はじめに
この記事では、ネットワーク学習シミュレータ「GNS3」で構築したシンプルなネットワーク(PC-ルーター-ルーター-PC)を例に、PC間でpingが通るようにするための基本的な設定手順を解説します。
ネットワークの学習を始めたばかりの方や、GNS3で基本的な設定を行いたい方向けの内容です。
対象読者
- ネットワークの学習を始めたばかりの方
- GNS3の基本的な使い方(プロジェクト作成、ノード配置、配線)がわかる方
- Ciscoルーターの基本的なCLI操作に触れたことがある方
環境
- シミュレータ: GNS3
- ルーター: Cisco IOSを搭載したルーター (例:c3725)
- PC: VPCS
ネットワーク構成
今回は、以下のようなシンプルな構成を考えます。
- PC1: 送信元PC
- R1: ルーター1
- R2: ルーター2
- PC2: 宛先PC
設定の全体像
pingを成功させるためには、各デバイスが「通信相手がどこにいるのか」を知っている必要があります。そのために、以下のステップで設定を行っていきます。
- IPアドレスの設計: 各ネットワークセグメントのIPアドレスを決めます。
- 各デバイスへのIPアドレス設定: PCとルーターの各インターフェースにIPアドレスを設定します。
- スタティックルーティングの設定: ルーターに未知のネットワークへの経路情報を手動で設定します。
-
動作確認: PC1からPC2へ
pingを送信し、疎通確認をします。
手順1. IPアドレスの設計
まず、各セグメントで使用するIPアドレスを以下のように設計します。
-
PC1 - R1間:
192.168.1.0/24 -
R1 - R2間:
192.168.12.0/24 -
R2 - PC2間:
192.168.2.0/24
この設計に基づき、各デバイスにIPアドレスを割り当てていきます。
| デバイス | インターフェース | IPアドレス/サブネット | デフォルトゲートウェイ |
|---|---|---|---|
| PC1 | eth0 | 192.168.1.10/24 |
192.168.1.1 |
| R1 | FastEthernet0/0 | 192.168.1.1/24 |
- |
| FastEthernet0/1 | 192.168.12.1/24 |
- | |
| R2 | FastEthernet0/1 | 192.168.12.2/24 |
- |
| FastEthernet0/0 | 192.168.2.1/24 |
- | |
| PC2 | eth0 | 192.168.2.10/24 |
192.168.2.1 |
(注意: ルーターのインターフェース名 (FastEthernet0/0 など) は、GNS3で配線したポートに合わせて適宜読み替えてください。)
手順2. ルーターの設定
R1とR2にIPアドレスを設定し、インターフェースを有効化します。
R1の設定
enable
configure terminal
! ホスト名の設定
hostname R1
! PC1側のインターフェース (Fa0/0)
R1(config)# interface FastEthernet0/0
R1(config-if)# ip address 192.168.1.1 255.255.255.0
R1(config-if)# no shutdown
R1(config-if)# exit
! R2側のインターフェース (Fa0/1)
R1(config)# interface FastEthernet0/1
R1(config-if)# ip address 192.168.12.1 255.255.255.0
R1(config-if)# no shutdown
R1(config-if)# exit
R2の設定
enable
configure terminal
! ホスト名の設定
hostname R2
! PC2側のインターフェース (Fa0/0)
R2(config)# interface FastEthernet0/0
R2(config-if)# ip address 192.168.2.1 255.255.255.0
R2(config-if)# no shutdown
R2(config-if)# exit
! R1側のインターフェース (Fa0/1)
R2(config)# interface FastEthernet0/1
R2(config-if)# ip address 192.168.12.2 255.255.255.0
R2(config-if)# no shutdown
R2(config-if)# exit
手順3. スタティックルーティングの設定
この時点では、各ルーターは自身が直接接続しているネットワークしか知りません。
- R1は
192.168.2.0/24(PC2のネットワーク) を知らない - R2は
192.168.1.0/24(PC1のネットワーク) を知らない
そこで、ip routeコマンドを使って、知らないネットワークへの行き方を手動で教えてあげます。これをスタティックルーティングと呼びます。
R1のルーティング設定
「192.168.2.0/24 宛のパケットは、192.168.12.2 (R2) に送ってね」と設定します。
R1(config)# ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.12.2
R2のルーティング設定
「192.168.1.0/24 宛のパケットは、192.168.12.1 (R1) に送ってね」と設定します。
R2(config)# ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 192.168.12.1
手順4. PC (VPCS) の設定
PCにIPアドレスと、デフォルトゲートウェイ(ルーターの入り口)を設定します。
PC1の設定
ip 192.168.1.10/24 192.168.1.1
PC2の設定
ip 192.168.2.10/24 192.168.2.1
手順5. 動作確認
すべての設定が完了したら、PC1からPC2へpingを送信して疎通確認を行います。
ping 192.168.2.10
以下のような応答があれば成功です!
84 bytes from 192.168.2.10 icmp_seq=3 ttl=62 time=66.003 ms
84 bytes from 192.168.2.10 icmp_seq=4 ttl=62 time=57.671 ms
84 bytes from 192.168.2.10 icmp_seq=5 ttl=62 time=64.276 ms
...
最後に、ルーターの設定を保存しておきましょう。
R1# write memory
R2# write memory
さいごに
今回は、GNS3を使った基本的なネットワーク設定として、スタティックルーティングを行いました。
IPアドレスの設定とルーティングの考え方は、ネットワークを理解する上で非常に重要です。
この記事が、ネットワーク学習の助けになれば幸いです。