2016年にIBMがはじめて量子コンピュータの実機をクラウドで一般公開してから6年が経ちました。2022年現在では、さまざまな企業が量子コンピュータをクラウドで公開しています。
また、2016年当時はクラウド提供者と実機の提供者は同一(IBMの例)でしたが、2022年現在ではクラウド提供者と実機の提供者が別々のケースも多くなりました。
多くの企業が量子コンピュータに取り組んでいるため、公開されているすべての量子コンピュータを把握するのは困難になっています。
そこで、この記事では、ある程度メジャーな量子コンピュータ・クラウドと、提供されている実機について紹介します。
本記事の内容は、2022年12月18日時点のものです。
実機の提供者や、量子ビット数などは日々増加しています。
クラウド・サービス名 | クラウドの提供者 | 実機の提供者 |
---|---|---|
Amazon Braket | AWS | IonQ, Oxford Quantum Circuits, QuEra, Rigetti, Xanadu |
Azure Quantum | Microsoft | IonQ, Pasqal, Quantinuum, "Quantum Circuits, Inc.", Rigetti |
Google Quantum Computing Service | Azure Quantum, Google, IonQ, Pasqal, Rigetti | |
IBM Quantum | IBM | IBM |
Xanadu Cloud | Xanadu | Xanadu |
※上記の表には、一般公開していない実機の提供者も含まれています。
Amazon Braket
クラウドのシェアNo.1であるAWSが提供する量子コンピュータ・クラウド。
AWSの他のサービスと連携しやすく作られているのも特徴です。
Amazonにも量子コンピュータの研究所がありますが、現時点では他の会社の実機を公開しています。
AWSのアカウントがあれば利用できます(実機の提供者との個別契約は不要です)。
実機の提供者は今後も増えていく思われます。
料金は、タスク数(量子回路のジョブ)とショット数(繰り返し回数)に依存します。
実機の提供者 | タイプ | 量子ビット数 |
---|---|---|
IonQ | イオントラップ | 11 |
Oxford Quantum Circuits | 超伝導 | 8 |
QuEra | 中性原子 | 256 |
Rigetti | 超伝導 | 80 |
Xanadu | 光 | 216(量子モード数) |
※QuEraの量子ビット数とXanaduの量子モード数が極端に多いですが、他と方式が違うため単純には比較できません。
Azure Quantum
Microsoftにも量子コンピュータの研究所がありますが、現時点では他の会社の実機を公開しています。
Azureのアカウントがあれば利用できます(実機の提供者との個別契約は不要です)。
実機の提供者は今後も増えていく思われます。少なくとも、PasqalとQuantum Circuits, Inc.の実機はいずれ公開されると思われます。
料金体系は実機により異なります。
実機の提供者 | タイプ | 量子ビット数 |
---|---|---|
IonQ | イオントラップ | 11, 23(2台) |
Quantinuum | イオントラップ | 12, 20(2台) |
Rigetti | 超伝導 | 80(2台) |
※Azure Quantumは数理最適化向けも提供していますが、そちらは記載していません。
※PasqalとQuantum Circuits, Inc.の実機へのアクセスは一般向けには公開していないため、記載していません。
Google Quantum Computing Service
実機の提供者のサービス毎に、ユーザが自分で契約する必要があります。
また、一般の方が契約するは敷居が高いと思われます。
現時点では、実質的にAzure Quantumの実機しか使えない?
実機の提供者 | タイプ | 量子ビット数 |
---|---|---|
Azure Quantum | 略 | 略 |
※GoogleからAzure Quantumの実機が使えます。タイプや量子ビット数は、Azure Quantumの所を参照してください。
※AQTが提供しているのは今のところシミュレータなので、記載していません。
※Google, IonQ, Pasqal, Rigettiの実機へのアクセスは一般向けには公開していないため、記載していません。
IBM Quantum
提供しているのはIBMの実機だけですが、少ない量子ビットなら無料で利用できるものも多いのが特徴です。
有料のものにも2種類あり、27量子ビットの料金は実行時間に依存します。
それ以上大きな量子ビット数の実機を使うには、IBMと特別な契約が必要です。
実機の提供者 | タイプ | 量子ビット数 |
---|---|---|
IBM | 超伝導 | 無料 5-7(6台) 有料 7-127(18台) |
Xanadu Cloud
現時点では少ない、光量子コンピュータを提供しています。
上限はありますが、Xanadu Cloudから無料で利用できます。
実機の提供者 | タイプ | 量子モード数 |
---|---|---|
Xanadu | 光 | 8, 216(2台) |
まとめ
特徴が異なるクラウドがいろいろありますが、ここに書いていないクラウドも数多くあります。
たとえば、スイッチサイエンスから発売されたデスクトップ量子コンピュータの製造元であるSpinQは超伝導量子コンピュータやNMR量子コンピュータをクラウド公開しています。
ただし、一般公開されていない(特別な契約が必要な)実機も多いですね。
Strangeworksのページを見るとこの記事には記載されていない提供者の実機にアクセスできますが、それには特別な契約が必要だったりします。
一般に公開される実機は今後増えていくと思うので、楽しみです。