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位相幾何学入門 ~ホモトピーと群表示についての整理~

Last updated at Posted at 2025-07-16

はじめに

最近「位相幾何学」について学習する機会があったので、この分野の基礎知識を備忘録程度にまとめていきます。
というのも、自分自身元々GNN(Graph Neural Network)をメインで研究してきた所以か、トポロジーを扱う本数学分野に興味を持った次第です👀

図形を「連続的に変形」しても変わらない性質、それが位相幾何学の扱う対象です。ゴムでできたドーナツとコーヒーカップが位相的に同じ、なんて話を聞いたことがある方もいるかもしれませんね☕️

001.jpg
(画像はhttps://academist-cf.com/journal/?p=14517 より引用)

また正方形杭問題(square peg problem)をみなさんはご存知でしょうか。
これは1911年にToeplitzによって提起された、平面内の単純閉曲線上に正方形の4頂点となる異なる4点が存在するかどうかを問う未解決問題です。
実は長方形までは、単純閉曲線上に存在することが知られていて、証明にはトポロジーの考えが用いられています。
以下のYouTubeリンクの動画(3blue1brown)が非常にわかりやすいのでおすすめです。位相幾何学がいかに数学的に強力なツールになり得るかがここから実感できますね。

今回そんな位相幾何学の基本概念の中から、特にホモトピーの考え方に焦点を当て、数式を交えながらその定義と意味を深掘りしていきます。マルチエージェントの経路計画などの応用分野も持つこれらの概念を、ぜひ一緒に学んでいきましょう!

対象読者:位相幾何学について入門したい人。


1. 位相空間とは? 🌏

位相幾何学の舞台となるのが位相空間です。これは、点と開集合の概念を定義することで、距離にとらわれずに「連続性」や「近さ」を抽象的に扱えるようにした集合です。つまり空間上の2点間の遠近や連続性などを扱うための枠組みを提供するようなもので、収束性・写像の連続性 が議論できる抽象的な空間だと捉えられます。したがって距離が定義されている距離空間、そして局所的にユークリッド空間を有する多様体なんかも位相空間の一種であると言えます。

定義1.1. 位相空間 (Topological Space)

集合 $X$ と、その部分集合の族 $\mathcal{O}$ が以下の条件を満たすとき、$(X, \mathcal{O})$ を位相空間と呼ぶ。$\mathcal{O}$ の要素を開集合という。

  1. $\emptyset \in \mathcal{O}$ かつ $X \in \mathcal{O}$
  2. $\mathcal{O}$ の任意の有限個の要素の共通部分も $\mathcal{O}$ の要素である。
  3. $\mathcal{O}$ の任意の要素の和集合も $\mathcal{O}$ の要素である。

2. 写像の連続性と同相 🍩

位相空間間の写像が「連続」であるとはどういうことでしょうか?それは、直感的な「つながりを保つ」という性質を数学的に表現したものです。

定義2.1. 連続写像 (Continuous Map)

位相空間 $(X, \mathcal{O}_X)$ から $(Y, \mathcal{O}_Y)$ への写像 $f: X \to Y$ が連続であるとは、任意の $V \in \mathcal{O}_Y$ に対して、その逆像 $f^{-1}(V) = {x \in X \mid f(x) \in V}$ が $\mathcal{O}_X$ の要素であること。

定義2.2. 同相 (Homeomorphic)

2つの位相空間 $X, Y$ が同相であるとは、全単射な連続写像 $f: X \to Y$ が存在し、その逆写像 $f^{-1}: Y \to X$ も連続であることである。このとき $X \cong Y$ と書く。位相幾何学において、同相な空間は「同じ図形」とみなされます 。

定義2.3. 位相空間対 (Topological Pair)

位相空間 $X$ とその部分集合 $A$ のペア $(X, A)$ を位相空間対と呼ぶ。位相空間対 $(X, A)$ から $(Y, B)$ への写像 $f:(X,A) \to (Y,B)$ は、連続写像 $f:X \to Y$ であり、かつ $f(A) \subset B$ を満たすものとして定義される。


3. ホモトピー:写像の連続的変形 🧮

いよいよ位相幾何学の中心概念の一つ、ホモトピーです。これはわかりやすく言えば、パスや写像が「ぐにゃぐにゃと連続的に変形できる」という性質を捉えます。

定義3.1. パス (Path)

