はじめに
この記事はシスコの有志による Cisco Systems Japan Advent Calendar 2025 シリーズ2の25日目の記事として投稿しています。
過去のカレンダー一覧:
2017年版: https://qiita.com/advent-calendar/2017/cisco
2018年版: https://qiita.com/advent-calendar/2018/cisco
2019年版: https://qiita.com/advent-calendar/2019/cisco
2020年版: https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco
2021年版: https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco
2022年版: https://qiita.com/advent-calendar/2022/cisco
2023年版: https://qiita.com/advent-calendar/2023/cisco
2024年版: https://qiita.com/advent-calendar/2024/cisco
2025年版: https://qiita.com/advent-calendar/2025/cisco (シリーズ1,2)
去年も生活の中にIoTセンサーを取り入れる記事を書いているので、こちらもご笑覧いただければ幸いです。
サンタの存在を確認したい
12月25日のクリスマス、朝起きた子供達が、ツリーの根元や枕元のプレゼントを見つけ、大いに喜ぶ。こんなお馴染みの光景に対して、「サンタは本当にこの家に来てくれているのだろうか」という疑問がある。
サンタが人類だとすれば、1人の人間が世界中のご家庭に1日で荷物を配りきるには限界があるはずで、何らかのスケールする仕組みが必要となるだろう。またうちはマンションなので、出入り口にも疑問がある。これまで子供と一緒に、サンタが家に入る手段があるかを議論し、マンションの屋上の仕組みを調べたり部屋のドアや窓の確認をしてきたが、侵入経路は未だ判明していない。
サンタは本当にうちに来たのか?本当に存在しているのか??それを、IoTの力で確かめたい。
サンタの存在を確認する方法
サンタの存在を確認する手段があるか、わたしたちにでできることがあるか、子供と議論した。
アイデア1: サンタをカメラで撮影する
監視カメラは、サンタの存在を確認・証明する最も角度が高い方法であろう。真っ先に考えつく方法だ。
…しかし、子供からは、「サンタがカメラに気づいたら、プレゼントもらえなくなっちゃうかも」という懸念が表明された。確かにサンタにカメラの存在を知られると、もしかすると来年以降うちに来てくれなくなるかもしれない。これは望まない結果を引き起こすリスクが非常に高いということで、却下された。
アイデア2: サンタの存在を、環境の変化で検知する
サンタが来て作業するであろう場所に、人間ならではの気配=呼吸や音などを検知する環境センサーを置くのはどうだろう。
人の吐く息が増えればCO2が増える。そういえば同僚とWeb会議をしている時に、同僚の後ろにCo2を検知できるセンサーが設定されており、会議が長くなると部屋のCO2濃度がだんだん上がって、センサーの表示色が緑から黄色に変わっていく様子を見たことがある。あれを活用して、人間の存在を把握できないだろうか。
…できるような気がする。センサーを借りて家で実験してみよう。
なお他にも、ドアセンサーを取り付けてサンタがドアを開けたか確認する、サンタが作業する場所にフリーWi-Fiを提供し見知らぬ端末が利用しているかログを確かめる、などのアイデアもあった。しかし、そもそもサンタの侵入経路・方法がわからないためドアは存在を検知するのに不確実性が高いこと、また当日サンタは忙しくフリーWi-Fiを利用する余裕がないかもしれないこと、などの理由から却下された。
そこで、Merakiの エアクオリティ(空気質)センサー MT15 を家のリビングに設置し、サンタの存在を検知できないか検証することにした。
Meraki エアクオリティ センサー MT15
MerakiセンサーMT15は、室内の空気質を測ることができるエアクオリティセンサーで、 CO2(二酸化炭素), TVOC(総揮発性有機化合物), PM2.5, 温度, 湿度, ノイズ を計測することができる。
センサーの中央には丸いLEDリングがあり、設定した項目の数値が適切な範囲かどうかを色で表示することができ、緑🟢→黄🟡→赤🔴と変化する。
一般的にはオフィスや企業の作業環境が、人間にとって適切な環境かどうかを測定する目的で利用される。昔ある企業の方から「オフィスの端の機材ラックの音がうるさいので、それが従業員の健康を害していないかどうか、MT15で状況を把握し、改善したい」と言われて、その従業員を思う姿勢に感銘を受けたこともある。
人間は空気中の酸素を吸って二酸化炭素を吐くので、サンタが作業している場所ではCO2が増えるはずである。または、プレゼントを置くような作業をする際に発生する音が、ノイズとして検知できるかもしれない。
まずは家のリビングにMT15を設置し、実際に生活の中でエアクオリティセンサーを使った時に、空気質がどのような変化をするか、センサーのデータが変化していくか確認したい。
生活の中の二酸化炭素 CO2
MT15はCO2(二酸化炭素)濃度を検知する。コロナ禍以降オフィス内のCO2濃度を測定することも一般化してきている実感で、空気の入れ替え目安を知る等の用途で利用されている。
個人的にはこれまで家での生活においてCO2を特段意識してきたわけではないが、とはいえ毎朝窓を開けて換気をするし、部屋の中で火を使ったりドライアイスを使用するときには窓を開けるようにしている。とはいえ、電話ボックスのような狭い小部屋ならまだしも、10畳程度あるリビングにおいて、普段の生活でどれくらいCO2の変化があるのだろうか。
リビングにMT15を設置し、12月のある平日、私が在宅勤務をした日の、24時間のCO2のグラフがこちらである。

