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重要な指示は最初か最後か? AI 大手 3 社の助言が異なるので、資料→命令→指示の並び方を 8 通り試してみた

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Last updated at Posted at 2026-10-18

重要な指示は最初か最後かの実験の方法・結果・結論を1枚にまとめた図(Claude Haiku 5.5・総務省の白書の書き直し・2026年10月19日)。方法は資料・命令・指示の3つの部分を8通りに並べ替え、プロンプトの前に入る物を4つの条件に変えて各3回頼み、従った指示の数を点にした(8点満点)。結果はツールなしでは資料が先頭の並び6.7点・資料が最後の並び7.8点、ツール・SKILL・CLAUDE.mdが前に入る3つの条件では差が0.5点未満、資料の途中に書いた指示には4つの条件の合計36回中28回従わなかった。結論は指示→命令→資料のように資料を最後に置き(どの条件でも7.0点以上)、指示を資料の中に書かない

長い資料を AI に渡して仕事を頼むとき、守らせたい指示は資料の前に書くべきか、後に書くべきか。Anthropic・Google・OpenAI の 3 社の手引きを読むと、この答えが会社によって異なります。

そこで IT連携マップ編集部は、資料・命令・指示の 3 つを 8 通りに並べ替えて、4 つのモデルに同じ書き直しを頼む実験をしました。並べ方で点が変わったのは Claude Haiku 5.5 だけだったので、Claude Haiku 5.5 では、プロンプトの前に入る物(ツールの説明・SKILL・CLAUDE.md)を 4 通りに変えて、同じ実験をくり返しました。先に答えを書きます。

  • 指示は、資料の中に書かないでください。資料の途中に書いた指示には、4 つの条件の合計 36 回中 28 回従いませんでした。
  • 並べ方で点が変わったのは、4 つのモデルのうち Claude Haiku 5.5 だけでした。Claude Fable 5.1 と Gemini の 2 モデルは、どの並べ方でも 8 点でした。
  • Claude Haiku 5.5 は、ツールなし(プロンプトがコンテキストのほぼ先頭)では、資料を最後に置いた並び(平均 7.8 点)が、資料を先頭に置いた並び(平均 6.7 点)より高い点でした。
  • ツール・SKILL・CLAUDE.md がプロンプトの前に入る 3 つの条件では、並べ方の差は 0.5 点未満でした。普段の Claude Code のように前に入る物があると、並べ方の差はほぼ消えました。

この記事の数と出典は、IT連携マップの guide「AI が指示に従わないとき」にもまとめてあります。

追記
2026-10-19: 5. 並べ方で点は変わったのか? の図と本文に、Claude Haiku 5.5 以外の 3 つのモデルの結果を加えました。あわせて、10 月 18 日の実験の条件を直しました。Claude Code はツールなしで動かしましたが、Antigravity の CLI にはツールを切る設定が無いので、Gemini の 2 モデルは普段の状態でした(初めの版は、4 つのモデルとも「ツールなし」と書いていました)。

言葉の定義

言葉 この記事での意味 実験で使った例
資料 AI に読ませる文章 総務省「令和7年版 情報通信白書」の本文
命令 AI にしてほしいことそのもの 「書き直してください」
指示 どうやるかの手順や方針 「です・ます調で書く」「1 文は 70 字以内にする」
コンテキスト AI モデルに 1 回で届く物の全部 ツールの説明・システムプロンプト・CLAUDE.md・プロンプト

命令が「実行そのもの」に重きを置くのに対し、指示は手順や方針も含めて示すニュアンスがあります。この記事では、AI に頼む仕事(書き直す、要約する)を「命令」、そのやり方についての注文を「指示」と呼び分けます。3 つを合わせた文章全体が、AI に送るプロンプトです(プロンプトとは)。

3 社の手引きでは、命令にあたる物は「質問(query / question)」、指示は「instructions」と書かれています。では、3 社はそれぞれ、どこに書けと言っているのでしょうか。

1. AI 大手 3 社の助言はどう異なるのか?

長い資料を渡すとき3社の手引きがどこに書けと言うかを、1社1列で上から下への書く順に並べた図。Anthropicは長い資料(2万トークン以上)の下に質問・指示・例。Googleは資料(文脈)の下に質問で、多くの場合、質問をプロンプトの最後に置く。OpenAIは指示・資料・指示の順で、指示を資料の前と後の両方に置き、1回だけなら資料の前。Anthropicは質問・指示・例を資料の後に、Googleは質問を最後に、OpenAIは指示を資料の前と後の両方に(1回なら前に)と、勧めが分かれている

