初版: 2021/6/24
2021/8/7 Astra Control Centerの情報追記
2021/10/3, 2022/2/2 新しい記事のリンクを追加
はじめに
NetAppは、Kubernetes環境のアプリケーションのデータライフサイクルを管理するサービス「NetApp Astra」の提供を始めました。
Astraを使用することで、Kubernetesアプリケーションのバックアップや別のクラスターへのデータ移行、作業中のアプリケーションクローンの作成などを簡単に行うことができます。
本投稿はこのAstraの概要について記載していきます。
関連投稿一覧
- NetApp Tridentとは
- NetApp Astra とは 【本投稿】
- NetApp Astra Service を使ってみる ①GKE事前準備編
- NetApp Astra Service を使ってみる ②AKS事前準備編
- NetApp Astra Service を使ってみる ③Astra UI操作編
- NetApp Astra Control のインストール
- NetApp Astra Control を使ってみる ①UIの操作編
- NetApp Astra Data Store とは
NetApp Astra のサポート環境
NetApp Astraを使用できるプラットフォームは、次のとおりです。
- Google Kubernetes Engine(GKE) 2021年3月 提供開始済み
- Azure Kubernetes Service(AKS) 2021年4月 提供開始済み
- Amazon Elastic Container Service(ECS) 近日リリース予定
- オンプレミス 2021年8月6日 提供開始済み
Astra の提供モデル
Astraの提供形態には、クラウドとオンプレで次の2つのモデルがあります。
1. Astra Control Service
AstraをAzure AKS および Google GKEなどのKubernetesマネージドサービス上で利用するためのソフトウェアで、SaaSとしてNetAppが提供
2. Astra Control Center
Astraをオンプレミス上のお客様のKubernetesクラスタ上で利用するためのソフトウェア
お客様にてインストール、管理する必要があります。
Astraに対応するストレージ
Astraは現在、以下の永続的ボリュームをバックエンドストレージとして使用できます。
- GKEクラスタ: NetApp Cloud Volumes Service for Google Cloud
- AKSクラスタ: Azure NetApp Files
NetApp Astraで永続ボリュームをKubernetesにプロビジョニングする際は、NetAppのTrident と呼ばれるコンテナストレージインタフェースが使われています。
このTridentが、NetApp ONTAPやNetApp Cloud Volumesなどのストレージプラットフォーム上に永続ボリュームを作成します。
Astraがサポートするアプリケーション
Astra Control Serviceは、お客様のKubernetesクラスター上で動作するすべてのアプリケーションをサポートします。
ただし、GKEクラスタ上にGoogleマーケットプレイスからデプロイしたアプリケーションの場合は、制限 がありますのでご注意ください。
Astraの特徴
シンプルで簡単に、オンプレでもクラウドでも、同じUIから同じ機能が利用できる
Astra ControlにKubernetesクラスタを登録すると、Astraはクラスタで実行されている全てのアプリケーションを自動的に検出します。
アプリケーションデータの格納先である永続ボリューム(Persistent Volume)だけでなく、Kubernetesリソース(Pod、Secret、ConfigMapなど)や関連するマニフェストのバックアップ、リカバリ、クローン作成、また別のKubernetesクラスタに移動するなど、UIから数回クリックするだけで簡単にデータの管理を行うことができます。
また、Astra Controlはクラウド、オンプレに関わらず共通したAPIを提供します。
これによりアプリケーションが実行される場所(インフラ)を抽象化し、アプリケーションのポータビリティを高めることができます。
Astra Control上での操作を簡単に行うためのPythonのツールキットも提供しています。
ユースケース
1. スナップショットによるデータ保護
スナップショットのコピーをローカルに定期的に保存しておくことで、誤って削除したり破損したりしたデータを復元することができます。
2. リモートバックアップによるディザスタリカバリ
同じまたは異なるReagionのKubernetesクラスタにリストアすることができます。
3. アプリケーションのポータビリティを実現
場所を問わず、異なるクラウドのマネージドKubernetesサービス間や、オンプレ上の異なるKubernetesディストリビューション間においても、アプリケーション環境のポータビリティを実現できます。
利用料金について
Astraを使用する際には、Kubernetesクラスタなどのクラウド利用料の他に以下の費用がかかります。
- Astra Control Service の費用 (NetAppからの請求)
- データ保護のためのボリューム、オブジェクトストレージなどクラウド利用料金 (クラウドプロバイダからの請求)
Astra Control Service の料金プラン
① 無料プラン
- Astra Controlのアカウントを作成すると、自動的に無料プランに登録されます。
- 10アプリケーションまでは無料でお使いいただけます。
- Astraの無料トライアルは、こちらのページよりお試しいただけます。
10アプリケーションを超えた場合は、アカウント内のすべての管理対象のアプリケーションに対して課金を開始します。(最初の10アプリケーションに対しても課金が発生します)
1アプリケーションにつき1分ごとに$0.005の料金がかかります。
② Premium PayGo プラン
無料プランを利用中で、アプリケーション数が10を超えた場合はこのプランに自動的に変更されます。
Astra Controlのアカウントをまだお持ちでない場合は、Premium Subscriptionを購入すると、自動的にAstra Controlのアカウントが作成されます。
③ Premium サブスクリプション
年間契約の前払いプランです。利用量に応じて割引きが付与されます。
Google Cloud の費用
Astra Control ServiceでGKEクラスターを管理する場合、永続ボリュームはNetApp Cloud Volumes Serviceでバックアップされ、アプリケーションのバックアップはGoogle Cloud Storageのバケットに保存されます。
Astra Control Serviceは、Cloud Volume Serviceのすべてのサービスタイプとサービスレベルをサポートしています。
使用できるサービスタイプは、お使いの Google Cloud のリージョンによって異なります。
Microsoft Azure の費用
Astra Control ServiceでAKSクラスターを管理する場合、永続ボリュームはAzure NetApp Filesでバックアップされ、アプリケーションのバックアップはAzure Blobコンテナに保存されます。
まとめ
昨今ではKubernetes環境で動かすワークロードの種類が増えてきており、ステートフルなアプリケーションへの適用例も出てきました。
コンテナ自体やKubernetesのコンポーネントは共有レジストリ/リポジトリを使って管理できますが、ステートフルなアプリケーションを運用するためには、アプリケーションのデータを含めたシステム全体の構成管理やポータビリティの確保が必要です。
また、Kubernetesではコンテナの可用性は担保できますが、コンテナが落ちた時にアプリケーションデータの整合性を担保したり、すぐに別の環境に切り替える、といったことはできませんので、アプリケーションデータの保護を効率的に行う仕組みも検討しなくてはなりません。
NetApp Astraは、こうしたKubernetesのデータ管理の課題を解消するために開発されたソリューションです。
次回以降、このAstraが実際どのようなものなのか、詳しく解説していきたいと思います。