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【初心者向け】データ分析コンペの「楽しみ方」

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はじめに

こんにちは!パナソニックコネクト株式会社で生成AIやデータを用いた業務改善に取り組んでいる髙井です。

突然ですが「データ分析コンペ」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
「凄腕のエンジニアたちがしのぎを削る場所」「初心者にはハードルが高すぎる」……そんな風に思って、参加ボタンを押すのをためらっていませんか?

私も最初はそうでした。しかし、実際に参加してみると、そこは「実務とは違う新しい知識が手に入る、純粋に楽しい場所」でした。
よく「Kaggleは沼」と言われますが、一度足を踏み入れると、その奥深さと面白さにどっぷりとハマってしまうのです。

この記事では、Kaggle、SIGNATE、そして社内コンペに参加してきた経験から、初心者がコンペを楽しむためのマインドセットや、ちょっとしたコツについてお伝えします。

なお、私はKaggle Expert止まりで、決して毎回上位に入るような強豪ではありません。それでもコンペは十分に楽しいですし、学びも多いです。そんな「普通のエンジニア」の視点から、初心者の方に近い目線でお話しできればと思います。

1. 各プラットフォームの魅力と使い分け

コンペといっても、場所によって雰囲気は全然違います。それぞれの良さがあります。

Kaggle:世界の知見を吸収する

世界最大級のプラットフォームです。英語への抵抗があるかもしれませんが、Kaggleの最大の魅力は「他の参加者のコード(Notebook)が見られること」です。
「Code」タブを見れば、強い人がどんな処理をしているのか、どんなモデルを使っているのかがわかります。これを読むだけでも非常に勉強になります。

SIGNATE:日本語で安心、とっつきやすい

日本のプラットフォームなので、当然すべて日本語です。
「英語のルールを読むだけで疲れてしまう……」という方は、まずSIGNATEから始めてみるのがおすすめです。国内のコンペならではの親しみやすさがあります。

社内コンペ:身近なライバルと競う楽しさ

もし会社で開催されているなら、ぜひ参加してみてください。
当社の場合は開催時期は限られますが、普段仕事をしている同僚や先輩と競い合うのは、案外機会がないもので、とても楽しいです。

2. 初心者がまず意識すべき「鉄則」

コンペが始まったら、何から手をつければいいのでしょうか? 私が大切にしているステップは以下の通りです。

  1. ルールの確認: 何を予測するのか、評価指標は何かをしっかり把握します。ルールを深く理解することで、公開されているコードの改善点や、より適したアプローチに気づくこともあります。
  2. ベースラインの作成: まずは凝ったことをせず、一通り動く予測モデルを作って提出(Submit)してみます。これがスタートラインです。
  3. 軽いデータ探索 (EDA): データの中身をざっと見て、傾向を掴みます。もしかすると上級者との違いはここを重視する必要があるのかもしれません。
  4. 特徴量作成に時間をかける: 個人的にはここに力を入れることが多いです。モデルのパラメータをいじるよりも、データからどんな特徴(説明変数)を作るかの方がスコアに直結することが多いように感じます。

3. 実践:テーブルデータコンペを楽しむためのコツ

私が主に参加しているテーブルデータ形式のコンペでは、以下のようなフローで進めることが多いです。

基本のサイクル:LightGBM × OOFスコア

  1. ベースライン作成: まずはLightGBMなどで学習・推論のパイプラインを作ります。
  2. 特徴量の追加・削除: 仮説に基づいて特徴量を作ります。
  3. 検証 (Validation): Cross Validation (CV) を行い、手元のデータでの予測値 (OOF: Out-Of-Fold) と正解とのスコアを確認します。
  4. Public LBとの乖離確認: 手元のスコアが良くなれば、提出スコアも良くなるかを確認します。

このサイクルを高速に回すことが重要です。

スコアアップの鍵:特徴量と検証戦略

サイクルを回す中で、具体的にどのような工夫をするかが腕の見せ所です。特に以下の3点は必ず検討します。

  1. 日付データの活用:
    時系列要素がある場合、単に日時として扱うだけでなく、「曜日」「月」「四半期」「祝日フラグ」などに分解します。
    特に祝日は、データがどこの国のものか(日本なのか、アメリカなのか、あるいは特定の州なのか)を特定して適用することが重要です。国によって休みの傾向が全く異なるため、ここを間違えると逆効果になります。

  2. 集約特徴量 (Aggregation):
    groupby を使って、「ユーザーごとの平均購入額」や「カテゴリごとの最大値」といった統計量を作成します。個別のデータ行だけでは見えない、全体の中での立ち位置をモデルに教える強力な手法です。

  3. 適切なFold戦略:
    検証データの選び方(切り方)は、スコアの信頼性を左右します。

    • ランダムに切る KFold
    • 時系列の順序を守る TimeSeriesSplit
    • 特定のグループ(ユーザーIDなど)が学習と検証に混ざらないようにする GroupKFold