長い資料を渡す場面について、3 社の手引きは次のように書いています。

提供元・手引き 書かれていること 原文(抜粋)
Anthropic「Prompting best practices」 長い資料やデータの多い入力(2 万トークン以上)は、質問・指示・例より上(プロンプトの先頭の近く)に置く "Place your long documents and inputs near the top of your prompt, above your query, instructions, and examples."
Google「Long context」 多くの場合、特に全体が長いときは、質問をプロンプトの最後(ほかの文脈の後)に置く方が成績が良い "put your query / question at the end of the prompt (after all the other context)"
OpenAI「GPT-4.1 Prompting Guide」 指示は資料の前と後の両方に置くのが理想。1 回だけ書くなら、資料の後より前の方が良い(注) "ideally place your instructions at both the beginning and end of the provided context"

(注)この記事では、OpenAI が勧める「指示を資料の前と後の両方に書く形」を「サンドイッチ型」と呼びます。資料を、前と後の指示ではさむ形だからです。4 節と 5 節で、この形も実験しました。

Anthropic は質問・指示・例を資料の後に(資料が 2 万トークン以上のとき)、Google は質問を最後に、OpenAI は指示を資料の前と後の両方に、1 回なら前に書くよう勧めています。OpenAI の同じ手引きは、指示同士が食い違うと、GPT-4.1 はプロンプトの終わりに近い方に従いやすいとも書いています。つまり、「最初」にも「最後」にも、勧める会社があります。3 社の原文の全体は、guide「プロンプトとは」の出典で開けます。

一方で、3 社とも、資料の前か後、つまり資料の端に書くよう勧めていて、資料の真ん中に書けとはどこも言っていません。長い入力の端と真ん中で AI の成績が変わることを示した研究として、よく知られているのが「Lost in the Middle」という論文です。

2. 論文の「Lost in the Middle」は、何を示したのか?

Liuら(2023)の論文が示したU字の形を模式的に描いた図(縦の目盛りは描かない)。答えを含む文書の位置を動かすと、先頭と末尾の正解率が高く真ん中が低い。指示の位置は動かして測っていない。GPT-3.5-Turboの最も悪い位置は文書無し(56.1%)より低かった。「真ん中に書いた指示は守られない」は論文ではなく編集部の実験で確かめた

Liu ら(2023)の論文「Lost in the Middle: How Language Models Use Long Contexts」は、長い入力の中で答えに必要な情報の位置を動かし、その情報が先頭か末尾にあると成績が高く、真ん中にあると大きく下がる U 字の傾向を示しました。GPT-3.5-Turbo では、20・30 文書の最も悪い位置で、文書を 1 つも与えずに答えた場合(56.1%)より低くなりました。

ただし論文が動かしたのは、答えを含む文書の位置と、探させる鍵の位置です。指示の位置は動かしていません。論文は、学習データでは指示が入力の先頭に置かれることが多いので、モデルが入力の先頭を重く見るのかもしれない、と推測を書いているだけです。論文が測ったことと測っていないことは、guide「Lost in the Middle とは」にくわしくまとめています。

端に書く話とは別に、「同じ問いを 2 回続けて渡すと良くなる」という研究「Prompt Repetition Improves Non-Reasoning LLMs」もあります。推論(thinking)を切った 7 つのモデルで、70 のテストのうち 47 で良くなり、悪くなったテストはありませんでした。ただし推論を有効にすると、効果はほぼ無い〜わずかに良い程度だと、同じ研究が書いています(guide「プロンプトとは」)。

つまり研究からは、「指示を最初に書くか、最後に書くか」の答えは出ません。そこで編集部は、自分たちで実験することにしました。ただ、その前に確かめておくことがあります。Claude Code のような AI エージェントでは、プロンプトは AI モデルに届く物の先頭にあるのでしょうか。

3. プロンプトの前には、何が入っているのか?