…あれ、結構、黄色になっているな?「まずまず」って言われているけれど、これ大丈夫なのか?慌てて、CO2グラフの色の基準を確認した。
MT15は米国CDCの指標に基づき、特にCOVID-19の拡散を防ぐという目的の基準値に沿って、緑〜黄〜赤の閾値を定めているらしい。黄色は”まずまず”のカテゴリになっているが、本来は緑の範囲=800ppmを下回ることが望ましいようだ。新型コロナだけでなくインフルエンザも含めた感染症の拡大を防ぐためにも、緑以下の基準を守っていきたいところだ。
改めてCO2グラフを確認すると、この日のCO2ピークは朝8時過ぎと夜8時過ぎで、最大値は20:34頃の 1231ppmだった。生活リズムと照らし合わせると確かに実感と相違がない。
ご参考までに、この日の我が家の生活と、CO2数値を記載する。
朝7-9時頃:家族で朝食を取り朝の準備をする時間、
CO2濃度は急上昇し8時過ぎのピークは1133ppmだった。
8時半:値が急激に下がっているのは、
私がベランダの掃き出し窓を開け、洗濯物を干すついでに換気をしたからだろう。
昼前:リビングで仕事をしていたため、午前中は横ばいのような状態にあった。
13時:この日は昼に会議あったため13時に昼食をとったが、
準備のため動き回ったりご飯を温めたりの動作によるのか、黄色への上昇が見られる。
その後15分ほど窓を開けて換気をしたため数値は下降している。
夕方18時過ぎ:家族が帰ってきて家の人数が増えた頃から、
またCO2が急激な上昇をしている。
19時前:洗濯物を取り込むために窓を開けたため、
CO2数値は一旦減少し、しかしその後また急上昇している。
20時半:夕食やリビングでの憩いの時間。この日のピーク1231ppmを記録した。
21時以降:20時半以降リビングにいる家族の人数は徐々に減り、
大多数が寝室に向かった21時ごろから数値が明らかに減少していく。
23時:この日の夜は大人一人が23時ごろまでリビングにおり、その後無人となったはずだ。
夜中:窓を閉じているが、おそらくリビングにある通気口から、
少しずつ少しずつ空気が入れ替わって、CO2濃度も減少しているのだと思われる。
結論として、リビングに設置したMT15センサーで、CO2の変化が十分に観測できた。部屋の換気は大事だなと、改めて実感した。
生活の中のPM2.5
MT15はPM2.5の計測が可能だ。環境省のサイトでPM2.5の定義を改めて確認すると、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、非常に小さな2.5μm以下の粒子のことを言うらしい。PM2.5は人体への影響があるため、環境基準値が設けられている。
先ほどのCO2のデータと同じ日の、PM2.5のグラフがこれである。

