プロジェクトの成功は、ビジネスや私生活において重要なテーマです。

しかし、多くのプロジェクトは計画通りに進まず、途中で挫折したり、望んだ結果が得られずに終わったりすることが少なくありません。

本記事では、添付画像の内容を基に、プロジェクトとは何か、その種類、そしてプロジェクトの成否を分ける 「コミュニケーションロス」 という根深い問題に焦点を当て、失敗を避けるための考え方を探ります。

1. そもそもプロジェクトとは何か？

多くの人が「プロジェクト」という言葉を日常的に使いますが、その定義は意外と曖昧です。本書では、プロジェクトを以下のように定義しています。

未実施（＝既成）に変える行為

ノウハウや知識の不足

有限なお金と時間

一言で言えば、プロジェクトとは「未実施の領域」と「既成の領域」をつなぐ活動であり、未知の領域への挑戦を伴うものです。
したがって、計画通りにいかないこと、予期せぬトラブルが発生することは、プロジェクトの本質的な要素と言えます。

プロジェクトの目的は、この「未知」と「既成」のギャップを埋めることにあります。
例えば、「新事業を立ち上げる」「オリジナル商品を作り続ける」といった定常的な業務ではないものがプロジェクトにあたります。

2. プロジェクトの「種類」を理解する

プロジェクトの性質は、関わる人が抱える「未知」の度合いによって分類できます。

特に、以下のような二つの軸で考えることができます。

	説明	例
技術的な未知	達成するためのノウハウや知識が不足している度合い	新規開発、前人未踏の技術への挑戦
社会的な未知	関わる人々の合意や納得が取れていない度合い	組織改革、個人の目標設定（マイホーム購入など）

これらを組み合わせると、プロジェクトは主に4つの領域に分類されます。

領域	技術的な未知	社会的な未知	特徴と例
ルーティンの世界	低	低	日常業務。プロジェクトとは呼ばない。
社会的に既知	低	高	合意形成が主な課題。企画、会議、契約交渉など。
技術的に既知	高	低	実現可能性が主な課題。業務改善、既存技術の応用など。
人知を超えた未知	高	高	最も困難なプロジェクト。新しいビジネスモデルの創造、マイホーム購入など（自

プロジェクトの難しさは、この2つの「未知」の度合いによって決まります。特に「人知を超えた未知」（ハイリスク）に位置するプロジェクトほど、計画通りに進まないことを前提 とした柔軟な対応と、こまめな調整が求められます。

3. 想定外は当たり前：計画とトラブルへの向き合い方

プロジェクトは未知の領域を含むため、想定外のトラブルや計画変更はつきもの です。

これは、戦略論の大家クラウゼヴィッツが提唱した「 摩擦の論理 」にも通じます。計画は直線的に進むのではなく、個々の小さな障害やズレ（摩擦）が積み重なって、目的地への到着を遅らせたり、経路を逸脱させたりします。

したがって、プロジェクトマネージャーは「計画を完璧に立てて、それに固執する」のではなく、以下の2点に重点を置く必要があります。

計画と実績のズレを認識し、日々軌道修正の準備をしておくこと。
想定外を「織り込む」計画を立て、トラブルを恐れずに楽しむ姿勢を持つこと。

計画は「絶対に変えてはいけないもの」ではなく、「現時点での最善のルートを示す地図 」であり、状況が変わればアップデートすべきものです。

4. 失敗の根源：「リンゴが欲しい」を巡るコミュニケーションロス

プロジェクトの失敗の多くの原因は、計画や技術的な問題だけでなく、「コミュニケーションロス」にあります。

🍎「リンゴ問題」の構図の話

プロジェクトでは、依頼者（顧客）と実施者（ベンダー）の間で、以下のような意識のズレが生じることがよくあります。

項目・・・依頼者（リンゴを欲しがっている人）の思考実施者（リンゴを買いに行く人）の思考
目的・・・「美味しいリンゴ」が欲しい「リンゴ」を買ってくる|
認識・・・品種、色、甘さなど、具体的なイメージがある「赤いリンゴ」や「青いリンゴ」で満足すると思っている
結果・・・期待通りでなければ「こんなリンゴは欲しくない」「頼まれた通り」買ってきたのに「なぜ文句を言われる」

これは、「システム開発」や「業務アプリ開発」でよくある構図です。

依頼者は 「システムに欲しい機能」 について、頭の中で具体的なイメージを持っています。
実施者は、そのイメージを十分に引き出さず、「依頼者が口にした言葉」通りに機能を作成します。
結果、納品されたシステムは「イメージしていたもの」と異なり、失敗に終わります。

🔍 コミュニケーションロスを防ぐには？

この失敗を避けるには、「リンゴが欲しい」というシンプルな言葉の裏にある、相手の真の「要望・要求」 を深く掘り下げる必要があります。

プロジェクトにおけるコミュニケーションの本質は、

相手の「真の望み」を正確に汲み取る
その「望み」が実現可能かを判断し、合意する

ことです。依頼された側は、ただ言われた通りの「赤いリンゴ」を買ってくるのではなく、「なぜリンゴが欲しいのか？」「どんな時に食べるのか？」「予算はいくらか？」といった、背景にある文脈を丁寧に質問し、相互理解を深めなければなりません。

この相互理解を確立するためのプロセスこそが、プロジェクトにおける「 要件定義 」であり、プロジェクトの成否は、この段階での コミュニケーションの質 に大きく左右されます。

まとめ：プロジェクト成功への第一歩

プロジェクトを成功させるためには、以下の原則を意識することが重要です。

「未知」への挑戦と心得よ：トラブルや計画変更はプロジェクトの本質であると認識する。

計画は「地図」である：計画は常に変動するものとして捉え、柔軟な軌道修正を厭わない。

「なぜ？」を深掘りせよ：依頼者の真の「要望・要求」を徹底的に探り出し、相互理解を深める。

この「リンゴ問題」のように、一見単純に見えるコミュニケーションのズレこそが、大規模なプロジェクトの失敗につながります。