はじめに
API開発において、テストケースの作成は品質保証に欠かせない工程ですが、手動での作成には多大な時間と労力がかかります。そこで本記事では、インターン生の私が、OpenAPI仕様書を活用してテストケースを自動生成できる「Apidog」について、その機能や使い方を詳しく解説します。
Apidogとは
Apidogは、API開発におけるライフサイクル全体をサポートする統合開発プラットフォームです。API設計、モック作成、ドキュメント生成、自動テストなど、多様な機能を一つのツールで提供します。
一般的な機能
- API設計とドキュメント管理: OpenAPI/Swagger仕様に準拠したAPI設計が可能
- APIテスト実行: RESTful APIやGraphQL APIのテストをGUIベースで簡単に実行
- モックサーバー: 実際のバックエンドがなくてもAPIの動作を検証可能
- チーム連携: プロジェクトの共有や共同編集に対応
本記事で注目する機能: OpenAPI仕様書を用いたテストケース自動生成
本記事では、特にApidogのLLM(大規模言語モデル)を活用したテストケース自動生成機能に焦点を当てます。OpenAPI仕様書をインポートすることで、正常系・異常系・境界値などのテストケースをAIが自動的に生成し、テスト工数を大幅に削減できます。
Apidogを使用するメリット
- テストケース作成の効率化: OpenAPI仕様書から自動的に多様なテストケースを生成
- 網羅的なテスト: 正常系だけでなく、異常系や境界値テストも自動生成
- AI機能の活用: LLM(OpenAI、Anthropic、Google AI Studioなど)を利用した柔軟なテストケース生成
- 統合開発環境: 設計からテスト実行まで一つのツールで完結
- チームでの共有が容易: プロジェクト単位での管理と共有機能
Apidogを使用するデメリット
- LLM API keyが必要: テストケース自動生成機能を使うには、外部LLMのAPIキーを設定する必要がある
- 生成ケース数の不確実性: 「約10件」などの指定をしても、実際には8〜12件など幅がある
- 日本語対応の制限: 一部機能やドキュメントは英語のみの場合がある
- 学習コスト: 多機能であるため、初めて使う場合は慣れるまで時間がかかる可能性がある
料金プラン
Apidogは用途や規模に応じて4つのプランを提供しています。
Free(無料プラン)
料金: ¥0 / ユーザー / 月
対象: API連携とテストを始める個人・小規模チーム(最大4ユーザー)
主な機能:
- コア機能全般(4ユーザーまで利用可能)
- フルAPIクライアント対応
- Mock/テスト基本機能一式
- 無制限テスト(コレクション)実行
- ドキュメント基本機能(閲覧数無制限)
- リアルタイム共同編集
- プロジェクト毎スプリントプランチ本1本/バージョン1種
- SQLデータベース操作
- 3時間間隔の定期インポート
Basic
料金: ¥1,350 / ユーザー / 月
対象: 高度な共同作業とチーム管理が必要なスタートアップ/小規模チーム
主な機能:
Freeプランの全機能に加えて:
- チームメンバー無制限(従量制課金)
- 90日間API変更履歴保持
- スプリントブランチ5本
- プロジェクト毎バージョン5種
- NoSQLデータベース操作(ClickHouse/MongoDB/Redis)
- 30分間隔の定期インポート
- 最大20チームプロジェクト
- チームアクティビティフィード
14日間の無料トライアル利用可能
Professional
料金: ¥2,700 / ユーザー / 月
対象: 高度な共同作業・詳細管理・優先サポートが必要な成長企業
主な機能:
Basicプランの全機能に加えて:
- APIコメントに制限なし
- スプリントブランチ/バージョン無制限
- ドキュメントIPホワイトリスト
- 180日間API変更履歴保持
- チーム共有変数管理
- 10分間隔の定期インポート
- セルフホスト型プロキシ経由API呼び出し
- ランナー経由定期インポート
- 優先メール対応&トレーニングセッション
14日間の無料トライアル利用可能
Enterprise
料金: ¥4,050 / ユーザー / 月
対象: 企業向けセキュリティ・カスタマイズ・プレミアムサポートが必要な大規模組織