位相空間 $X$ におけるパスとは、単位区間 $I = [0,1]$ から $X$ への連続写像 $f: I \to X$ のことである 。

定義3.2. パスの合成 (Concatenation of Paths)

2つのパス $f, g: I \to X$ が $f(1)=g(0)$ を満たすとき、これらの合成 $f*g$ は以下のように定義される 。

(f*g)(s) = \begin{cases} f(2s) & (s \in [0, 1/2]) \\ g(2s-1) & (s \in [1/2, 1]) \end{cases}

この $f*g$ も連続なパスであり、始点は $f(0)$、終点は $g(1)$ となる。

定義3.3. パスの逆 (Inverse of a Path)

パス $f$ の逆 $f^{-1}$ は $f^{-1}(s) := f(1-s)$ で定義され、パス $f$ を逆向きにたどる。

定義3.4. ホモトピックな写像 (Homotopic Maps)

位相空間対 $(X,A)$ から $(Y,B)$ への2つの連続写像 $f,g:(X,A) \to (Y,B)$ がホモトピックであるとは、連続写像 $F: [0,1] \times X \to Y$ (これを $f$ から $g$ へのホモトピーと呼ぶ) が存在し、以下の条件を満たすことをいう。

  1. $F(0,x) = f(x)$ for all $x \in X$ (時刻 $t=0$ で $f$ に一致)
  2. $F(1,x) = g(x)$ for all $x \in X$ (時刻 $t=1$ で $g$ に一致)
  3. $f_t(x) = F(t,x)$ とおいたとき、$f_t \in C((X,A),(Y,B))$ が成り立つ。

特に、同じ始点と終点を持つ2つのパス $f,g:I \to X$ がホモトピックであるとは、上記の定義で $X$ を $I$ に、$Y$ を $X$ に、$A$ を $\partial I = {0,1}$ に、$B$ を $f(0),f(1)$ (または基点 $x_0$) に置き換えた場合を指す。このとき、パスの始点と終点はホモトピーの過程で固定される。ホモトピックであることを $f \simeq g$ と表す。

命題3.1. (ホモトピー関係の同値性)

ホモトピックであるという関係 $f \simeq g$ は、写像の集合 $C((X,A),(Y,B))$ 上の同値関係である。

  • 反射律 ($f \simeq f$): $F(t,x) = f(x)$ とおけばよい。
  • 対称律 ($f \simeq g \Rightarrow g \simeq f$): $F$ が $f$ から $g$ へのホモトピーならば、$G(t,x) = F(1-t,x)$ が $g$ から $f$ へのホモトピーとなる。
  • 推移律 ($f \simeq g, g \simeq h \Rightarrow f \simeq h$): $F$ が $f$ から $g$ への、$G$ が $g$ から $h$ へのホモトピーならば、$H(t,x) = \begin{cases} F(2t,x) & (t \in [0, 1/2]) \ G(2t-1,x) & (t \in [1/2, 1]) \end{cases}$ とおけば $f$ から $h$ へのホモトピーとなる。

定義3.5. ホモトピー同値 (Homotopy Equivalent)

2つの位相空間対 $(X,A)$ と $(Y,B)$ がホモトピー同値であるとは、連続写像 $f:(X,A) \to (Y,B)$ と $g:(Y,B) \to (X,A)$ が存在し、以下を満たすことである。

  1. $g \circ f \simeq I_X:(X,A) \to (X,A)$ (恒等写像 $I_X$ とホモトピック)
  2. $f \circ g \simeq I_Y:(Y,B) \to (Y,B)$ (恒等写像 $I_Y$ とホモトピック)
    このとき $(X,A) \simeq (Y,B)$ と表す。ホモトピー同値な空間は、ホモロジー群など多くの位相不変量で共通の性質を持つ。

定義3.6. 可縮 (Contractible)

1点のみからなる集合とホモトピー同値な位相空間を可縮という。可縮な空間では、恒等写像 $I_X: X \to X$ は、$X$ の一点 $x_0$ への定値写像 $C_{x_0}: X \to X$ ($C_{x_0}(x)=x_0$) とホモトピックである。例えば、$n$ 次元球体 $D^n$ は可縮である。


