VBA歴10年の私がC#化を選んだ理由。言語と環境が支える快適な設計
はじめに
VBAは、業務改善の現場で即効性と親しみやすさを発揮する優れた言語です。私自身、10年間にわたり、ExcelやAccessを中心に業務自動化を支えてきました。
しかし、保守性・構造化・外部連携・開発体験の観点で、言語仕様と開発環境に限界を感じ、現在はC#による再構築とテンプレート化を進めています。
1. VBAの限界は「人」ではなく「言語」にある
VBAは、書き手の力量に関係なく、構造化と保守性に向かない言語仕様を持っています。
- 名前空間やクラスの分離が弱く、ロジックが混在しやすい
- 依存関係の明示ができず、保守時に追跡が困難
- ユニットテストや再利用を前提とした設計が困難
C#では、これらが言語レベルで支援されているため、自然と保守性の高い構造が生まれます。
設計が「人の努力」ではなく「言語の支援」で成り立つ。
これがC#化の本質です。
2. Visual StudioとVBE。快適さが思考の質を変える
VBE(Visual Basic Editor)は軽量で即効性に優れていますが、設計者の思考を支援する環境ではありません。
Visual Studioは、使っていて「気持ちいい」「迷わない」「進む感覚がある」。
この快適さが、設計の質を根本から変えます。
| 操作 | VBE | Visual Studio |
|---|---|---|
| コード補完 | 出ないことも多い | インテリセンスで即座に候補表示 |
| エラー検出 | 実行時に気づく | 書いてる途中で警告・修正提案 |
| リファクタリング | 手動で探して書き直す | 一括変更・抽出・依存関係の整理 |
| UI設計 | フォームとコードが密結合 | WPFやBlazorで分離・再利用可能 |
| デバッグ | ステップ実行のみ | 条件付きブレーク・例外トラップ・非同期対応 |
IDEが設計者の思考を支援してくれる。
この体験が、C#化を続ける大きなモチベーションになっています。
3. ExcelやAccessの“外”から動かせるという自由
VBAは、ExcelやAccessの「中」で動くことを前提とした言語です。これは即効性に優れる反面、アプリケーションの外から制御する自由がほとんどありません。
C#では、これらの制約が一切ありません。ExcelやAccessを“外から”動かすことができるのです。
- ClosedXML や EPPlus によるExcelファイルの直接操作
- OleDb や Entity Framework によるAccessデータベースへの外部アクセス
- Windowsサービスやバッチ処理として、業務ロジックを独立運用
- UIやAPI連携を通じて、業務をアプリケーションの外に展開可能
VBAでは「その場限り」だった処理が、C#では「資産」として残せる。
この違いは非常に大きいです。
4. Pythonが流行っているけれど……。個人的にはC#のほうが“しっくりくる
最近は「とりあえずPython」という風潮があります。
確かに、AIやデータ分析の文脈ではPythonが強い。ですが、業務改善・UI設計・テンプレート化という観点では、個人的にはC#のほうが圧倒的に“しっくりくる”と感じています。
- 静的型による安心感と設計支援
- Visual Studioによる快適な開発体験
- WPFやBlazorによるUI設計の自由度
- ExcelやAccessとの親和性の高さ
Pythonは「書き始めやすい言語」。
C#は「続けやすい言語」。
業務改善を“資産化”するなら、C#のほうが自然に設計できる.。
それが私の実感です。
おわりに
VBAの経験は、設計力としてC#に活かせます。
言語と環境が支援してくれる構造化の世界に移ることで、業務改善は「属人化」から「資産化」へと進化します。