1.はじめに:現代のAPI開発で起きている問題
近年のWeb/バックエンド開発において、APIファースト開発は標準的な考え方になっています。
実装より先にAPIの設計図を定義し、フロントエンド・バックエンドが共通の仕様を元に並行開発する。この流れは、開発スピードと品質の両立に大きく貢献してきました。
APIファースト開発の中心にあるのが、**OpenAPI(Swagger)**です。
エンドポイント、リクエスト、レスポンス、ステータスコード
それらをYAMLやJSONで明確に定義することで、「APIの契約」をコードより先に共有できます。
しかし、ここで一つの問題が浮かび上がってきます。
設計図が「資産」から「負債」になっていないか?
APIの規模が大きくなるにつれて、OpenAPI定義は次のような悩みを抱えがちです。
・YAMLが肥大化し、どこに何が書いてあるのかわからない
・同じスキーマ定義を何度もコピペしている
・リファクタリングが怖くて触れない
・実装と仕様が徐々にズレていく
・型の再利用や抽象化がほぼできない
結果として「API設計書を更新するのがつらい」という本末転倒な状況が生まれます。
本来、API設計書はチームの共通言語であり、最も信頼できる情報源であるべきです。
そこで登場するのが「TypeSpec」という選択肢
この問題を解決するために登場したのが TypeSpec です。
TypeSpecは、API設計のための専用言語であり、型定義・再利用・抽象化を前提とした設計ができる
OpenAPIなどへのコード生成が可能という特徴を持ち、「人間が書きやすく、機械が理解しやすい設計図」を実現できる。
2.OpenAPIとは?:世界共通の「APIの設計図」
OpenAPIとは、REST APIの仕様を記述するための世界共通の標準フォーマットです。
かつては「Swagger Specification」と呼ばれていましたが、現在はOpenAPIとして広く使われています。
OpenAPIでは、APIの構造を YAML または JSON で定義します。
どんなエンドポイントがあるのか
どんなHTTPメソッドを使うのか
どんなリクエストを受け取り
どんなレスポンスを返すのか
これらをコードを書く前に明文化できる点が最大の特徴です。
OpenAPIでできること
- APIドキュメントの自動生成
OpenAPI定義ファイルを用意するだけで、RedoclyのようなAPIドキュメントを自動生成できます。
エンドポイント一覧、リクエスト・レスポンスのサンプル
これにより直観的にAPI定義を理解できる環境を作れます。
2.クライアントSDK・サーバーコードの自動生成
OpenAPIはドキュメントだけのためのものではありません。
TypeScript / Java / C# などのクライアントSDK(開発言語のことを指す)
Spring Boot / ASP.NET / Node.js などのサーバー側ボイラープレート(テンプレ)
これらを自動生成できます。
API仕様を定義することで、フロントエンドはSDKを使って安全に実装し、
バックエンドは定義に沿って実装という、型安全でズレの少ない開発が可能になります。
3.TypeSpecとは?:API設計のための「TypeScriptライクな言語」
OpenAPIの「人が書くにはつらい」という問題に対する、現実的な答えの一つが TypeSpec です。
TypeSpecは、Microsoftが開発した「API設計のための専用言語」です。
YAMLやJSONではなく、プログラミング言語に近い記法でAPIを定義し、そこからOpenAPIなどの仕様を生成します。
重要なのは、TypeSpecはOpenAPIを置き換える存在ではない、という点です。
TypeSpecで設計し、OpenAPIは生成物として扱う
これがTypeSpecの基本思想です。
※TypeSpecの始め方や書き方は別の記事で寄稿する予定です。
4.まとめ:API設計を「もっと楽に、もっと正確に」
今回のポイントを3行でまとめると以下の通りです。
・OpenAPIは「標準規格」:ドキュメントやコード自動生成のために欠かせない成果物。
・TypeSpecは「設計言語」:人間が効率よく、ミスなくAPIを定義するためのツール。
・新常識のワークフロー:「TypeSpecで書き、OpenAPIを書き出す」。
これからはAPI開発において、巨大なYAMLを直接編集するのではなく、「TypeSpec」という強力なツールを利用して、モダンAPI開発を進めていくのが主流になっていくのではないかと考えています。
【参考文献】
『Web APIの設計』、Arnaud Lauret (著), 株式会社クイープ (監修, 翻訳)