結果、終日「非常に良い」状態のようで安心した。
その中でも特にPM2.5の数値の上昇が見られるタイミングは、8時半ごろと19時代だった。これは前述の生活リズムから考えるに、朝8時半はベランダの窓を開けたタイミングで、外からPM2.5が入ってきたようだ。また夜19時代は食事をしたり子供がリビングで遊んでいたため、何かしらのチリや埃が舞う状況だったということだろう。
窓を開けたタイミングでPM2.5の数値が上昇するのは正直残念だが、とはいえ日本の基準では平均15μg/m3以下が通年の目安ということなので、環境としては問題ないようだ。
生活の中のTVOC
MT15はTVOCの計測が可能だ。TVOCとはTotal Volatile Organic Compoundsの略で、総揮発性有機化合物と呼ばれる。TVOCはさまざまな種類の化学物質(VOC)の総量を示す値であり、東京都環境局によると、VOCの種類には主なものでも200以上あるそうだ。
個人的にあまり馴染みのない指標だが、生活におけるTVOCの1日のグラフを見てみよう。
(記事を書く際にセンサーを移動させ再起動したため"Calibrating..."との表示が出ているが、一旦無視してほしい。)

え、黄色?TVOCの値が高い!?
特にこの日のピークは、特に朝7:15ごろと昼13:05ごろ、さらに夜20時代から22時ごろに上昇が見られた。
朝と昼の上昇タイミングはおそらく、ガスコンロや電子レンジなどのキッチン家電を稼働させたことに起因すると思われる。そして夜20時ごろは、キッチンの片付けを行い食洗機などを稼働させたタイミングだと思われる。
しかし22時ごろに数値が上昇している説明がつかないが…ん…もしかするとこれは…飲酒後の大人がセンサーの近くでくつろいでいたことに起因する可能性があるかもしれない…?
TVOCで検知される化学物質のうち、具体的にどのような物質なのか判別できないが、やはり生活の中でも、キッチンにおける作業時は改めて換気が重要であると身を引き締めた。またTVOC測定センサーはアルコールにも反応するとのことで…飲酒もほどほどに、という戒めを得た。
生活の中の温度、湿度
MT15は温度と湿度を計測できる。温湿度は生活の中ではお馴染みの数値である。
同じ1日の温度湿度の変化を見てみる。

なるほど、12月とはいえ暖房や加湿器をつける部屋の中は、おおよそ適した温度と湿度に保たれていることがわかる。湿度について、朝8時半ごろに28%に下降ているが、これは窓を開け換気をしたタイミングだ。外から冬の乾いた空気が流入して、少し湿度が理想的でない状態になっていたと判断した。
生活の中の周辺ノイズ
MT15はAmbient noise、すなわち環境音などのノイズを計測できる。同じ1日の周辺ノイズの変化を見てみる。

この日は家族内での大きなインシデントは起こらなかったので、ノイズとしては良好な範囲内に収まっていたようだ。うるさすぎない1日でよかった。
室内エアークオリティ
MT15は室内エアークオリティ (IAQ: Indoor Air Quality)として、空気質全体を総合した指標を表示する。これはMT15で測定できる指標のうち周辺ノイズを除いたものの、定性的な評価値である。すなわち、エアークオリティIAQの値としては、 温度,湿度,TVOC,PM2.5 の総合的な値 が表示される。

この日の室内エアークオリティのグラフを見ると、朝7時〜8時ごろの朝食時間が少し下がっており、これまでの分析での実感と相違はない。一方で夕食のタイミングはそこまでの下降は見られなかったため、TVOCなどの結果と合わせても、良好な範囲の、特段考慮を要するような状況ではないということが理解できた。
MT15でサンタを検知する準備
以上により普段の生活におけるリビングの空気質の変化を、MT15のさまざまな測定値で検知できるということがわかった。
サンタが仮にイメージ通りの大柄な男性だとすれば、MT15を置いたリビングで、夜中無人の間にも空気質の変化が発生し、そのデータがすなわち、サンタの来訪や存在の証拠と言える可能性がある。
まずMT15の設置場所としては、クリスマスツリーに設置した。うちではクリスマスの朝、ツリーの根元にプレゼントが置いてあるので、サンタは夜中にツリー根元で作業しているはずである。ツリー中腹の、成人男性が中腰になった時に顔がありそうな位置あたりにセンサーを設置した。
そして12/24クリスマスイブの夜、21時半から家族の大多数がリビングから出ていき、23時には家事を終えた大人も退室し、リビングには誰もいなくなった。
. . . .
そして翌12/25、クリスマスの朝…クリスマスツリーの根元には…
プレゼントが、あった!!!🎄🎁✨
サンタは、プレゼントを届けてくれていた!!!!
(プレゼントをお見せできない代わりに、MT15に息を吹きかけたらLEDが赤く光った時の写真をどうぞ。とても赤い)
クリスマスの夜に、MT15が計測したデータ
生活から逆算するに、今年のクリスマスイブの夜、うちにサンタが来たとすれば、12月24日の夜23時以降から12月25日朝4時くらいまで の間だろうか。
ではMT15センサーの計測結果は、どうだったか…?焦点の23時〜4時を含む、
12/24 18:00 〜 12/25 9:00 のMT15のグラフを掲載する。
まず夜18時〜翌朝9時の、室内エアークオリティIAQのグラフを見ると…