    タスクの性質に合わせてこれらを使い分けないと、「手元では高スコアなのに提出するとボロボロ」という悲劇が起きます。

今どきのコーディング:生成AI (Vibe Coding) の活用

最近では、ゼロからコードを書く必要もなくなってきました。
「LightGBMで5-FoldのCVを行うコードを書いて」「日付カラムから特徴量を作って」とAIに指示すれば、ベースラインは一瞬で完成します。

いわゆる Vibe Coding(AIと対話しながら、直感的にコードを組み上げていくスタイル)が可能になったことで、実装力よりも「どんな特徴量が効きそうか?」というアイデア力ドメイン知識がより重要になってきていると感じます。

ご参考までに、私がよく使うLightGBMの学習ループのイメージです(AIに書いてもらいました)。
※ここでは一般的な KFold を使用していますが、時系列データの場合は TimeSeriesSplit などに変更してください。

import lightgbm as lgb
from sklearn.model_selection import KFold
from sklearn.metrics import mean_squared_error
import numpy as np
import pandas as pd

# ... データ読み込み (train, test) ...

# 特徴量とターゲット
features = ['feature1', 'feature2', ...] # 使用するカラム
target = 'target'

kf = KFold(n_splits=5, shuffle=True, random_state=42)
oof_preds = np.zeros(len(train))
models = []

for fold, (train_index, valid_index) in enumerate(kf.split(train)):
    X_train, X_valid = train[features].iloc[train_index], train[features].iloc[valid_index]
    y_train, y_valid = train[target].iloc[train_index], train[target].iloc[valid_index]
    
    # LightGBMのデータセット作成
    lgb_train = lgb.Dataset(X_train, y_train)
    lgb_valid = lgb.Dataset(X_valid, y_valid, reference=lgb_train)
    
    # パラメータ(例)
    params = {
        'objective': 'regression',
        'metric': 'rmse',
        'boosting_type': 'gbdt',
    }
    
    # 学習
    model = lgb.train(
        params,
        lgb_train,
        valid_sets=[lgb_train, lgb_valid],
        num_boost_round=1000,
        callbacks=[
            lgb.early_stopping(stopping_rounds=50),
            lgb.log_evaluation(100)
        ]
    )
    
    # 推論 (OOF)
    oof_preds[valid_index] = model.predict(X_valid, num_iteration=model.best_iteration)
    models.append(model)

# スコア確認
score = np.sqrt(mean_squared_error(train[target], oof_preds))
print(f'CV Score (RMSE): {score:.4f}')

このように、実装のハードルは下がっています。「コードが書けないから」と諦めるのはもったいない時代です!

4. コンペに参加して変わったこと(実務との違い)

コンペに参加し続けて、「AIの予測モデルを作って」と言われても、特に尻込みしなくなりました。 手を動かすことへのハードルが下がったのは大きな収穫です。

一方で、実務との違いも痛感します。
正直なところ、実務で「AIモデルをガリガリ学習させる」機会は、実はほとんどありませんでした。
多くの場合、集計や可視化で事足りたり、あるいはデータ整備のフェーズで止まっていたりします。

コンペではデータが用意されていますが、実務では「ビジネス課題を理解し、データを集め、前処理をする」という泥臭い工程が必要です。
コンペのデータがいかに「お膳立てされて学習できる状態になっている」か。それに気づくと、いつも課題設定をしてくれている人や、データ基盤を作ってくれている人への尊敬の念が湧いてきます。

5. スコアが伸び悩んだ時

頑張っても順位が上がらない……そんな時はどうすればいいでしょうか。

  • 方法を一度捨てる: 「これならいけるはず」と思った手法に固執して、順位が上がらなかったことが何度もあります。勇気を持ってアプローチをガラッと変えるのも一つの手です。
  • 諦めて寝る: コンペ期間中はつい寝不足になりがちです。正直なところ、私も「あと少しでスコアが上がるかも」と割り切れずに続けてしまうことがよくあります。しかし、睡眠不足の頭で粘っても良いアイデアは浮かばず、結局時間を無駄にしてしまった……という失敗も数え切れません。「今日はもう寝る!」と諦める勇気も、実は重要なスキルの一つです。

おわりに

データ分析コンペは、実務のスキルアップに役立つだけでなく、ゲームのように楽しんで取り組めるものです。
「自分にはまだ早いかも」と思っている方も、まずは一度、気軽に参加してみてください。きっと新しい世界が見えてくるはずです。


注意事項

本ブログに掲載している内容は、私個人の見解であり、所属する組織の立場や戦略、意見を代表するものではありません。あくまでエンジニアとしての経験や考えを発信していますので、ご了承ください。

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