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KDDIテクノロジーAdvent Calendar 2022

Day 1

クロスプラットフォーム対応! MIDI経由のハードウエア制御システムをサっと作る

Last updated at Posted at 2022-11-30

Webからハードを操作する環境を素早くつくりたい!

Webエンジニアです!

普段仕事でプロトタイピングすることも多く、雑にWebからハードを操作するシステムを試作することも多いです。
今回紹介するのは、つい先日のお話です。

下記のような要件のシステム(プロトタイプ)を作りました。

  • 操作用のPCやスマホから別の場所にあるPCとそのPCに接続されたハードを制御する
  • ハードが接続されたPCはWindows PCの上で動作させる想定だがOSはLinuxにするかもしれない。さらに開発はMacで行いたい
  • PCとハードの接続にはUSBケーブルを用いる
  • ハードは制御コマンドに基づいて動く。コマンド体系はいくつかのコマンド+ON/OFF程度で単純
  • 数台作れれば良い。さくっと明日までにプロトタイプを1台つくれ。的なスピード感(実際は2-3日猶予がある)

sc1.png

まー、よくある話ですよね。
速度優先のプロトタイピングなので、下記のように作りました。

No. 機能 実装方法
1 操作用PC用アプリ Webアプリケーション。UIを提供。普通にHTML/CSS/JSで書く
2 ハードウエア USB-MIDIで制御コマンドを受信後ハードを制御する
3 HTTP API HTTPリクエストはnode.js+expressで処理する
4 MIDI Client APIが叩かれたらMIDIメッセージに変換してデバイスに送信する

sc2.png

最終的には、4. の実装方法が少し上記図から変わりました。

1. 操作用PC用アプリ

これは普通のWebアプリです。UIを提供してボタン等を押すとAPIを呼び出します。
UIも単純なのでHTML/CSS/JSで普通に書くだけでしたので、説明は割愛。

2. ハードウエア

ハードウエアのIF部分をUSB MIDIに対応させるため、Arduino環境で開発可能なマイコンを利用しました。

ArduinoでUSB MIDIデバイスを作るというのも、豊富なOSSのおかげで簡単です。
主要なマイコンとライブラリの組み合わせを書いておきます。

No. マイコン ライブラリ 参考情報
1 Arduino UNO Moco LUFA 導入方法
2 Arduino micro/Arduino Leonardo MIDIUSB 使い方
3 Raspberry Pi Pico/Seeed XIAO RP2040 Adafruit Tiny USB /examples にMIDIの例がある
4 ESP32 --- USB機能が無いのでUSB-MIDIデバイスには向かない。Bluetooth MIDI Deviceであれば作れる
5 Arduino Pro mini/Arduino Nano --- USB機能が無いのでUSB-MIDIデバイスには向かない

プロジェクトでは、上記2と3を利用しました。

ボード入手できれば(ATmega32u4の開発ボードであれば概ね同じように使えます)、一番簡単なのはたぶん 2. ですが、2022年12月現在 半導体不足や円安の影響でATmegaの価格が高騰しており、互換ボードの入手性もかなり悪くなっています。多少環境にクセはありますが、現時点で入手性の良いRP2040搭載ボードにも保険で対応しておくことにしました。

MIDIメッセージで伝えられたコマンドに基づいて、ハードウエア(例えばサーボモーターなどのアクチュエータ)を制御することになりますが、ここでは詳細は割愛します。

3. HTTP API

最近は FastAPI に押され気味な気もしますが、慣れてるから!という理由で、node.js + express を採用しました。こちらも特に書くことはないので、リンクだけ置いておきます。

4. MIDI Client(node.js から MIDIを呼ぶ方法)

node.js から MIDI を扱うライブラリはいくつかありますが、今回実は採用しませんでした。
その理由を共有するのが本記事の目的です。

早くいろいろ治れば嬉しいな!

4-1. node-midi

node.js の npm モジュールで一番最初に見つけたのがコレです。
RtMidiというクロスプラットフォームMIDI実装のnode.jsラッパーです。

OSX / Windows / Linux に対応していて素晴らしいのですが、ちょっと依存環境が多くインストールになかなかに苦労します。

https://www.npmjs.com/package/midi
にさらりと記載されている依存関係は下記の通りです。(そのまま引用)

OSX
- Some version of Xcode (or Command Line Tools)
- Python (for node-gyp)

Windows
- Microsoft Visual C++ (the Express edition works fine)
- Python (for node-gyp)

Linux
- A C++ compiler
- You must have installed and configured ALSA. Without it this module will NOT build.
- Install the libasound2-dev package.
- Python (for node-gyp)

開発環境だけに入れれば良いわけではなく、実行環境でもこれらの環境を作る必要があります。
npm i midi 一発で環境構築できないのは辛いので、Windows環境でのインストールに手こずった段階で、今回は見送りました。
(これ普通にLinuxでも苦労するだろ。やってないけど。というのもあり。)

ようするに、各プラットフォーム用のビルド環境が必要なので Winodwsの場合は npm install --global --production windows-build-tools でビルドツールを事前に入れておけばOKのようです。

4-2. webmidi

まさかの node-midi 不採用でもう一度 npm を探して次に見つけたのがこちら webmidi
です。

各種ブラウザとnode.jsもマルチプラットフォームに対応しています。

- GNU/Linux
- macOS
- Windows
- Raspberry Pi

ブラウザの対応状況からブラウザ版はWeb MIDI APIのラッパーかな?と予想しますが、node.js 版は下記記載の通り、JZZに依存しているようです。

Support for the Node.js environment has been made possible in large part by the good folks of Jazz-Soft via their JZZ module.

