多くの企業でDXの必要性が叫ばれながらも、「何から手をつけていいかわからない」「結局何も変わらない」という状況に陥りがちです。本記事では、DX推進が停滞している企業が、確実な成果と勢いをつけるための具体的なステップを解説します。
1. そもそもDXは2種類に分けて考える
DXを一括りにするのではなく、その性質を二つに分類し、最初に取り組むべき領域を明確にします。
| DXの分類 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| 新規企画DX | 新しいデジタル技術を活用し、既存のビジネスモデル自体を変革したり、新規事業を創出したりすること |
難易度 高い 効果 爆発的 リスク 大きい 期間 長い |
| 業務改善DX | 既存業務プロセスにおけるムダを特定し、デジタル技術（ツール）を活用して効率化・自動化すること |
難易度 低い 効果 着実 リスク 小さい 期間 短い |
DXが進んでいない企業は、まず 成功体験を作りやすい「業務改善DX」 から推進し、組織の意識変革と土台作りを行うことが最も効果的です。
2. 失敗を避けるための大原則 ツールありきで考えない
DX推進における最大の失敗パターンは、「〇〇という最新ツールを導入した。さあ、これで何をしようか」 と、目的と手段が逆転してしまうことです。
重要なのは、「現場の抱える本質的な課題は何か」「業務上のボトルネックはどこか」を徹底的に洗い出すことです。ツールは、その課題を解決するための道具に過ぎません。まずは課題を特定する課題（目的）が先の姿勢を貫きます。
3. まずはみんなの目標を一つに設定する
業務改善DXを成功させるには、現場全体で目指す方向性を合わせる必要があります。抽象的な目標ではなく、具体的で計測可能な、既存業務の改善に目標を集中させます。
例えば、「〇〇業務の作業時間を50%削減する」といった目標です。この目標は、現場の誰もがメリットを感じやすく、DXに対する「やらされ感」ではなく、「自分ごと」 としての参画意識を生み出します。
4. 成功に導くための最強チーム編成
目標を実行に移すチームのメンバー選定は成功の鍵です。以下の要素を持つ人材でチームを結成したいです。
| チーム構成要素 | 役割と選定のポイント | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 若手メンバー | 新しいデジタル技術や変化に対する抵抗が少なく、柔軟な発想ができる人 | 既成概念にとらわれない改善案、スピード感の向上 |
| 業務を深く知っている人 | 業務のムダ・慣習・例外パターンを熟知している現場のキーパーソン | 真のボトルネックの特定、現場の協力体制構築 |
| ITに詳しい人（企画・理解層） | 業務改善のアイデアに対し、「どのようなデジタル技術で実現可能か」 を判断し、ツール選定の橋渡しができる人 | 実現性の担保、適切な技術選定 |
| プログラマ的なスキルを持つ人（開発・実装層） | 社内で簡易的な自動化（RPA、ローコードツールなど）を実際に構築・実装できるスキルを持つ人 | 内製化によるコスト削減、改善サイクルの迅速化 |
特にITスキルを持つ人材を「企画・理解層」と「開発・実装層」の2種類で確保できると、スモールスタートの内製化体制が整い、推進力が格段に向上します。
DXを停滞から推進へと転換させるためには、まず「業務改善DX」で確実に小さな成功を積み上げ、組織全体のデジタルに対するマインドセットとスキルを高めることが重要です。