この記事でわかること
- なぜパワポを捨てて「Quarto + Git」にするのか
- 爆速で環境を作る最短ルート(非エンジニアOK)
- 【実践】スライド・数式・ページ番号を一瞬で出す方法
- メリット・デメリット、正直な本音
[!IMPORTANT]
この記事は Windows 環境のユーザーを対象としています
解説で使用しているフォント設定(MS 明朝)やコマンド、フォルダパスなどは Windows を前提としています。Mac 等をご利用の方は、適宜設定を読み替えていただく必要がある点をご了承ください。
はじめに
パワポが嫌いです。
文字サイズをちまちま揃えたり、図表をきれいに並べようとして数ピクセル単位で格闘したり,挙句の果てに、一つ動かしたら他のパーツが隠れて絶望する……
でも、所属している研究室の都合で、ほぼ毎週10枚くらいのプレゼン資料を作らなきゃいけない状況に。
そこで、Gemini3.0 Pro(思考モード)と相談しながら、 「Markdownを書くだけでスライドもレポートも勝手に出来上がる環境」 を作りました。
これが想像以上に快適で「爆速」だったので、できるだけ簡単に設定方法を紹介します。
※素人なので誤った内容が含まれる可能性があります。ご自身の責任で参考にしていただくことをご了承ください。
なぜ Quarto + Git なのか?
結論から言うと、「書くこと(思考)」と「整えること(作業)」を切り離せるからです。
このシステムは、以下の3つのパーツが「三位一体」で連携することで、パワポでは不可能な爆速資料作成を実現しています。
1. VS Code:執筆の「コックピット」
ただのエディタではありません。すべての作業がここで完結します。
- リアルタイムプレビュー: 保存した瞬間に、右側の画面でスライドやレポートの完成図を確認。
- 統合ターミナル: 環境構築もGit操作も、画面を切り替えずにここ一つでOK。
- 入力補完: 設定ファイルをいちいち覚える必要はありません。
2. Quarto:最強の「変換エンジン」
Markdownで書かれた「内容」を、プロ級の「成果物」に変換する心臓部です。
- Single Source, Multi-Output: 1つのファイル(.qmd)から、発表用のスライドと提出用のレポートを同時に生成。
- 論理と見た目の分離: 箇条書きなどの「論理構造」だけ書けば、あとはQuartoが学術的に正しいレイアウトに勝手に整えてくれます。
3. Git:思考の「タイムマシン」
修正履歴をすべて記録してくれる台帳です。
- ファイル名地獄からの解放: 「スライド_修正_最終2.pptx」のようなコピーはもう不要。
- 実験結果との整合性: どのバージョンのデータを使って、どの資料を作ったのかが常に明確になります。
「VS Codeで文字を書き、保存するとQuartoが即座に資料を作り、その変化をGitが静かに記録する」。これが、今回構築した最強のドキュメント生成パイプラインです。
環境構築:Windowsでの最短ルート
「環境構築」と聞くと難しそうですが、実は3つのソフトをインストールして、最後にコマンドを1つ打つだけです。
STEP 0:Pythonが入っているか確認
グラフ生成機能を使うにはPythonが必要です。ターミナルで python --version と打って反応がなければ、Python公式サイト からインストーラーをダウンロードして入れておきましょう。
(※インストール時の 「Add Python to PATH」 へのチェックをお忘れなく!)
STEP 1:Gitをインストールする
履歴管理の土台となるソフトです。これが入っていないと後でエラーになるので、まずはここからです。
- Git for Windows の公式サイトへ。
- 「Download」をクリックしてインストーラーを実行。
- 設定はすべて「Next」を連打してデフォルトのままでOKです。
STEP 2:Quarto CLI をインストールする
MarkdownをPDFやスライドに変換する「翻訳機」の役割を果たすソフトです。
- Quarto 公式サイト の「Get Started」へ。
- 「Download Quarto CLI」の Windows版をダウンロードしてインストールします。
STEP 3:VS Code と 拡張機能を入れる
資料を作るための専用エディタ(作業場)を整えます。
- VS Code 公式サイト からインストール。
- VS Codeを起動し、左側の「テトリスのブロックみたいなアイコン(拡張機能)」をクリック。
- 検索窓に
Quartoと入力して、公式の拡張機能をインストールします。
STEP 4:日本語PDFとグラフ用の「エンジン」を入れる(仕上げ!)