JZZがどうやら Web MIDI API の node.js 版 Polyfillのようです。なるほど。そっち使ってもいいな。

で、これを使おうとしたんですが、なぜか動かない!(Macbook Air 2021 M1 Ver.で開発しています)
JZZの方も動かない!

いろいろ調べたら原因はコレ。

var path='./bin/';
var v=process.versions.node.split('.');
if (v[0]<=10) path+='10_15/';
else if (v[0]<=11) path+='11_15/';
if(process.platform=="win32"&&process.arch=="ia32") path+='win32/jazz';
else if(process.platform=="win32"&&process.arch=="x64") path+='win64/jazz';
else if(process.platform=="darwin"&&process.arch=="x64") path+='macos64/jazz'; // <- ? arm版がない!
else if(process.platform=="linux"&&process.arch=="x64") path+='linux64/jazz';
else if(process.platform=="linux"&&process.arch=="arm") path+='linuxa7/jazz';
module.exports=require(path);
module.exports.package=require(__dirname + '/package.json');

JZZやwebmidiが依存してる jazz-midiがまだ Appleシリコンに対応しておらず、Appleシリコン版のバイナリがないようです。残念!

開発者の開発環境で動かないモノは非採用!ということで。

4-3. 最終手段!ブラウザを使う。

今回残念ながら、node-midiwebmidiJZZを見送ることになりました。

大丈夫か? node.js!(少し不安に。。。)

あまりこの手は使いたくなかったのですが、非常に簡単に導入できて、クロスプラットフォームなMIDI環境があります。そう。それはChrome(と共通のコアを使ったブラウザ群)。

下記のように対応しました。

  1. WebSocketメッセージを受信したらWeb MIDI API を使ってMIDIメッセージを送信するWebページを作る。
  2. node.js の API 起動時に WebSocketサーバーも起動しつつ、その後 puppeteer を使い、1. の Webページを表示しておく。
  3. expressでHTTPリクエストが来たら、WebSocketで 1.のページにWebSocketメッセージを送る。

sc3.png

APIの先でWebページに連携という面白アーキテクチャですが、npm i 一発で環境構築できます。最高。

注意点 1. ヘッドレスモードでの Web MIDI API の制限

Web MIDI APIは Chromeのheadlessモードだとそのままだと動作しません。
puppeteer を用いたヘッドレスブラウザ起動時に対策が必要です。

動かないコード

.js
  browser = await puppeteer.launch({headless: true, args: ['--no-sandbox']});
  page = await browser.newPage();
  await page.goto('http://yourdomain/sample/sample.html');

このコードは、navigator.requestMIDIAccess()に失敗するようです。

下記のようにヘッドレスモードでなく普通にブラウザを起動すると動作します。

.js
  browser = await puppeteer.launch({headless: false, args: ['--no-sandbox']});
  page = await browser.newPage();
  await page.goto('http://yourdomain/sample/sample.html');

が、ブラウザが常に起動/表示されているのはかっこ悪いです。

MIDIが動かないのはヘッドレスモードでの動作を意図的に制限していることが原因とわかりました。

ドメインにpermissionをつけてあげれば動くようです。
改良したコードは下記のようになりました。

動くコード

.js
  browser = await puppeteer.launch({headless: true, args: ['--no-sandbox']});
  await browser.defaultBrowserContext().overridePermissions('http://yourdomain', ['midi']); // <-追加
  page = await browser.newPage();
  await page.goto('http://yourdomain/sample/sample.html');
注意点 2. Windowsは 複数のアプリから同時にVirtual MIDIポートがオープンできない

これ、ユースケースによっては結構致命的だと思うんですけど、Windowsの場合そういうもののようです。

例えば、Chromeで Web MIDI API を使うサイトを開いてる状態で、他のブラウザでも Web MIDI API を利用しようとしたら失敗するようです。

RtMidi などブラウザ以外のMIDIポートオープンでも同様の問題が発生するので、OSの仕様? なんでしょうか?

MidiOutWinMM::openPort: error creating Windows MM MIDI output port.

上記のようなエラーメッセージ(上記は RtMidiの例)を見つけたら、他にMIDIポートをつかんでるアプリケーションが無いか?チェックしてみる必要がありそうです。

まとめ

MIDIを使ってWebからハードを操作する環境を作りました。
ただ、今回最初想定した実装とは少し違う結果になりました。

  • MIDIを使えば手軽にUSBを使ったPC→ハードウエア制御が実現できる(ただし簡単なコマンド体系のみ。大容量データの伝送等には向かないので、ユースケース次第)
  • 2022/11/30現在、MIDIのクロスプラットフォーム環境で一番手軽なのはブラウザ(chrome)
  • ブラウザはサーバーのようなヘッドレス環境でも利用可能

おまけ

Web MIDI API を使ったWebアプリを超手抜きで作ってみたい人向けラッパー(ブロードキャストがデフォルト動作という曲者)

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