はじめに
LITLAICOの岸本です。2021年にLITALICOに中途入社し、直近2023年の10月にアシスタントマネージャーに任命されました。
普段は、働くことに障害のある方の就職支援サイト「LITALICO仕事ナビ」に携わっています。
この記事は『LITALICO Advent Calendar 2023』の24日目の記事になります。
さて、この記事が公開されるのは2023/12/24。もうすぐ2023年も終わりです。早いものですね。
年末年始は皆さまの多くが休暇に入ると思います。2024年は何しようかな…と立ち止まって考えるのによい機会です。『1年の計は元旦にあり』とも言いますね。
しかし、「目標」には「三日坊主」がつきものです。
目標を立てる→三日坊主になる…を繰り返し、目標設定自体にネガティブな感情を抱いてしまうことも多いのではないでしょうか。
ということで今回は、目標が三日坊主になりがちな理由と、有意な目標設定を行うにはどうすればよいかというテーマで自分なりの考えをまとめてみます。
予防線
目標設定という壮大なテーマで記事を書くのは結構かなり緊張するので、予防線を張りたいと思います。
この記事において「〇〇すべき」とか「〇〇が必要」とか書きますが、その裏には「人によって異なるだろうし例外もあるけど僕は~と思います」とか「多くの場合~だろう」といったニュアンスが含まれているのでご了承ください。いちいち補足していたら文章が冗長になるので、この表明で代えさせていただきます。
さて、次から本題です。
1. なぜ目標設定は難しいのか
某有名漫画の主人公のように、「海賊王に!!!!、おれはなるっ!!!!」と目標を掲げ努力し続けられれば良いのですが、みんながみんなそうではないでしょう。
実際のところ、目標を立てようと思っても、何から始めればいいのか分からないことって多いですよね。
考えても考えてもピンとこなくて、結局「まあいいか」と適当に何か書き留める。そして、そのメモはそのまま忘れ去られ、気づけばもう年の終わり…なんてこと、よくある話だと思います。
残念なことに、そもそも目標設定は難しいのです。なぜ難しいのか?僕が思うその理由を次に2つ挙げます。
理由1: 目標を立てる前に調査や整理が必要である
目標設定をする際に、「う~ん、今年は何やろうかなぁ。やりたいことは何かなぁ…」とただ自問自答する時間を過ごしてはいませんか?僕はそうでした。
目標設定にあたり、最初から目標を立てようとしてはいけません。目標は独りでに湧き出てくるものではないからです。
目標とは「自分」と「それ以外のなにか」との関係性の間に作るものです。
例えば、海賊王になるという目標は、その世界に海賊があってこそ成り立ちます。
そして『目標とは「自分」と「それ以外のなにか」との関係性の中で作るもの』ということは、「自分」と「それ以外のなにか」のそれぞれについて良く知っていなければ、優れた目標は立てられません。
目標設定は、自分自身と膨大な「自分以外のなにか」とについてじっくり調査・整理した上で行う必要があると言えます。
理由2: 目標設定においては、自分自身を説得する必要がある
目標設定とは、自分自身を論理的・情緒的に説得するプロセスだと言えると思います。
逆に、このプロセスを経ていない目標は脆弱です。「よーし、今年はギターを弾きまくって上手くなるぞ!」などと刹那的な情熱と勢いだけで立てた目標は「やっぱいいや」の一言で崩れ落ちます。
n日後の自分は今日の自分ではありません。自分自身が納得するアプローチで自分で自分を説得し、達成されるまで自分に頑張ってもらえるような目標を設定しましょう。
その際には「理由1: 目標を立てる前に調査や整理が必要」セクションで得た情報や整理がきっと役に立ちます。背景情報をもとに、目標が当然達成されなければならないと感じられるものになれば、その後に活きる良い目標設定ができたと言えると思います。
未来の自分に「やっぱいいや」と言わせないような目標を立てましょう。
2. 有意な目標設定を行うためのアイデア
目標設定の難しさを共有したところで、それを乗り越えて有意な目標設定を行うための僕なりのアイデアを2つご紹介します。
合う合わないが人によって大きく異なるとは思いますが、どなたかの参考になれば幸いです。
ここまでは個人の目標設定を全般的に想定して記述してきました。
ここからは会社など所属組織における個人の目標設定を想定します。