VS Codeの画面下にあるターミナルに、以下のコマンドを1行ずつ貼り付けて Enter キーを押してください。
① 日本語PDFを作るための「TinyTeX」
quarto install tinytex
② グラフを生成するための「Pythonライブラリ」
python -m pip install jupyter nbformat matplotlib
実践:5分で「最強の資料」を錬成する
環境ができたら、さっそく「魔法」を体験しましょう。
ここでは、 「1つのファイルから、スライド・論文・数式・ページ番号をすべて一気に作る」 方法を解説します。
ステップ 0:まずは「作業場(フォルダ)」を作る
いきなり書き始める前に、資料を保存するための「箱」を用意しましょう。これだけでPCの中がスッキリします。
-
エクスプローラーで、Cドライブ直下などにフォルダを新しく作ります。
- 名前は何でもOKですが、ここでは
quarto-labとします。
- 名前は何でもOKですが、ここでは
- VS Code を起動します。
- 画面左上の「ファイル」→「フォルダを開く...」を選択。
- さっき作った
quarto-labを選んで、「フォルダの選択」をクリック!
ポイント:
VS Codeに「このフォルダの中で作業しますよ」と教えてあげることで、Gitの管理もしやすくなります。左側のバーにフォルダ名が出ていれば準備完了です!
ステップ1:作業用のファイルと「画像」を準備する
- VS Codeの左側のバー(エクスプローラー)で、右クリックして「新しいファイル」を選択。
- 名前を
test.qmdにします。
- 名前を
- 同様に、右クリックして「新しいフォルダー」を選択。
- 名前を
imagesにします。
- 名前を
-
ここが重要!:適当な画像ファイルを1つ用意し、名前を
my_image.pngに書き換えて、さっき作ったimagesフォルダの中に放り込んでください。
ポイント:
Quartoは、コードに書かれた「名前」と、実際の「ファイル名」が1文字でも違うと画像を見つけてくれません。まずはmy_image.pngという名前で練習用の画像を用意するのが、成功への近道です!
※フォルダ構成がこれと同じになっていればOKです
ステップ2:魔法のテンプレートをコピペする
以下のコードを丸ごとコピーして、test.qmd に貼り付けて保存( Ctrl + S )してください。
---
# ==========================================
# 【設定エリア】ここから下は「レシピ」です。
# ------------------------------------------
# 基本的にはこのままコピペでOK!
# ==========================================
title: "Quarto爆速スライド & レポート"
subtitle: "〜パワポの微調整から卒業しました〜"
author: "姓 名"
format:
# --- 1. プレゼン用の「スライド(PDF)」の設定 ---
beamer:
pdf-engine: xelatex
theme: Madrid
pagenum: true # ← 右下にページ番号を出す魔法
header-includes:
- \usepackage{xeCJK}
- \setCJKmainfont[AutoFakeBold=3]{MS Mincho}
# --- 2. Webで見られる「HTML」の設定 ---
html:
toc: true
number-sections: true
theme: cosmo
# --- 3. 提出用の「レポート(PDF)」の設定 ---
pdf:
pdf-engine: xelatex
documentclass: scrartcl
header-includes:
- \usepackage{xeCJK}
- \setCJKmainfont[AutoFakeBold=3]{MS Mincho}
# ==========================================
# 【設定エリア終了】最後に --- で閉じます
# ==========================================
---
# 1. Quartoの基本ルール
## 新しいスライドを作るには?
- 「#(シャープ1つ)」は、大きな章の区切りになります。
- 「##(シャープ2つ)」を書くたびに、新しいスライドが作成されます。
- スライドのタイトルは「##」の横に書きます。
## 箇条書きと強調のやり方
- 行の先頭に「-(ハイフン)」か「*(アスタリスク)」を入れてスペースを空けると、箇条書きになります。
- 文字を **「(アスタリスク2つ)」**で囲むと太字になります。
- 改行したい時は、行の最後に半角スペースを2つ入れるか、1行空けてください。
---
---
## タイトルなしのスライドを作りたい時
- 上のように「---(ハイフン3つ)」で挟むと、タイトルがない真っ白なスライドに切り替わります。
- 図を大きく載せたい時などに便利です。
# 2. 研究で使える「高度な機能」
## 数式もプロ級の仕上がり
- 厄介な数式も、これだけで美しく書けます。
- 文中に書きたい時は `$ $`、独立させて大きく書きたい時は `$$ $$` で囲みます。
$$\int_a^b f(x) dx = F(b) - F(a)$$
## 既存の画像を貼る
面倒な配置作業は不要。これだけで図が中央に揃います。
{width=35% fig-align="center"}
::: {.callout-warning}
## 画像を貼るときの注意点
コードで `images/my_image.png` と書いた場合、作業フォルダの中に `images` フォルダが必要です。
:::
## グラフを自動生成(Python連携)
わざわざグラフを画像として保存する必要はありません。
コードを書いておけば、実行結果がそのままスライドに載ります。
```{python}
import matplotlib.pyplot as plt
# グラフのサイズ(インチ)と解像度を直接指定する
plt.figure(figsize=(6, 3), dpi=100)
plt.plot([1, 2, 3, 4], [1, 4, 9, 16])
# 余白を自動でギリギリまで削る魔法のコマンド
plt.tight_layout()
plt.show()
```
## 「論理と見た目の分離」のすごさ
- いま書いているこのテキストこそが「論理(中身)」です。
- 一番上の設定を変えるだけで、内容はそのままでスライドにもレポートにも一瞬で変わります。
- **コピペ作業とはおさらばです!**
ステップ3:ボタン(またはショートカット)で実行!
