【完全無料】GitHub ActionsをAIエージェントの実行環境に!Playwrightを使った自律型AIブラウザ開発の全ロードマップ
AIエージェント開発のコストとスケーラビリティに悩む、すべての開発者とプロダクトマネージャーに贈る、目から鱗の技術情報をお届けします。
🔑 この記事から得られる学びポイント
- コストゼロの実行環境: GitHub Actionsを、単なるCI/CDツールとしてではなく、AIエージェントの「無料」実行環境として活用する画期的なアイデア。
- スケーラブルな設計: 複数のGitHubリポジトリを並列ワーカーとして利用し、処理能力を柔軟に拡張するアーキテクチャ。
- 非同期処理の実装: リアルタイム性を犠牲にすることで、完全無料で非同期処理システムを構築する具体的な手法。
- クラウドサービスの連携: GitHub Actions、Gist、Firebase、GitHub Pagesなど、無料サービスを組み合わせた巧妙なシステム連携。
- 実践的なロードマップ: アイデアを具体的な実装に落とし込むための、詳細なフェーズ分けとステップバイステップの解説。
「自律型AIエージェントを開発したいが、ブラウザ操作を伴う処理の実行環境コストがネックになっている」「スケーラブルなAIシステムを構築したいが、複雑なインフラ管理は避けたい」――。そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、AIエージェント開発の最前線で共有された、驚くべきコスト削減とシステム設計のハック術を公開します。多くの開発者がテスト自動化に利用する「GitHub Actions」を、AIエージェントの実行基盤そのものとして活用。 さらに、複数の無料クラウドサービスを巧みに連携させることで、完全無料でスケーラブルな非同期処理システムを構築するという、常識を覆す開発ロードマップを詳細に解説します。
この記事を読めば、あなたのAIエージェント開発におけるコストとインフラの制約から解放される、新たな道筋が見えるはずです。
🎤 プレゼンター紹介
今回のスピーカーは、自律型AIエージェントの開発をリードする専門家**「タロ.AI」**です。常にコスト効率とスケーラビリティを追求し、実践的なソリューションを探求する彼らの知見は、多くの開発者にとって貴重な指針となるでしょう。
🎯 壮大な目標:無料でスケーラブルなAIエージェント実行基盤の構築
今回提案されたのは、ブラウザ自動操作ツール「Playwright」を活用したAIエージェントの実行環境を、完全に無料で構築するという野心的な計画です。その鍵となるのが、CI/CDツールとして広く知られる「GitHub Actions」の活用です。リアルタイム性は求めず、非同期処理に特化することで、クラウドサーバーの契約なしにシステムを運用する道筋が示されました。
タロ.AIからのご提案
playwright を活用したAIブラウザを開発中です。playwrightを使うので、無料でテストするクラウドサーバがなかなか見当たらなかった。
しかし、github actions を活用すれば、無料でテスト環境をクラウドに構築できると知りました。
この際、リアルタイム性は犠牲にしてでも、この仕組みを活用して完全無料でテストだけでなくシステムの実行までを実装できるロードマップができました。
このセクションでは、その壮大な開発ロードマップを3つのフェーズに分けて、ステップバイステップで解き明かしていきます。
🚀 フェーズ1:単一ワーカーの完成 - まずは基本の型を作る
このフェーズの目的は、システムの中核となる「ワーカー」の基本機能を、単一のGitHubリポジトリで完結させることです。ユーザーからのリクエストを受け取り、処理を実行し、結果を返すまでの一連の流れを確立します。
ステップ1.1: GitHub Actionsによる処理の自動化
まず、AIエージェントのプログラムを格納する非公開のGitHubリポジトリ (ai-browser-app1) を作成します。そして、このリポジトリにコードがPushされることをトリガーとして、メインのPythonスクリプト (main.py) を自動実行するワークフローを設定します。
【💡かんたん解説】
- Playwright: Microsoftが開発したブラウザ自動化ツール。Webサイトの操作やテストをコードで実行できます。
- GitHub Actions: GitHub上でコードのビルド、テスト、デプロイなどのタスクを自動化できるサービス。今回はこれをAIの実行環境として利用します。
ステップ1.2: Gistを使った結果の受け渡し
次に、処理結果を安全かつ簡単に受け渡す仕組みを構築します。ここで活用するのが「GitHub Gist」です。
- Secret Gistの作成: 外部からアクセスできない、結果保存用のGistを作成します。
- アクセストークンの設定: Gistを更新する権限を持ったアクセストークンを生成し、リポジトリのSecretsに登録します。
- ワークフローの更新: GitHub Actionsのワークフローに、スクリプトの実行結果をGistに書き込む処理を追加します。
これで、Pushをトリガーに処理が実行され、その結果が特定のGistに自動で保存されるという、単一ワーカーの基本動作が完成します。
【💡かんたん解説】
- GitHub Gist: コードの断片(スニペット)を共有・保存できるGitHubのサービス。API経由で読み書きも可能です。
- Secrets: パスワードやアクセストークンなど、機密情報を安全にリポジトリに保存するための機能です。
📡 フェーズ2:司令塔(バックエンドAPI)の構築 - システムの頭脳を設計する
単一ワーカーが完成したら、次はそのワーカーたちを束ね、効率的にジョブを割り振る「司令塔」を構築します。この司令塔は、Web UIからのリクエストを受け付け、待機中のワーカーに処理を依頼し、結果をUIに返す役割を担います。
(ここに司令塔(API)と複数のワーカー(GitHub Actions)が連携するアーキテクチャ図を入れると、さらに理解が深まります)