アイデア1: 目標を立てる前の調査・整理 → 「Will・Can・Must」フレームワークを利用する
目標を立てる前の調査・整理のためには、有名な自己分析フレームワークである「Will・Can・Must」を利用するのが個人的には好みです。(というか、記事執筆ドリブンで自身の目標設定について内省していたら、「Will・Can・Must」にほぼ当てはまる事に気がつきました。)
僕は、このフレームワークを用いて現状分析をすることで自分が立てるべき目標候補がクリアに見えてくると考えます。
「Will・Can・Must」フレームワークはそのシンプルさ故か多くの異なる解釈や利用法がネット上で見られます。この記事も例に漏れず「僕なりの解釈・利用法」が含まれますのでご了承ください
具体的には「Must」について、会社における個人の目標設定を想定して「組織での使命」という意味を持たせているなど。
Will・Can・Mustフレームワークとは
Will・Can・Mustフレームワークとは、次のステップで自身や所属組織、それぞれの関係性の現状を理解するためのフレームワークです。
※ Will・Can・Mustで自己分析をする詳細なプロセスは他の記事等を参照ください
- 「自分の意志」「自分の能力」「組織での(自分の)使命」それぞれを洗い出す
- 洗い出した3つのそれぞれを比較し、互いに重なり合っている要素を探す
「自分の意志」「自分の能力」「組織での(自分の)使命」が重なり合っている部分はおそらく、「自分にとっても組織にとっても嬉しい仕事が出来ている」と言えるでしょう。
Will・Can・Mustによって目標を立てる前準備を完了させよう
「1. なぜ目標設定は難しいのか」の「理由1: 目標を立てる前に調査や整理が必要である」のセクションで、次の2点を述べました。
- 目標とは「自分」と「それ以外のなにか」との関係性の中で作るものである
- 目標設定は、自分自身と膨大な「自分以外のなにか」とについてじっくり調査・整理した上で行う必要がある
Will・Can・Mustによる自己分析を行うと、上記2点が解消できると僕は考えています。
なぜなら「自分」と「それ以外のなにか」について、このフレームワークに則ると次のように表現できるためです。
- 「自分」は「自分の意志」と「自分の能力」に分割できる
- 「それ以外のなにか」は「所属組織」と設定できる(「開発プロダクト」とか観点によっては色々あるとは思います)
「それ以外のなにか」とまどろっこしい表現をしていたのは、個人の目標設定を全般的に想定した記載だったからでした。
所属組織における個人の目標設定を想定すると、これは必然的に「組織」に設定されます。
Will・Can・Mustの詳細なプロセス案の紹介は他の記事やメディアに譲りますが、次のセクションで紹介するように、この結果を元に具体的な目標を検討するためココが肝です。直近の自分の活動を振り返ったり、様々な観点から自身や組織(プロダクトなど含む)について評価したり、やってもやり切れない部分ですが時間と気合の許す限りやりましょう。
以下簡単に、観点の例を紹介します。
- 「自分の意志」を洗い出すに当たっての観点例
- 就職活動を行っていた頃に描いていたキャリアプランは何だったか?
- 当時の考えから変化はあるか?
- 自分のプライベートの状況や展望・願望はなにか?
- プライベートの願望を叶えるために、キャリアで実現すべきことはあるか?
- 仕事していて充実感を得られるタイミングはいつか?それはなぜか?
- 就職活動を行っていた頃に描いていたキャリアプランは何だったか?
- 「自分の能力」を洗い出すに当たっての観点例
- 所属組織の評価指標と比較してどうか?
- Developer Roadmapsと自分のスキルセットを比較してどうか?
- 直近の業務を振り返ってどうか?
- よくできた点はなにか?
- あまりできなかった点や、生んでしまったミスはあるか?
- 他のメンバーや上長などから称賛されたものはあるか?
- 「組織での使命」を洗い出すに当たっての観点例
- 所属組織の評価指標はどのようなものか?
- 上長やメンバーから明示的・暗示的に期待されていることは何だと認識しているか?
- 直近の認識できている課題はなにか?
- チームで
- プロダクトで
- チームで顕在化していないが、実は薄々思っている問題はあるか?
- 直近で組織やプロダクトに変化があるか?
- あれば、それは業務や方針にどのような変化をもたらしそうか?
