像度を下げることで、画質への影響を抑えつつ描画負荷を軽減する技術です。
5〜8%程度のフレームレート改善が見込めますが、比較的新しいデバイスが必要なうえ専用のRenderPass構築が必要となるため、実装難易度は高めと言えます。
3. Renderer Shader User Value
Rendererに対して、スクリプトからカスタムの32bit uint値を設定し、シェーダーからアクセスできる機能です。
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メリット: 従来、個別の値を渡すために
MaterialPropertyBlockを使用するとSRP Batcherが外れてしまう制約がありましたが、この機能を使うことで SRP Batcherを維持したまま固有の値を渡せる ようになります。
4. Dynamic Branch (Unity 6.2〜)
URP標準シェーダーの一部のキーワードを Dynamic Branch(動的分岐) に対応させる設定です。
シェーダーバリアント数の爆発を抑えつつ、柔軟な分岐処理が可能になります。
5. 2Dグラフィックスの強化
- SpriteRendererのSRP Batcher対応: Sprite用シェーダーの対応が必要ですが、2D描画においてもSRP Batcherによる高速化の恩恵が受けられるようになります。
- 2D Renderer: LayerMask機能の追加。
- Render 3D as 2D: 3Dオブジェクトを2Dレンダラー内で扱い、Spriteと同様のソーティング順で描画する機能。
🛠️ エディタ・エンジンの機能更新
パッケージ署名 (Package Signing)
Unity 6.3 LTSより、パッケージマネージャーに署名機能が導入されます。Unity公式によって署名されたパッケージには緑色のインジケーターが表示され、パッケージが改ざんされていないことを視覚的に確認できるようになります。
ネットワーク・プロファイリング
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HTTP/2 & gRPC: パフォーマンス向上が行われます。
- 具体的には、リクエストの多重化(Multiplexing)により、大量の小さなパケットやアセットを同時通信する際の詰まりが解消され、ロード時間が短縮されます。
- Profiler Overview: 新しいプロファイラ概要ビューが導入され、パフォーマンス状況の確認が容易になります。
開発支援機能(6.3以降の展望含む)
- Graph Templates (6.3): Shader Graphにおいて、Lit、Sprite、Post-processingなどのテンプレートからグラフを新規作成可能になります。
- AI Agent (6.4): プロジェクト内を調査したり、チャット指示でアセットを生成したりするAI機能が統合される予定です。
- ECSのコアパッケージ化 (6.4): GameObjectにECSコンポーネントを直接追加して処理できるようになるなど、統合が進みます。
⚠️ グラフィックス:RenderGraphへの完全移行(URP)
URPにおいては、新しいレンダリングシステムである RenderGraph への移行が必須となります。
従来の描画システムとの互換性を保つ「Compatible Mode(互換モード)」は、以下の段階を経て廃止されます。
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Unity 6.3: エディタの設定UIから「Compatible Mode」のチェックボックスが削除されます(※
#ifディレクティブ等によるコードレベルでの有効化は一時的に可能)。 - Unity 6.4: Compatible Mode自体が完全に廃止されます。
開発者への影響
ScriptableRenderPassなどを利用して描画拡張を行っているプロジェクトは、Unity 6世代のアップデートに伴い、RenderGraph APIを使用した実装へ書き換える必要があります。RenderGraphへ移行することで、メモリ消費の削減やリソースリークの防止といった恩恵が得られます。
まとめ
Unity 6.3 LTSは、様々な機能実装、RenderGraphへの完全移行推奨、SRP Batcher周りの仕様改善など、プロジェクトの技術設計に関わる重要な変更が含まれています。
特にカスタムURPを使用している場合や、長期間運用するタイトルにおいては、互換モード廃止のタイミング(Unity 6.4)を見据えて、早めにRenderGraphへの対応計画を立てておくのが良さそうです。