ケアラー支援の新しい挑戦
社内で立ち上げた新規事業に取り組んで、気づけばもう4年。
私たちは、高齢者を支えるご家族(いわゆるケアラー)の課題を解決するためのプラットフォームづくりに挑戦しています。
収益モデルはシンプルで、生活者とパートナー企業を結び、その接点から生まれる価値の対価を得る仕組みです。
しかしこの仕組みを成立させるには、企業の協賛を自ら獲得し、信頼を積み上げていく必要があります。
営業現場で見えてきた課題
立ち上げ当初、営業ノウハウの蓄積はほとんどゼロ。
営業メンバーは日々、試行錯誤を重ねながら協賛企業への提案を続けていました。
そんな中で、現場ヒアリングを通して浮かび上がったのが、次のような課題でした。
「商談やトークが画一的になっていて、相手に寄り添えていない」
「相手企業の最新動向を踏まえた会話ができていない」
「月間150件以上の商談があり、事前リサーチに時間をかけられない」
つまり、**“相手理解の浅さ”と“情報準備の負荷”**が大きなボトルネックだったのです。

デジタルの力で何とかできないか?
営業メンバーの力を引き出す仕組みを、デジタルで補えないか。
そう考えて浮かんだのが、次のような構想でした。
「メーカー名を入れるだけで、
最新ニュース・トークスクリプト・質問案・自社との親和性が自動で出力されるアプリがほしい。」
このアイデアを実現するため、ノーコードAIツールを使ってMVP(Minimum Viable Product)の開発に着手しました。
アプリの構想と要件
開発にあたっての目的は明確です。
- 営業担当が相手企業の“いま”を把握できるようにする
- それを踏まえて自然なアイスブレイクや提案トークにつなげる
- 一定のトーク品質を誰でも再現可能にする
初期構想では、次のような機能を想定しました。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 企業名入力 | 商談先メーカー名を入力 |
| 最新ニュース取得 | Web上の最新情報を自動取得 |
| トークスクリプト生成 | 会話のオープニング例を生成 |
| 深掘り質問案 | 相手に興味を持っていることが伝わる質問を提示 |
| 親和性コメント | 自社のサービスとつながりのある視点を提案 |
使用ツールと構成(ノーコード)
開発はすべてノーコードで構築。
プロトタイプの段階では、以下のツールを組み合わせました。
【構成イメージ】
┌─────────────────────────────┐
│ ① 入力フォーム(企業名・URL) │
│ ② Web検索API(最新ニュース取得) │
│ ③ LLM(テキスト生成:スクリプト・質問・親和性) │
│ ④ 出力テンプレート(Markdown形式で整形) │
└─────────────────────────────┘
💡 SYSTEMプロンプト(LLMに与えた指示文)
あなたは営業トーク支援の専門家です。
以下の企業ニュースをもとに、営業のオープニングで使える話題と会話例を提案してください。
【目的】
商談前のアイスブレイクで相手企業の最新情報に触れ、自然なキャッチボールを行う。
自社サービスとの親和性を自然に伝える。
【入力情報】
会社名:{{company_name}}
ニュースURL:
{{news_url1}}
{{news_url2}}
{{news_url3}}
【出力形式】
最新トピック3件
- 【要点】… |【出典】URL
- …
トークスクリプト例({{tone}}トーン)
- オープニング(30秒)
- 深掘り質問(3つ)
自社との親和性コメント(複数案)
最初のMVPが完成
最低限の機能が動く状態を「MVP」として完成させました。
入力フォームにメーカー名とニュースURLを入れると、
最新ニュースを取得し、以下のような出力が自動生成されます。
🧩 AI出力例(自動生成結果)
📰 最新ニュース
・相手企業が新商品を発表
・海外展開の強化
・研究開発の新プロジェクト開始
💬 トークスクリプト例
「こんにちは。最近の発表を拝見しましたが、御社の挑戦が本当に刺激的ですね。
この取り組みにはどんな反響がありましたか?」
❓ 深掘り質問
・今回の企画に込めた想いを教えてください。
・市場の反応はどうでしたか?
・今後注力されたい分野は?
🤝 親和性コメント
・御社の新たな挑戦に、当社の〇〇サービスが貢献できる可能性があります。
・共通する価値観として〇〇があると感じました。
次のステップへ
ここまでで「動くMVP」が完成。
次は、実際に営業担当に試してもらい、
**「どの出力が使えるか」「どこを改善すべきか」**をフィードバックしてもらう段階に入ります。
このプロトタイプは、まだ完璧ではありません。
ただ、たった数時間で“営業現場を動かす仮説”を形にできたことが、何よりの収穫でした。
現場にある「困りごと」を一つの問いに落とし込み、
AIとノーコードツールを組み合わせて解決策を試作する。
このサイクルを素早く回すことが、新しい事業や仕組みを前に進める大きな力になると実感しました。
次回は、営業メンバーからのフィードバックをもとに、
“より現場で使えるバージョン2”を開発していきます!