12/24の夜、特にリビングから人がいなくなった21:50ごろに空気室全体の数値が急上昇している。人がいなくなることで、空気の質としては良い方へ安定したようだ。
一方でその後夜中は、大きな変化は見られず、朝子供達が起きてきた6:30ごろに、IAQの値は下降した。
IQAの指標においては特段気になることはなく、普段の一日と変わらないように見える。
では、夜18時〜翌朝9時の、MT15の各測定値はどうか…

まず温度・湿度には、大きな変化はないように見える。

窓を開けたら湿度が下がることから、特に湿度はサンタの侵入を検知する1つの指標になるかと期待していた。しかし下降したのは21:40頃で、リビングから寝室に人が移動するタイミングで、おそらく窓を少し開けるようなことがあったタイミングだ。それ以降は、特段急激に湿度が下がった様子は見られない。
続いてTVOCとPM2.5はどうか…ん?

TVOCのデータで、リビングから人がいなくなった23時以降を見ると、0:00ごろに、TVOCの数値が変化している…!深夜0時、真夜中に、ツリーの周辺に、何らかの化学物質の気配があったと言うことか…?
頭に疑問を残したまま、次にCO2のデータを確認する…

ん?これは、CO2濃度も、23:54ごろ、微妙に上昇しているのでは…!?
では最後にノイズ、周辺ノイズのデータはどうか?

ちょっと待ってほしい。23:50ごろから、確実に、ノイズのデータがスパイクしている!!!!!!
これは…
12月24日の23:50ごろから12月25日の0:00ごろにかけて、何らかの存在が、来訪していた
と、言えるのではないか!?!?!?!?!?!?
まとめ:空気質センサー MT15 は、サンタの存在を検知する
Merakiの空気質センサーMT15により、私たち家族は…サンタもしくはそれに類する何らかの存在を、確信した。
データからわかったこと、考えられることは以下である。
- 12月24日の深夜に、ツリーの周りに空気質の変化があったこと
→ 何らかの存在が、来訪した可能性が高い - 特に深夜0:00前後に、ツリーの周りにノイズが発生していたこと
→ 何らかの存在が、何らかの作業をした可能性が高い - 温湿度の変化は見られなかったこと
→ 何らかの存在は、窓の開閉を伴わずに侵入した可能性が高い - TVOCの上昇が見られたこと
→ 何らかの存在の周りに、何らかの化学物質が発生している - CO2を排出する存在であること
→ 何らかの存在は、人と同じ、呼吸をする生命体である可能性が高い
. . . .
みなさんは、この事実をどう捉えるか?
もし他にデータの解釈の余地があれば、ご意見やフィードバックをいただけたら幸いにおもう。
なおMerakiセンサーは、MerakiスマートカメラMVと連動し、特定の数値が閾値を超えたらカメラの画像を取得しスマホ等に通知することも可能だ。もし様々なリスクを承知でサンタの存在の証拠を得たい方がいらしたら、ご家庭でMT15とMVカメラを組み合わせ、サンタの姿を捕捉することも、可能かもしれない…
またぜひこの記事をご活用いただき、ご家庭のお子様がサンタの存在に興味を持った際には、データから見える事実と、そこから推測できる内容について、ご家族で話し合っていただけたら本望だ。
🎄🎅🎁 メリークリスマス 🎄🎅🎁
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