主な機能:
Professionalプランの全機能に加えて:
- 365日間API変更/テスト変更履歴保持
- 複数ドキュメントサイト/サブサイト公開
- APIケース/シナリオカバレッジ統計
- プロジェクトロール権限カスタマイズ
- Vault secrets
- SSO対応(SAML)
- 専用Slack/Teamsチャンネル
- 24時間365日優先サポート
- 高度セキュリティ審査
- カスタム利用規約
14日間の無料トライアル利用可能
個人やスモールチームであればFreeプランでも十分な機能を利用できます。一方、企業での本格的な利用を検討する場合は、チーム規模や必要な機能に応じてBasic以上のプランを選択することをおすすめします。
事前準備: LLMのAPI key設定
ApidogでAIによるテストケース自動生成を利用するには、事前にLLMのAPI keyを設定しておく必要があります。以下の手順で設定を行います。
1. チーム設定画面を開く
画面中央上部のメニューから「チーム設定」を選択します。
2. AI機能の設定
「AI機能」の項目にある「プロバイダーを追加」ボタンを押下します。
3. プロバイダーを選択
利用可能なLLMプロバイダーの一覧が表示されます。以下のプロバイダーから選択できます。
- OpenAI
- Anthropic
- Google AI Studio
- Google Vertex
- OpenRouter
- カスタムAPI設定(OpenAI API仕様に準拠したすべてのモデルプロバイダーをサポート)
4. API keyを入力して保存
選択したプロバイダーのAPI keyを入力し、「保存」ボタンを押下します。(今回はGoogle AI Studioを選択しています。)
保存が完了すると、以下のように設定済みプロバイダーとして表示されます。モデル一覧から使用するモデルを選択することも可能です(例: Gemini 2.5 Pro、Gemini 2.5 Flashなど)。
テストケース自動生成までの手順
ここからは、実際にOpenAPI仕様書をインポートし、テストケースを自動生成する手順を解説します。
1. 新規プロジェクトの作成
Apidogを初めて使用する場合、以下の画面から開始されます。「空のプロジェクトを作成」または「新規プロジェクト」ボタンを押下します。
2. プロジェクト名を入力
プロジェクト名を入力して「作成」ボタンを押下します。
3. インポート機能を開く
OpenAPI仕様書を読み込んでテストケースを自動生成するため、「その他の機能」ボタンを押下します。
4. インポートを選択
ドロップダウンメニューから「インポート」を選択します。
5. OpenAPI/Swaggerを選択
データインポート画面で「OpenAPI/Swagger」を選択します。
6. 仕様書ファイルをアップロード
「ファイルをアップロードする」タブを選択し、OpenAPI仕様書(JSON形式またはYAML形式)をアップロードします。
対応フォーマット: OpenAPI 3.0/3.1、Swagger 2.0
7. インポート設定を確認
確認画面の右側で以下の設定を行い、「確認」ボタンを押下します。
- インポート先: 既存モジュールまたは新規モジュール
- 各種APIにAPIデータを自動追加: 有効/無効
- Security Schemeのインポート: 対応するSecurity Schemeを選択するか、無視する
- API/Summaryフィールド: 使用するか、operationIdを使用するか
8. インポート完了
インポートに成功すると、以下のような画面が表示されます。
「APIを表示」ボタンを押下すると、インポートされたAPIの一覧を確認できます。
テストケースの自動生成
OpenAPI仕様書のインポートが完了したら、実際にテストケースを自動生成してみましょう。
9. APIを選択
画面左側のAPIタブから、テストケースを生成したいAPIを選択します。今回は例として「account」配下のAPIを選択します。
10. 任意のAPIエンドポイントを選択
ディレクトリ内から、テストケースを生成したいAPIエンドポイント(例: PUT Agree Terms)を選択します。
11. テストケースタブを開く