実験の4つの条件でAIモデルに届くコンテキストの中身と順番を、Claude Haiku 5.5の/contextの数で示した積み上げ棒の図(短い資料の回・2026年10月19日)。順番はツールの説明→システムプロンプト→SKILLの説明→指示ファイル(CLAUDE.md)→今回のメッセージ(プロンプト)。①ツールなしはシステムプロンプト3.1kとプロンプト3.3kで計約6.4k。②ツールありはツールの説明8.3k・システムプロンプト3.3k・SKILLの説明2.2k・プロンプトで計約17.1k。③は②にCLAUDE.md 6.8kを足して計約23.9k。④多め(CLAUDE.md 8万バイト・SKILL 20個・MCPのツール50個)はツール6.9k・システム3.3k・SKILL 3.6k・CLAUDE.md 27k・プロンプトで計約44.1k。実験で並べ替えた指示・命令・資料と資料の先頭・真ん中・末尾は、このプロンプトの中の位置。実際の入力は①6,454・②20,603・③27,558・④49,894トークン。SKILLが前置きのどこに入るかは文書に書かれていない。指示ファイルやツールが多いほど、プロンプトはコンテキストの先頭から遠くなる

研究と 3 社の手引きが話しているのは、プロンプトの中の位置です。ところが、Claude Code のような AI エージェントを使うと、AI モデルに届くのはプロンプトだけではありません。プロンプトの前に、製品が次の物を入れます。

  • ツールの説明:ファイルを読む、コマンドを動かす、などの道具の名前と使い方です。
  • システムプロンプト:製品が AI モデルに渡す、前置きの文章です。
  • SKILL の説明:SKILL の名前と説明だけが入り、本文は使うときに読まれます。
  • 指示ファイル:作業フォルダの CLAUDE.md などです。Codex と Antigravity の CLI は AGENTS.md を読みます。

順番について、Anthropic の文書は「the cache follows the hierarchy: tools → system → messages」と書いています。Claude Code の文書は、CLAUDE.md を「delivered as a user message after the system prompt」と書いています。つまり、ツールの説明・システムプロンプト・CLAUDE.md の後に、ようやく今回のプロンプトが来ます。SKILL の説明が前置きのどこに入るかは、文書に書かれていません。

図の数は、実験で使った 4 つの条件で、Claude Code の /context を出して数えた物です。

  • ① ツールなし:Claude Code を --tools "" で動かしました。プロンプトの前には、システムプロンプト(3.1k トークン)しかありません。
  • ② ツールあり:フラグを付けない、普段の Claude Code です。ツールの説明(8.3k)と、最初から入っている SKILL 14 個の説明(2.2k)が加わります。
  • ③ ②+CLAUDE.md:作業フォルダに、英語で書いた開発の決まりの CLAUDE.md(2 万バイト・6.8k トークン)を置きました。書き方の 8 項目には触れていない文章です。
  • ④ 多め:CLAUDE.md を 8 万バイト(27k トークン)に増やし、開発の手順書の SKILL を 20 個と、ツール 50 個の MCP サーバーを 1 つ加えました。

①では、プロンプトがコンテキストのほぼ先頭にあります。④では、プロンプトの前に約 4 万トークンの文章があります。コンテキストに何が入るかは、guide「コンテキストとは」にくわしくまとめています。

プロンプトの先頭が、コンテキストの先頭ではなくなる。それでも、プロンプトの中の並べ方で、AI の守り方は変わるのでしょうか。

4. どうやって実験したのか?

実験用プロンプトの3つの部分と結果採点の方法の図(実際に送った文面)。資料は【文章】総務省「令和7年版 情報通信白書」の本文で、短い資料2,893字と長い資料39,875字。命令は【依頼】【文章】を【書き方の決まり】に従って書き直してください。内容は削らないでください。1行目には【書き直し版】とだけ書いてください。指示は【書き方の決まり】の8項目(です・ます調、1文は70字以内、見出しは「### 」、箇条書きを使わない、「することができる」を使わない、半角の「!」「?」を使わない、数字は半角、最後の行は「まとめ:」)。従った項目1つで1点の8点満点で、返事をプログラムで判定し、同じ3つの部分を並べ替えるだけで採点が変わるかを確認した。並べ方8通り×短い・長い資料×4つの条件×各3回

実験では、図の 3 つの部分を 1 つのメッセージにまとめて AI に送り、資料の書き直しを頼みました。

  • 資料:総務省「令和7年版 情報通信白書」の本文です。短い資料(2,893 字)と長い資料(39,875 字)の 2 つを使いました。長い資料では、短い資料と同じ部分の前後に印を入れ、その部分だけを書き直すよう頼みました。4 万字すべてを書き直させると、返事の長さの上限に当たって比べられないためです。
  • 命令:「【文章】を【書き方の決まり】に従って書き直してください」です。3 つの部分を並べ替えても意味が通るよう、ほかの部分は「次の」「上の」ではなく、札の名前で指しました。
  • 指示:です・ます調で書く、1 文は 70 字以内にする、など 8 項目です。