このように、いくつかの観点から改めて自分や周りについて調査・整理することで、単に目標設定に役立つという以上の気付きや学びを得られることも多いと思います。
Will・Can・Mustから目標設定を行う
下準備をしっかり固めたところで、いよいよ具体的な目標設定に進みましょう。
Will・Can・Mustをもとにした目標設定は、大きく分けて2つの観点から行うことができると考えます。それは、「能力成長」と「課題発見」です。
「能力成長」による目標設定
1つ目の観点は「能力成長」です。
「自分の意志」と「組織での使命」が重なっているが、「自分の能力」が備わっていない要素について、自身の能力成長によって望ましい状態に持っていくという目標を設定します。
例えば、僕は2年前にLITALICOに中途入社しました。しかし前職とは技術スタックが結構違っていました。そのため当時の目標設定資料を振り返ると「担当領域の推進に伴う意識的な知見の獲得」など自身の能力成長によりフォーカスを置いていたようです。
なお、「目標設定において自分自身を説得する」という背景から、「能力成長」による目標設定においては下記の2点も意識できると良いでしょう(そしてこれは、上長などに説明するのにも役立ちます)。
- その能力成長によって、
- どんな「組織での使命」を果たすつもりなのか
- 例)Pythonでのデータ分析スキルを向上させることを目標にする。これを達成するために、毎週最低5時間の学習時間を確保し、〇〇の業務を通じて実践的な経験を積みたいと考えている。この目標達成によって、現在△△さんに依存しているデータ分析業務を分担し、チームの作業効率を向上させることを目指す。
- 「自分の意志」の達成にどのように貢献するのか
- 例)プロジェクト管理のスキルを強化することを目標にする。これを達成するために、プロジェクト管理に関するオンラインコースを完了する。また、実際にプロジェクトにおける〇〇タスクをリードし、プロジェクトの目標達成に寄与したい。この目標を達成することで、目指しているエンジニアリングマネージャーへのキャリアパスに向けて前進できると考える。
- どんな「組織での使命」を果たすつもりなのか
「課題発見」による目標設定
2つ目の観点は「課題発見」です。
「自分の意志」と「自分の能力」が重なっているが「組織での使命」が重なっていない部分が、この可能性を秘めています。
具体的には、所属組織が認識していない課題や機会について、自身のスキルや考えを元にそれを顕在化・対応して価値貢献を行うことを目標にします。
特に、転職・異動などで自身が新しい環境に身を置いたときに考えやすい観点だと考えます。そうしたタイミングにおいて、早く新しい環境に慣れるということも大事ですが、これまでの経験・能力を活かして新しい風を組織にもたらすという観点も持てると素敵だと思います。
他には、長期間働きながら温めてきた腹案を出すタイミングが来た!というパターンなどもあるでしょう。
具体的な目標の例としては下記のようなものが考えられます。
- 目標例
- 「走り出しにあたり単にキャッチアップするだけでなく、過去の知見から得られた見解をチームミーティングで必ず何か発信し、早期での価値貢献を実現する」
- 転職・異動を想定した目標例。
- 「プロダクトの監視体制を改善するための具体的な提案をチームに行う。この提案は既存のチームでカバーできていない観点を提供し、それらを改善するための明確な計画を含むものにする。合意された場合、その設計・実装をリードしてプロダクトの品質強化に貢献する」
- ※ 何らかの理由で案が棄却された場合は設定した目標自体が崩れるので、例えば組織でのオフィシャルな目標設定の場合は事前に根回しするなど行った方が良い場合もあるでしょう。
- 「走り出しにあたり単にキャッチアップするだけでなく、過去の知見から得られた見解をチームミーティングで必ず何か発信し、早期での価値貢献を実現する」
Will・Can・Mustによる目標設定手法の嬉しいポイント(まとめ)
ここまで、Will・Can・Mustフレームワークを用いた目標設定のアイデアをご紹介しました。
僕が考えるこの手法の嬉しいポイントは、前述した目標設定の難しい理由をフレームワークで乗り越えられる点だと思います。
自己分析を通して目標設定に必要な「自分の意志」「自分の能力」「組織での(自分の)使命」を洗い出すことができます。また、自分への説得性という意味合いにおいてもそのプロセスに一定の論理性をもたせることができます。これは自分で自分自身を納得させる1つの強力な材料になりうると考えています。
アイデア2: 目標を相談する・共有する
もう1つのアイデアは、目標設定の際にそれを相談・共有することです。
ありきたりと感じられるかもしれませんが、その効果はとても強力です。
目標を共有する際、上長は良い相談相手になり得ます(というか上長⇔自分の関係でしかやったことがないので僕はそれしか語れません)。
目標設定の面談を定期で行っている組織は多いと思いますが、もし機会がなければ依頼して設定するのも良いのではないでしょうか。
目標を相談・共有する意義は何か?
