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生成AI活用の全体構造と効率的な進め方

Last updated at Posted at 2025-12-11

はじめに

アジアクエスト 営業部の大浦です。
営業の中でさまざまな企業と会話する中で、AIをテーマに取り組む組織が非常に増えていると感じています。
一方で、多くの企業がAI活用に着手する際、最初の議論で共通する悩みに直面します。

  • 着手点:どこから手をつければいいのか分からない
  • 優先順位:データ整備を先にするべきか、まずはAIを動かしてみるべきか判断しづらい
  • スピード感:とりあえずAIのアウトプットを早めに確認したい

これらの感覚はとても自然です。どんな価値が出せるのかを具体的に掴めると、社内の理解が進み、意思決定が加速するためです。
ただし「早く成果を見たい」という期待だけで進めてしまうと、AI活用の本質的な構造が見えなくなり、結果として遠回りになることも珍しくありません。

AI活用には、成功確率を高めるための 「構造」と「推進手順」 が存在します。ここを理解しておくことが、最短距離で価値を生み出すための鍵になります。

1. AI活用は「4つのプロセスの循環」で成り立つ

AI活用は、「作って終わり」ではなく、以下の4つのプロセスが連続して循環する構造で成り立っています。
image.png

  1. 収集:システム上の書類、現場のセンサー、カメラ、マイクなど、多様なデータソースから情報を集める
  2. 蓄積:データをただ溜めるだけでなく、AIが理解・検索しやすい形(構造化・ベクトル化)へ変換する
  3. 活用:検索技術と生成AI(LLM)を組み合わせて、回答・判断・説明を行う
  4. 改善:人間によるフィードバックを得て、データ・ロジック・プロンプトを更新する

特に重要なのは、活用の精度を高めるためには、その手前にある 「データの整形」 が欠かせないという点です。

2. データ整備と活用は「どちらが先か」ではなく「目的から逆算する」

「全てのデータを綺麗にしてからAIを入れるべきか」「まずはAIを動かすべきか」という議論になりがちですが、これは二者択一ではありません。
正解は 「やりたいこと(ユースケース)に必要な分だけ整備する」 です。

目的が曖昧なままデータ整備を始めても、ゴールが見えずコストばかりかかります。
逆にユースケースが決まれば、整備すべきデータの範囲と品質が定まります。

3. 技術的な要点:生成AI(LLM)とプログラムの役割分担

図の右側「活用」部分にある通り、失敗しないためのポイントは 生成AI(LLM)に全てを任せないこと です。
image.png

生成AIは「曖昧な判断」や「自然な説明」は得意ですが、厳密なルールを守るのは苦手な場合があります。
そのため、以下のような使い分けが重要です。

プログラム(明確なロジック)

  • 業務ルール
  • 条件分岐
  • 正確な計算

これらの「決まった手順」は生成AIに任せず、プログラムで実装することで確実性を担保します。

生成AI(LLM)

  • 文脈の読み取り
  • 要約
  • 柔軟な説明

この「人間的な対応」が必要な部分をAIが担います。

境界線を設計し、どこをルールで守るか明確にすることで、業務に耐えうる安定性が生まれます。

4. 「評価」のない改善はうまくいかない

右側に示した「改善」のプロセスは、AI活用が持続的に機能するための要となります。
image.png

精度向上には、 単発の修正ではなく、人間の評価を継続的に取り込むことが欠かせません。

  • 検索結果に適切なドキュメントが含まれていたか
  • 生成AIの回答や判断は適切だったか

これらを評価し、データや指示を更新し続けることで、AIは組織の業務に合わせて賢くなっていきます。

5. ビジネスインパクトと実現難易度のバランスで決める

では、具体的に何から始めるべきでしょうか。
ここで重要なのは、「インパクト(効果)」と「難易度」 のバランスです。

「難易度が高い=価値が高い」とは限らない

左側の図にもある通り、データによって扱いの難易度は異なります。
image.png

  • テキスト(難易度:低)
    扱いやすいデータですが、業務情報の8割はテキストとも言われています。
    検索効率が上がるだけで巨大なインパクトを生むケースが多いです。

  • 図面・動画(難易度:高)
    解析にはコストがかかります。
    そのコストに見合うだけのリターンがあるか慎重に見極める必要があります。

結論:バランスの良い「スイートスポット」から始める

最初の一歩として最適なのは、
「実現しやすく、かつ効果も十分見込める」領域 です。

いきなり難易度の高いテーマに挑むと長期化しやすく、かといって簡単すぎて効果が薄いものを選ぶことも避けるべきです。

自社のデータ状況と課題を踏まえ、
「最も確実に成果が出しやすいバランスの良いユースケース」
に絞ってスタートし、そこから徐々に範囲を広げていくアプローチが望ましいといえます。

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