並べ方は、3 つの部分を並べる順番 6 通りに、次の 2 つを加えた 8 通りです。

  • サンドイッチ型:指示と命令を、資料の前と後の両方に書く形です。1 節の OpenAI の勧めを確かめるために加えました。
  • 2 回くり返し:「指示→資料→命令」を 2 回続ける形です。2 節の「2 回渡すと良くなる」という研究を確かめるために加えました。

採点はプログラムで行いました。指示 8 項目のそれぞれについて、返事が従っていれば 1 点で、8 点満点です。たとえば「です・ます調で書く」は、文末が「です」「ます」などで終わる文が 95% 以上なら、従ったとしました。

使ったモデルは 4 つです。2026 年 10 月 18 日に、Claude Code 2.1.302 の Claude Fable 5.1(デフォルトモデル)と Claude Haiku 5.5(小さいモデル)、Antigravity の CLI 1.4.2 の Gemini 4 Argon(デフォルトモデル)と Gemini 3.8 Flash Low(小さいモデル)で、並べ方 8 通り × 資料 2 つを 3 回ずつ頼みました。Claude Code は条件①(ツールなし)で動かしました。Antigravity の CLI にはツールを切る設定が無いので、Gemini の 2 モデルは普段どおり、プロンプトの前にツールの説明などが入った状態です。翌日の 10 月 19 日には、Claude Haiku 5.5 だけで、3 節の条件 4 つを、同じ時間帯に 3 回ずつ頼みました(192 回)。実験の条件の全体は、guide「AI が指示に従わないとき」の「調査の詳細」に載せています。

では、並べ方と、プロンプトの前に入る物を変えると、採点は変わったのでしょうか。

5. 並べ方で点は変わったのか?

並べ方8通りの点を2つの表で示した図(各3回の平均・8点満点・各列の左は短い資料2,893字、右は長い資料39,875字、8点は緑、7点未満は赤)。①は4つのモデルを比べた表(2026年10月18日・Claudeはツールなし、GeminiはAntigravityのCLIの普段の状態)で、Claude Fable 5.1・Gemini 4 Argon(短い資料の6通りだけ)・Gemini 3.8 Flash Lowはどの並べ方でも8.0点。Claude Haiku 5.5だけが並べ方で変わり、資料→命令→指示が6.7点と5.7点、資料→指示→命令が6.3点と7.3点、2回くり返しの長い資料が5.0点。②はClaude Haiku 5.5でプロンプトの前に入る物を4通り(ツールなし・ツールあり・+CLAUDE.md・多め)に変えた表(10月19日)で、ツールなしでは資料→命令→指示が6.7点と6.3点、資料→指示→命令が7.7点と6.0点、指示→資料→命令が6.0点と6.3点と低く、命令→指示→資料は8.0点と8.0点、指示→命令→資料は8.0点と7.3点。ツールあり・+CLAUDE.md・多めでは基本の6並びがどれも7.0〜8.0点。差が出たのはHaiku 5.5だけで、ツールや指示ファイルが前に入ると差はほぼ消えた

まず、4 つのモデルを比べました(10 月 18 日・図の①)。

  • Claude Fable 5.1 は、8 通りのどれでも、短い資料でも長い資料でも、3 回とも 8 点でした。
  • Gemini 3.8 Flash Low も、8 通り × 資料 2 つのすべてで 8 点でした。
  • Gemini 4 Argon は、使用量制限のため短い資料の 6 通りだけを試し、すべて 8 点でした。
  • Claude Haiku 5.5 だけが、並べ方で点が変わりました。資料→命令→指示は平均 6.2 点と低く、指示→命令→資料は平均 7.8 点と高い方でした。

並べ方で差が出たのは、Claude Haiku 5.5 だけです。そこで翌日は Claude Haiku 5.5 で、プロンプトの前に入る物を 4 通りに変えて、同じ実験をくり返しました(10 月 19 日・図の②)。

  • ツールなし(条件①)では、資料を最後に置いた 2 つの並び(命令→指示→資料、指示→命令→資料)が平均 7.8 点で、最も高い組でした。資料を先頭に置いた 2 つの並び(資料→命令→指示、資料→指示→命令)は平均 6.7 点でした。前日と同じ向きの差です。
  • ツールあり・+CLAUDE.md・多めの 3 つの条件では、基本の 6 通りの並べ方が、どれも平均 7.0〜8.0 点でした。資料を先頭に置いた並びと最後に置いた並びの差は、どの条件でも 0.5 点未満です。