相談することによって目標の質が上がり、目標自体への信頼感が向上する
基本的に上長はより広いスコープで組織やプロダクトを見ていると思います。そんな上長と相談して決めた目標は、ただ独りで立てた目標よりも信頼感を得られるはずです。
目標に対する信頼感が高められると、自身が達成のために努力し続けるモチベーションの1つにもなるでしょう。言い換えると、未来の自分に「やっぱいいや」と言わせないような目標にできるということです。
補足として、共有する際には立てる目標自体だけでなく、そのプロセス(先の例でいくと「自分の意志」「自分の能力」「組織での(自分の)使命」やその解釈)も合わせて共有・説明できる状態にできると良いでしょう。
僕は直近アシスタントマネージャーに任命され、他のメンバーの目標設定面談を行えるよう引き継ぎを受けているところなのですが、メンターとしては立てられた目標自体よりもそのプロセスの方にずっと注目することに気が付きました。
確からしい前提認識を元に妥当な解釈が行われ、それに対して効果的な目標が立てられているか…その全体を気にしています。
なぜなら、そうしたプロセスを含めた全体が当人の成長や仕事へのモチベーションに寄与すると認識しているためです。
少し横道にそれましたが、目標設定のプロセスを含めた全体に対して他者の視点を入れることで、より充実した目標設定プロセスを体験し、より望ましい目標を立てることができると僕は考えます。
目標を共有することで、達成に向けたサポートを期待できる
上長に当たる方は、部下に本人にとって望ましい目標設定を行ってほしいと考えているでしょう。
それだけではなく、その遂行を通して学びと成功体験を獲得し、次の目標を立てる…といった良いサイクルを回してもらえると良いなと(もしかしたら本人以上に)思っているのではないでしょうか。
ということで多くの場合、目標を共有することで達成に向けたサポートが得られると思います。定期的な振り返りを行ったりタスク割り振りの際に考慮したりと、ある種目標達成に向けて伴走してくれる人がいると心強いでしょう。
もちろん、単に受動的になるのではなく、求めるサポートがあれば能動的に依頼するスタンスを持てるとより素敵だと思います。
自分を律する助けになる
最後に…。自分自身にはつい甘くなってしまうものです。人の目があると頑張れることもありますね。これは目標達成に向けて努力するという面でもそうですし、「人に見せられる目標」を立てるために普段よりも広く深く考えるモチベーションが得られるという面もあると感じます。
所属チームでの目標策定・相談・共有の取り組みを紹介
僕が所属しているチームでは半期ごとに「個人注力テーマ」を策定しています。目的は「成長角度を高め、より理想に近いキャリアを歩めるようになるため」です。
フォーマットは次の通りです。
- 長期(3年先~)で自分はどういう状態でありたいか ※任意
- 半年~1年先には自分はどういう状態でありたいか ※必須
- 半期(難しければ3ヶ月/1ヶ月)で注力すること ※必須
フォーマットを元に準備して(最初から完成されている必要はありません)、上長と相談(30分のミーティングを1回~n回)して策定します。
特徴として、ここで設定した目標の達成度合いは評価に組み込まれないというのがあります。個人的にはこれが気に入っていて、極端に「Will・Can・Must」のMustに偏ることなく、フラットに自身の将来に向けて考えやすいと感じられるためです。
自分自身もこれまで4半期分の注力テーマを上長と設定させていただいています。先述の意義はこの経験から記述しました。
また、僕はこれから上長側としてメンバーのサポートをさせていただくようになります。良きメンターとしてサポートできるように様々尽力していきたいと思います(…ので、この記事を見ているチームメンバーの方、よろしくお願いします笑)。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございます!
ここまで、目標設定の難しさとそれを乗り越えるためのアイデアについて僕なりの考えを記載しました。この記事が目標設定における新たな視点を提供できれば幸いです。
明日はいよいよアドベントカレンダー最後ですね!
トリを飾るのは次のお三方です!