想定読者
この記事は、社内での面接経験が浅く、面接が苦手だと感じている方々を対象にしています。全てをそのまま実践する必要はありませんので、役立つと思われる部分を取り入れていただければと思います。
はじめに
こんにちは、HRBrainの開発組織立ち上げに携わってきた川田です。
約6年半前、私は採用活動や面接の経験がほとんどない状態からスタートしました。他の人や書籍から学び、実践を重ねることで、より再現性の高い面接を実施できるようになりました。この知識を共有するために、この記事を書くことにしました。
面接の大前提としては、優秀かどうかを判断するのではなく、候補者が現在の会社の環境に合っているかどうかを見極めることが重要です。
構造
継続的に成果を出す人にはどのような特徴があるのでしょうか。この点について構造的に考えてみましょう。継続的な成果を出すためには、適切な振る舞いが求められます。成果を出すための振る舞いをするためには、適切に思考し状況を捉える必要があります。
思考 -> 行動 -> 成果
人は、「状況をどのように捉えるか」という思考のクセと、「ある状況でどのように振る舞うか」という行動のクセの2種類に分けることができます。
思考のクセ
思考のクセについては、「こころの資本」という書籍で説明されている心理的資本を用いて理解できます。心理的資本には以下の4つの要素があります:
- Hope(希望)
- Efficacy(自己効力感)
- Resilience(回復力/弾性)
- Optimism(楽観性)
これらはHEROとも呼ばれています。これらの要素が強いほど、どんな逆境でも前向きに挑戦する力があります。面接では、これらの要素が現時点でどの程度備わっているかを見極めることが重要です。
行動のクセ
行動のクセについては、「人を選ぶ技術」という書籍で紹介されている「ポテンシャルモデル」を用いて説明します。これには以下の4つの特性が含まれます:
- 好奇心
- 洞察力
- 共鳴力
- 胆力
これらが強い人は、大きな可能性と成長の余地を持っています。
質問の切り口
考え方や意見は装飾が可能ですが、実際に行った振る舞いは真実性が要求されます。過去の振る舞いは、具体的な話を深堀することでその真実性をより確かめることができます。また、振る舞いには再現性もあります。
そのため、過去の振る舞いに焦点を当てた質問を通じて、思考と行動のクセを見極めることが効果的です。
具体的な質問の例
質問が思い浮かばないときは、ソラ・アメ・カサというフレームワーク を利用すると質問しやすいです。
例:
「当時どういう状況でしたか?」 -> ソラ
「その状況が続くと、どうなると予想していましたか?」 -> アメ
「どのように行動しましたか?」 -> カサ
具体的な例として、エンジニア未経験でSESとして3年経験し、最近では3人程度をリードした経験がある方と面接をしたと仮定します。
未経験から技術をキャッチアップしたエピソード
質問: 「未経験で入社した際、分からないことだらけだったと思います。どのようにして理解を深めていったんですか?」
回答: 「まず2ヶ月間Javaの研修がありました。その後はすぐ現場に配属され、ほとんど分からないまま手探りで学習しました。」
質問: 「タスクはどのようにアサインされたんですか?」
回答: 「当時のメンバーは5名で、上司のような人はいましたがほとんどタスク分解をしてくれなくて困っていました。何をしたらいいかは、依頼主であるお客様に情報元があると考え、自分でお客様と会話して何をやるべきかをすり合わせて自分でタスクを決めていました。」
質問: 「大変でしたね。その上司の方へ怒りの感情が湧いても不思議じゃないと思うんですが、何かしらフィードバックなどしたんですか?」
回答: 「いえ、分からないことはその上司に聞けば優しく丁寧に教えてくれたり良い面もあったので、特に怒りは感じませんでした。挑戦する環境があり、教えてくれる人もいるので、まあなんとかなるだろうと思っていました。また自身の成長のチャンスだなと捉えて楽しく仕事していました。」
このようなエピソードがあったとします。この話から分かることがいくつかあります。
思考のクセの評価
- 研修直後に無理やりアサインされた現場にも関わらず、環境に文句を言うのではなく、環境を利用し自身の成長を通して成果を出そうと考えることができている点で、逆境に強くResilienceが高そう
- 「まあなんとかなるだろう」という発言から、ある程度自分に自身があり、自分ならうまくいくはずという思考がEfficacyとOptimismの高さを示している
行動のクセの評価
- 初めてのプロジェクトでいきなり顧客と直接会話している点から、好奇心が高そう
- またよくわからない環境で物事を整理するため顧客と会話し、実際にタスク分解まで至っている点から、胆力が一定以上ありそう
- 元上司の仕事のやり方を内省し、自身の部下への仕事の方法を改善しており、洞察力が高そう
ここから更にいろんなエピソードを聞いて多面的にクセを明らかにしていくことで、より確度の高い見極めができます。
特性のバランス評価
会社のフェーズやチームによって、どの要素を重視するかは変わってくると思います。
各特性が過度になった場合のリスクと、適切な状況での価値をバランス良く評価します。例えば、楽観性が高い人はリスクを見落とすことがあるため、その点を踏まえた上でどの程度の楽観性が適切かを検討します。
このようなエピソードを通じて、候補者が未知の環境でどのように対応し、技術や業務を学び取ったかを詳細に理解することができます。これらの質問と回答は、候補者の思考と行動のクセを深く掘り下げるのに役立ちます。
まとめ
このように思考と行動のクセの切り口で過去のエピソードを深堀りすることで、候補者の特性を分析することができます。
あくまで切り口のひとつではありますが、この観点だけでも求めている人の特性をディスカッションする、面接で実践してみる、入社後に答え合わせをしてみる、など様々な活用ができると思うので、ぜひ使ってみてください。