画面上部のタブから「テストケース」を選択し、「AIで生成」ボタンを押下します。
注意: 自身で手動でテストケースを設定したい場合は「ケース追加」ボタンから作成可能です。
重要: 事前準備でLLMのAPI key設定を行っていない場合、この機能は使用できません。
12. テストケースカテゴリを選択
「AI生成テストケース」ダイアログが表示されるので、実施したいテストケースのカテゴリを選択します。
選択可能なテストケースカテゴリ
正常系
- 必須フィールドのみ
- セマンティック有効
- 列挙型組み合わせカバレッジ
- その他正常系
異常系
- 無効値
- 必須フィールド不足
- フォーマットエラー
- 型エラー
- セマンティックエラー
- その他異常系
境界値
- 最大値/最小値
- 最大/最小境界値超過
- Null/ゼロ/空値
- 文字列長すぎ/短すぎ
セキュリティ
- 認証制御
- SQLインジェクション
- あいまい入力
- XSSインジェクション
- コマンドインジェクション
- JSONインジェクション
- NoSQLインジェクション
認証情報の設定
必要に応じて、認証情報(例: Authorization Token)を入力します。デフォルトでは{{bearerToken}}のような変数形式が設定されています。
生成ケース数の設定
画面左下の「生成ケース数」では、以下のオプションから選択できます。
- 自動
- 約10件
- 約20件
- 約40件
- 約80件
注意: 正確に指定した数が生成されるわけではありません。例えば「約10件」を選択しても、実際には8〜12件程度になる場合があります。
設定が完了したら「生成」ボタンを押下します。数秒で「保留中」タブにテストケースが自動生成されます。
13. テストケースの採用
生成されたテストケースが「保留」タブに表示されます。この中から今後実行したいテストケースを選択し、「採用」ボタンを押下します。
採用すると、「採用済み」タブに移動します。
テストの実行
テストケースを採用したら、実際にテストを実行してみましょう。
14. 環境を選択
画面右上の「環境を選択」ボタンから、テストを実行する際の環境を設定します。
今回は例として「ローカル環境」を選択します。
15. すべて実行
「すべて実行」ボタンを押下すると、採用済みのテストケースが順次実行されます。
実行が完了すると、以下のようにリクエストに対して返ってきたステータスコードと結果(合格/不合格)が表示されます。
所感:テストケース自動生成がもたらす開発効率の革新
従来のAPI開発では、テスト項目書を綿密に検討し、その上で開発者自身がテストコードを一から作成する必要がありました。この作業は非常に時間がかかるだけでなく、人的ミスによるテストケースの漏れが発生するリスクも常に伴っていました。
Apidogのテストケース自動生成機能は、こうした課題を根本的に解決します。OpenAPI仕様書をインポートするだけで、正常系・異常系・境界値・セキュリティテストといった多様なテストケースが網羅的に生成されるため、テスト設計の工数削減と品質の均質化を同時に実現できます。
特に印象的だったのは、LLMを活用したテストケース生成の柔軟性です。従来の静的なテンプレートベースの自動生成とは異なり、API仕様の文脈を理解した上で適切なテストケースを提案してくれるため、実用性が非常に高いと感じました。
今後、API開発においてこのような次世代ツールは標準的な存在になっていくと予想されます。開発チームの生産性向上とソフトウェア品質の向上を両立させるために、Apidogのような先進的なツールへの理解を深め、実践的に活用できるスキルを磨いていくことが重要だと考えます。
まとめ
本記事では、ApidogのLLMを活用したテストケース自動生成機能について、事前準備から実行までの一連の流れを解説しました。
Apidogを使うことで実現できること
- OpenAPI仕様書から正常系・異常系・境界値・セキュリティテストケースを自動生成
- テストケース作成工数の大幅な削減
- 網羅的なテストによる品質向上
今後の展望
Apidogは継続的にアップデートされており、AIによるテスト生成精度の向上や、より多様なLLMプロバイダーへの対応が期待されます。API開発の効率化を図りたい方は、ぜひ一度試してみてください。




