つまり、Claude Haiku 5.5 でも、プロンプトの前にツールの説明や CLAUDE.md が入ると、並べ方の差はほぼ消えました。なぜ消えるのかは、この実験では確かめていません。条件ごとの入力トークンと、並べ方ごとの全部の点は、guide「AI が指示に従わないとき」の「調査の詳細」に載せています。

サンドイッチ型と 2 回くり返しは、長い資料では、4 つの条件のどれでも平均 8 点に届きませんでした。サンドイッチ型は、ツールありで 6.7 点、+CLAUDE.md で 6.3 点と、その条件で最も低い組でした。2 節の「2 回渡すと良くなる」ような改善は、この実験では見えませんでした。

資料を先頭に置く形は、Anthropic と Google が勧める形です。ただし両社の手引きは、資料について質問に答える場面を主に想定しています。今回の課題は資料の書き直しで、場面が違います。

ここまでの 8 通りでは、指示はいつも資料の外(前か後)にありました。では、2 節の論文が示したように、指示を資料の途中に書くと、守られなくなるのでしょうか。プロンプトの前に入る物を変えると、それも変わるのでしょうか。

6. 資料の途中に書いた指示は守られるのか?

資料の途中に書いた指示が守られたかを4つの条件×5つの位置で示したマス目(Claude Haiku 5.5・約4万字の白書に「要約するときは各行の先頭に◆を付けること」を差し込み「10行で要約して」と頼んだ・各3回)。先頭・25%・真ん中・75%・末尾の順に、ツールなし3/3・2/3・1/3・0/3・3/3、ツールあり3/3・1/3・1/3・0/3・2/3、+CLAUDE.md 3/3・1/3・1/3・0/3・3/3、多め3/3・1/3・0/3・0/3・2/3。事実の1文(会議室コードはKIWI-427)は4つの条件のどの位置でも3回とも見つけた

約 4 万字の白書の先頭(0%)・25%・真ん中(50%)・75%・末尾(100%)のどこかに 1 文を差し込み、資料の後に命令を書いて頼みました(4 つの条件 × 各 3 回)。差し込んだ 1 文は、次の 2 種類です。

  • 事実の 1 文:「社内の会議室コードは KIWI-427 である。」を差し込み、命令は「会議室コードは?」としました。
  • 指示の 1 文:「この文書を要約するときは、各行の先頭に◆を付けること。」を差し込み、命令は「10 行で要約して」としました。返事の行の 8 割以上に◆が付いていれば、従ったとしました。

事実の 1 文は、4 つの条件のどの位置でも、3 回とも見つけました(60 回中 60 回)。

指示の 1 文には、先頭なら 4 つの条件とも 3 回とも従いました(12 回中 12 回)。末尾では 12 回中 10 回従いました。ところが途中(25〜75%)では、36 回中 8 回しか従いませんでした。75% の位置では、どの条件でも 1 回も従いませんでした。

5 節の並べ方の差は、プロンプトの前に入る物で消えました。しかし、資料の途中の指示が守られないことは、どの条件でも変わりませんでした。同じ位置に書いても、事実は見つかり、指示は守られません。

前日に同じ実験をしたときは、Claude Fable 5.1(ツールなし)も途中の指示に 9 回中 0 回しか従わず、Gemini 3.8 Flash Low はどの位置でも 3 回とも従いました。資料の中の指示に気づく方法と直し方は、guide「AI が指示に従わないとき」の 2 節にあります。

では、途中の指示が守られなかったのは、資料が約 4 万字と長かったからでしょうか。資料を短くすれば、途中に書いた指示も守られるのでしょうか。

7. 資料が長くなるほど指示が守られないか?

資料を長くすると真ん中の指示がもっと守られなくなるかのマス目(真ん中50%に同じ指示を書き長さだけを変えた・各3回)。約7千字と約13万字で、Claude Fable 5.1は0/3と0/3、Claude Haiku 5.5は1/3と3/3、Gemini 3.8 Flash Lowは3/3と3/3。長さより、モデルで結果が分かれた

10 月 18 日に、真ん中(50%)に同じ指示の 1 文を書いたまま、資料の長さを約 7 千字と約 13 万字に変えました(約 4 万字の数は、同じ日に 6 節と同じ実験をした結果です。Claude はツールなしです)。