ステップ2.0: ワーカーの状態を管理するDBの準備
複数のワーカーの状態(待機中か、処理中か)を一元管理するために、無料のKey-Valueストア(KVS)を導入します。
- 選択肢: Firebase Realtime DatabaseやUpstash Redisなどが候補に挙がります。これらはリアルタイム性が高く、無料プランでも十分に活用できます。
-
データ構造:
{"worker": "ai-browser-app1", "status": "idle"}のようなシンプルなJSON形式で各ワーカーの状態を管理します。
【💡かんたん解説】
- Firebase Realtime Database: Googleが提供するNoSQLクラウドデータベース。データが変更されると、接続中のクライアントにリアルタイムで同期されます。
- Upstash Redis: サーバーレス環境に特化したRedisのマネージドサービス。低遅延でスケーラブルなのが特徴です。
ステップ2.1: 司令塔となる3つのAPIを実装
Google Cloud FunctionsやVercelなどのサーバーレス環境に、以下の3つの機能を持つAPIを実装します。
-
/start-job:- DBをチェックし、
idle(待機中)のワーカーを探します。 - 見つけたら、そのワーカーの状態を
busy(処理中)に更新。 - ユーザーの指示を、選んだワーカーのリポジトリに書き込んでPushします(これが処理開始のトリガー!)。
- UIには、担当ワーカー名を返します。
- DBをチェックし、
-
/get-result:- UIからワーカー名を受け取り、対応するGistを読み込んで内容を返します。
-
/job-complete:- ワーカーからの完了通知を受け、DB上のワーカーの状態を
idleに戻します。
- ワーカーからの完了通知を受け、DB上のワーカーの状態を
【💡かんたん解説】
- サーバーレスAPI: サーバーの管理を意識することなく、コードを実行できるAPIのこと。リクエストに応じて自動でスケールし、使った分だけ課金されるため効率的です。
ステップ2.2: ワーカーからの完了通知
ワーカー(GitHub Actions)は、処理が完了したら自ら司令塔に「終わりました!」と報告する必要があります。ワークフローの最後のステップに、/job-complete APIを呼び出す処理を追加します。これにより、司令塔はワーカーが次の仕事を受けられる状態になったことを把握できます。
🌐 フェーズ3:UIの構築とワーカーの増設 - システムを完成させ、スケールさせる
最後に、ユーザーが実際に操作するフロントエンド(UI)を構築し、システム全体を結合します。そして、このアーキテクチャの真骨頂である「ワーカーの増設」を行い、並列処理能力を向上させます。
ステップ3.0: Web UIの構築とデプロイ
ユーザーがAIエージェントに指示を出し、結果を確認するためのシンプルなWeb UIを作成します。
-
UIロジック:
- ユーザーが指示を入力し「送信」すると、
/start-jobAPIを呼び出します。 - APIから返されたワーカー名を元に、数秒おきに
/get-resultAPIを呼び出し(ポーリング)、結果がGistに書き込まれるのを待ちます。 - 結果が取得できたら、画面に表示します。
- ユーザーが指示を入力し「送信」すると、
- デプロイ: 完成したUI(HTML/JS/CSS)は、GitHub Pages を使って無料で公開します。
【💡かんたん解説】
- GitHub Pages: GitHubリポジトリ内のHTML、CSS、JavaScriptファイルから、静的なWebサイトを無料でホスティングできるサービスです。
ステップ3.1: ワーカーの増設によるスケールアウト
システムの処理能力を上げたくなった場合、やることは非常にシンプルです。
-
ai-browser-app1リポジトリを複製して、ai-browser-app2,ai-browser-app3... を作成します。 - 新しいリポジトリごとに、専用のGistを作成し、Secretを設定します。
- 司令塔のDBに、新しいワーカーを追加登録します。
たったこれだけで、システムは複数のリクエストを異なるワーカーに割り振り、並行して処理を実行できるようになります。これこそが、このアーキテクチャが持つ最大の強みです。
✅ まとめ:学びを次に繋げる
今回のロードマップは、単なる技術的な挑戦に留まらず、AIエージェント開発におけるコストとスケーラビリティの問題に対する、非常に創造的な解決策を提示しています。
今回の学びのポイント
- 発想の転換: GitHub Actionsはテストツールではなく、無料の非同期処理基盤として利用できる。
- 疎結合アーキテクチャ: 「司令塔(API)」と「ワーカー(Actions)」を分離し、GistとDBを介して連携させることで、柔軟でスケールしやすいシステムが実現できる。
- 無料サービスの徹底活用: GitHub、Firebase、Vercelなど、既存の強力な無料サービスを組み合わせることで、コストをかけずに高度なシステムを構築可能である。
- 非同期処理の価値: リアルタイム性を要求しないタスクであれば、非同期処理に割り切ることでインフラコストを劇的に削減できる。
🚀 明日からできるアクション
- 身近な自動化から試す: まずは自分のGitHubリポジトリで、簡単なスクリプトをGitHub Actionsで定期実行させてみましょう。例えば「毎日Webサイトをクローリングして情報をGistに保存する」など、小さな成功体験を積むことが次への一歩です。
- 無料BaaSに触れてみる: FirebaseやUpstashなどの無料枠があるBaaS(Backend as a Service)に登録し、簡単なデータを保存・取得するAPIを作ってみましょう。サーバーレスの世界を手軽に体験できます。
AIエージェント開発の可能性は、あなたのアイデアと工夫次第で無限に広がります。今回の記事が、その新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。