はじめに
この記事では、NURO光の標準ONU(光回線終端装置)の前段に高性能なWi-Fiルーター(TP-Link Archer AX80)を追加して、自宅のWi-Fi環境を改善した際の作業記録をまとめています。
この構成に変更することで、以下のようなメリットがありました。
- セキュリティの向上: 最新の暗号化規格であるWPA3が利用可能になる
- 通信速度と安定性の向上: Wi-Fi6に対応し、より高速で安定した通信が実現する
- 接続管理の簡素化: 2.4GHzと5.0GHzのSSIDを共通化できる
環境情報
今回の構成で中心となる機器は以下の通りです。
| 役割 | メーカー/提供元 | 型番 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ONU | NURO光 | SGP200W | ルーター機能付き |
| Wi-Fiルーター | TP-Link | Archer AX80 | アクセスポイントとして利用 |
接続に関する構成
全体の接続構成は以下の図のようになります。
各機器の設定概要
ONUの前段にWi-Fiルーターを接続しただけでは、Wi-Fiのアクセスポイントが多重に提供されるなど、非常に不安定になります。そこで各機器で適切な設定をして、無線LANがWi-Fiルーターから安定して提供される状態にします。
本記事では、次のように設定します。
- Wi-Fiルーター(Archer AX80)
- 動作モードをアクセスポイントモードに変更
- DHCPを無効にする
- ルーターのIPアドレスを固定にする
- ONU(SGP200W)
- 無線LANを無効にする
- DHCPを有効にする(デフォルトのまま)
- DHCPで利用するIPアドレスを適切な範囲に変更
各機能の有効/無効の観点で表にしたのが以下です。
| 機能 | ONU | Wi-Fiルーター |
|---|---|---|
| ルーター | On | Off |
| DHCP | On | Off |
| 無線LAN | Off | On |
要するに、ネットワークの制御(ルーティングやDHCP)はONUに集約し、Wi-Fiルーターは無線アクセスポイントとしてのみ動作させる構成にします。
以後、各機器の設定方法について具体的に説明します。
設定
Wi-Fiルーター(Archer AX80)
セットアップ
以下のページからリンクされている取扱説明書をご覧ください。セットアップは、スマートフォンにTetherアプリをインストールすること実現可能になります。
以後の設定は、本記事ではArcher AX80のWeb管理ページにアクセスして行います。このページには、初期状態だと http://tplinkwifi.net でアクセスできるようです。万が一つながらない場合、取扱説明書には 「http://192.168.0.1 または http://192.168.1.1」 ににアクセスするよう案内されていますが、ネットワーク構成によってはこれら以外のIPアドレスが割り当てられている場合もあります。無線LAN経由でどうしても管理画面にアクセスできない場合は、ノートPCなどをLANケーブルでルーターに直接接続し、ネットワーク設定を確認することで管理ページのアドレスを特定できます。
以後、Wi-Fiルーターでデフォルトから変更が必要な設定について説明します。
動作モードをアクセスポイントモードに変更
セットアップ完了後に、ルーターの動作モードをデフォルトの「Wi-Fiルーターモード」から「アクセスポイントモード」に変更する必要があります。理由は、前段のONUに既にルーターが搭載されており、今回追加するWi-Fiルーターでルーター機能を有効にすると「二重ルーター」と呼ばれる状態になり、通信が不安定になってしまう可能性があるためです。そこで、「アクセスポイントモード」でルーター機能を無効化して、Wi-Fiのアクセスポイントのみが提供される状態にします。
※ Archer AX80ではアクセスポイントモードと呼んでいますが、他のWi-Fiルーターでは「APモード」とか「ブリッジモード」と呼ばれる場合もあるのでご注意ください。
DHCPサーバーを無効にする
ルーター機能を無効にしたので、クライアントへのIPアドレス割当も行うDHCPもサーバーも無効にします。最初の概要で少し触れましたが、DHCPサーバーはONUからのみ提供される状態にするためです。
Wi-FiルーターのIPアドレスを固定にする
必須ではないですが、本記事では以下のように、Wi-FiルーターのIPアドレスを 192.168.1.2 で固定にします。尚、「デフォルトゲートウェイ」と「プライマリDNS」に記載している 192.168.1.1 はONUのIPアドレスを表します。
ちなみにLinuxが使える場合は、digコマンドなどで tplinkwifi.net が名前解決されるIPアドレスを以下のように確認可能です。
$ dig +short tplinkwifi.net
192.168.1.2
tplinkwifi.net がWi-FiルーターのIPアドレス 192.168.1.2 で名前解決されているので、http://tplinkwifi.net でWeb管理画面にアクセス可能であることがわかります。
ONU(SGP200W)
管理ページにログイン
Webブラウザで、http://192.168.1.1にアクセスすると管理ページのログイン画面が表示されるはずです。ユーザー名はadmin、パスワードはWi-Fiのアクセスキーを入力します。
詳細は、以下の取扱説明書をご覧ください。
※ 192.168.1.1 はONUのデフォルトのIPアドレスです。もし変更している場合はそのIPアドレスを入力してください。
無線LANを無効にする
無線LANのアクセスポイントはWi-Fiルーターが担当するので、ONUでは無効にします。Web管理ページの以下の図のメニューで表示される設定で、2.4Gおよび5Gの「WLANの有効化」のチェックを外します。
DHCPを有効にして、IPアドレスを適切な範囲に変更
IPアドレス管理はルーター機能を提供するONUで行いたいので、Web管理ページでDHCPが有効になっていることを確認します。その後、IPアドレスの範囲を適切な値に変更します。
上の設定例では 192.168.1.2〜192.168.1.4 の範囲を固定IPアドレスとして使う可能性があることを考慮して、IPアドレスの開始を 192.168.1.5 からに設定しています。
このように DHCP の配布範囲を調整することで、DHCP の自動割り当てと固定 IP アドレスを併用できます。また、本機には「DHCPスタティック設定」というメニューも用意されているので、こちらを使えばDHCPの配布範囲内のIPアドレスを特定の機器に固定的に割り当てることもできるはずです。
まとめ
以上の設定を行い、自宅のネットワーク環境がより安全かつ快適になりました。
ネットワークの知識が中途半端な私は本記事の内容を実現するのにかなり苦労しましたが、調査や試行錯誤を繰り返してようやく達成できました。自分が次に同じことをやる際の備忘のため、また皆さまが似たようなことで行き詰まらないために本記事を書きました。お役に立てれば幸いです。