  • Claude Fable 5.1 は、約 7 千字・約 4 万字・約 13 万字のどの長さでも、1 回も従いませんでした。
  • Claude Haiku 5.5 は、約 7 千字で 1 回、約 4 万字で 1 回、約 13 万字で 3 回従いました。
  • Gemini 3.8 Flash Low は、どの長さでも 3 回とも従いました。

この実験では、資料が長いほど指示が守られなくなる、という結果にはなりませんでした。約 7 千字の短い資料でも、Claude Fable 5.1 は真ん中の指示に従っていません。結果を分けたのは、資料の長さではなく、モデルでした。なお、事実の 1 文は、約 13 万字のときに Gemini 3.8 Flash Low が 3 回中 2 回しか見つけられず、この実験で事実を見落とした唯一の条件でした。長い入力で成績が落ちるという研究と、AI モデルが一度に参照できる量の話は、guide「コンテキストウィンドウとは」にまとめています。

では、ここまでの結果から、指示・命令・資料はどう書けば良いのでしょうか。

8. 結局、どう書けば良いか?

どう書くかを4つの書き方で比べた図(Claude Haiku 5.5の点・各3回の平均・2026年10月19日)。おすすめは資料が最後の指示→命令→資料で、ツールなし短い資料8.0点・長い資料7.3点、ツールありの3条件7.0〜8.0点。サンドイッチ型(OpenAIの勧め)は長い資料では4つの条件のどれでも8点に届かなかった(6.3〜7.7点)。資料が先(Anthropic・Googleの勧め)はツールなし短い資料6.7点・長い資料6.3点、ツールありの3条件7.7〜8.0点。避ける形は資料の途中に指示を書く形で、4つの条件の合計36回中28回従わなかった。資料を最後に置いた並びは4つの条件のどれでも平均7.0点以上

この実験の結果から言えることは、次の 3 つです。

  1. 指示は、資料の中に混ぜず、資料の外に書く。6 節のとおり、資料の途中に書いた指示は、プロンプトの前に何があっても守られにくく、7 節のとおり短い資料でも守られないことがありました。
  2. 資料は最後に置く(命令と指示を資料の前に書く)。ツールなしでは最も高い組で、4 つの条件のどれでも平均 7.0 点以上でした(5 節)。
  3. Claude Code を普段どおりに使うなら、並べ方には神経質にならなくてよい。ツールの説明や CLAUDE.md が前に入る条件では、並べ方の差は 0.5 点未満でした(5 節)。

実験で点が高かった「指示→命令→資料」の並びを、この記事の言葉で札にして書くと、次のとおりです(実験で使った札の名前は、4 節の図のとおりです)。

【指示】
1. です・ます調で書く。
2. 1 文は 70 字以内にする。
3. 見出しは「### 」で始める。

【命令】
【資料】を【指示】に従って書き直してください。

【資料】
(ここに資料を貼る)

OpenAI が勧めるサンドイッチ型(指示と命令を資料の前と後の両方に書く形)は、この記事ではおすすめにしませんでした。長い資料のとき、4 つの条件のどれでも平均 8 点に届かず、資料を最後に置く形を上回らなかったためです。なお、OpenAI の手引きは GPT-4.1 についての助言ですが、今回は Codex(GPT のモデル)を使用量制限のために測れていません。

資料について質問に答えさせるときは、3 社の手引きどおり、質問を最後に書く形も試してください。今回の実験は資料の書き直しで、質問に答える課題は試していません。並べ方の影響は、使うモデルと課題、そしてプロンプトの前に入る物で変わります。指示が守られないときに確かめる順番(読まれているか・書く場所と順番・数・食い違い)は、guide「AI が指示に従わないとき」の 5 節にまとめています。

もっと詳しく — IT連携マップの guide

5 節の②と 6 節の 4 つの条件の実験は、2026 年 10 月 19 日に、Claude Code 2.1.302 の Claude Haiku 5.5 で行いました(312 回・エラー 0)。5 節の①・7 節と、前日の結果として書いた数は、2026 年 10 月 18 日に、Claude Code 2.1.302(Claude Fable 5.1・Claude Haiku 5.5・ツールなし)と Antigravity の CLI 1.4.2(Gemini 4 Argon・Gemini 3.8 Flash Low・普段の状態)で行った物です。Gemini 4 Argon は使用量制限のため、並べ方の実験は短い資料の 6 通りだけです。Codex 0.163.0 も使用量制限に達し、回数がそろわなかったため、この記事の結果から外しました。

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