VS Codeの右上にある Render アイコンをクリックしましょう。
「ボタンが見当たらない!」という方へ:
キーボードでCtrl + Shift + Kを押してください。これが実行(レンダリング)のショートカットです。
出力形式を切り替える方法
デフォルトでは、YAMLの format の一番上に書いた形式(今回の例では スライドPDF beamer)が出力されます。形式を切り替えたいときは、以下のいずれかを行います。
-
ボタンの横の「∨」をクリック:
Render HTMLやRender PDFを選ぶ。 -
YAMLの順番を入れ替える: 出したい形式を一番上に持ってくる(例:
pdfをbeamerより上に書く)。
これで、同じ内容から「スライド」「レポート」「HTML」を自由自在に生成できるようになります。
ステップ4:Gitを「起動」して履歴を刻む
さて、ここが一番重要です。Gitを使えるように「初期化」しましょう。コマンドを打つ必要はありません。すべてVS Codeの画面ポチポチで完結します。
- VS Codeの左側にある 「ソース管理(枝分かれしたアイコン)」 を開く。
- 「リポジトリを初期化する」 という青いボタンをクリック!
- これで、このフォルダ内の変更をGitが監視してくれるようになります。
履歴の保存(コミット)のやり方
資料を書き換えて保存したら、左側の「ソース管理」画面を確認してください。
-
+アイコン(すべてをステージ) を押す。 - 上の入力欄に「スライド完成!」や「フォント修正」などのメッセージを書く。
- 「コミット」 ボタンを押す。
これで、あなたの思考の履歴が永久に保存されました。もう「スライド_修正版2.pptx」を量産してフォルダを汚す必要はありません!
さらに使いこなしたい方へ(外部リンク)
今回紹介したのは、Quartoの広大な機能のほんの一部です。より詳しく知りたい方は、以下の素晴らしいリソースを参考にしてください。
Markdownの書き方を極める:Qiita公式:Markdown記法 チートシート
Gitの概念を理解する: サル先生のGit入門
Quartoの全機能を知る: Quarto公式ドキュメント(英語)
まとめ
実際に使ってみての感想
正直、最初は設定や書き方に慣れるまで少し時間がかかりました。しかし、一度環境を整えてしまえば、爆速で資料作成できます。もうパワポはアンインストールします。
「何を伝えるか」という思考に集中できるようになったので、毎週の資料作りもずいぶん楽になりました。
結局、どっちがいいの?(メリット・デメリット比較)
従来の方法(パワポ・ワード)と、今回の方法をフラットに比較してみました。
| 項目 | パワポ・ワード (GUI) | 今回の方法 (Quarto + Git) |
|---|---|---|
| 学習コスト | 低い(誰でもすぐ使える) | やや高い(構築と慣れが必要) |
| 見た目の微調整 | 1px単位で沼りやすい | システムにお任せ(勝手に整う) |
| 履歴管理 | ファイルコピー地獄になりがち | Gitでスマートに管理・復元できる |
| カスタマイズ性 | 自由すぎて逆に時間が溶ける | 一度テンプレートを作れば使い回し自在 |
| 共同編集 | 優秀(コメントや赤入れが楽) | 不向き(相手もエンジニアじゃないと厳しい) |
結論:
個人の研究進捗や、自分一人で完結する資料作成なら、今回のワークフローが「最強」です。逆に、大人数でファイルを回して赤入れしてもらうような場面では、大人しくパワポを使うのが正解だと思います。
これから始める人へ
「自分には難しそう……」と思うかもしれませんが、今の時代にはGeminiやChatGPTなどの生成AIがいます。エラーが出たらログをそのままコピペして「これどうすればいい?」と聞けば、大抵のことは解決してくれます。
実は、私もこの環境を作るのにGeminiにめちゃくちゃ相談しました。
また、Quartoの技術的な解説記事は他にもありますが、学生が「パワポ嫌い!」という動機でここまで特化した記事はあまり見当たりませんでした。この記事が、同じ悩みを持つ人の助けになれば嬉しいです!