スクリーンショット 2025-07-17 6.26.56.png

上の図では、始点 $S$ から終点 $G$ への 3 つの経路 $p_1, p_2, p_3$ があります。中央には障害物(穴)が存在します。

  • $p_2$ と $p_3$ は障害物の同じ側を通るため、互いに連続的に変形可能です。
    つまり、$p_2$ を「引き伸ばしたり押し縮めたり」することで $p_3$ に変形でき、これらは ホモトピック(同値)です。

  • 一方、$p_1$ は障害物を挟んで反対側を通っているので、$p_2$ や $p_3$ とは連続変形できません。
    したがって、$p_1$ は $p_2, p_3$ と 異なるホモトピー類 に属します。

この「経路同士を連続変形できるか否か」という関係で分類された経路の集合が ホモトピー類 です。
ホモトピー類は、空間における「穴」の有無や位置といったトポロジー的性質を定量的に捉えるための基本概念となります。


4. ホモトピー群:図形の「穴」を捉える群 🕳️

ホモトピー群は、特に図形の「穴」や「ねじれ」といったトポロジー的な特徴を、代数的な構造である「群」として表現します。

定義4.1. ホモトピー類 (Homotopy Class)

写像の集合 $C((X,A),(Y,B))$ をホモトピックであるという同値関係で分類した同値類をホモトピー類と呼び、これを $[f]$ と表す。この同値類の集合を $\pi((X,A),(Y,B))$ と表す。

定義4.2. 基本群 (Fundamental Group)

基点 $x_0 \in X$ を持つ閉ループ(始点と終点がともに $x_0$ の連続曲線 $C:(I,\partial I) \to (X,x_0)$)のホモトピー類の集合 $\pi((I,\partial I),(X,x_0))$ に、以下のパス合成による群構造を定めたものを基本群 (fundamental group) あるいは1次元ホモトピー群と呼び、$\pi_1(X,x_0)$ と表す。

  • 演算: $[C] * [D]$ $=$ $[C*D]$ で定義される。これは代表元の取り方によらない (well-defined)。
  • 結合法則: $[C] * $ $([D] * [E])$ $=$ $([C] * [D])$ $ * [E]$ が成り立つ。
  • 単位元: 基点 $x_0$ に値をとる定値写像 $I(t)=x_0$ のホモトピー類 $[I]$ が単位元となる。
  • 逆元: パス $C$ の逆 $C^{-1}(t)=C(1-t)$ のホモトピー類 $[C^{-1}]$ が $[C]$ の逆元となる。

命題4.1. (基本群の基点独立性)

弧状連結な位相空間 $X$ において、基本群は基点の取り方によらない。すなわち、任意の2つの基点 $x_0,x_1 \in X$ に対して $\pi_1(X,x_0) \cong \pi_1(X,x_1)$ が成り立つ。

命題4.2. (連続写像が誘導する準同型)

連続写像 $f:(X,x_0) \to (Y,y_0)$ は、群の間の準同型 $f_* : \pi_1(X,x_0) \to \pi_1(Y,y_0)$ を定める。これは $f_*([C])=[f \circ C]$ で定義される。

定理4.1. (基本群のホモトピー不変性)

弧状連結な位相空間 $X,Y$ について、以下が成り立つ。

  1. $f \simeq g:(X,x_0) \to (Y,y_0) \Rightarrow f_* = g_*: \pi_1(X,x_0) \to \pi_1(Y,y_0)$。
  2. $(X,x_0) \simeq (Y,y_0) \Rightarrow \pi_1(X,x_0) \cong \pi_1(Y,y_0)$ (ホモトピー同値な空間の基本群は同型)。

定義4.3. 単連結 (Simply Connected)

$\pi_1(X,x_0)$ が単位元のみからなる群である弧状連結位相空間 $X$ を単連結と呼ぶ。例えば、$n$ 次元球体 $D^n$ や $n \ge 2$ の球面 $S^n$ は単連結である。

定義4.4. n次元ホモトピー群

$n \ge 1$ のとき、写像 $C:(I^n, \partial I^n) \to (X,x_0)$ (ここで $I^n=[0,1]^n$ は $n$ 次元立方体、$\partial I^n$ はその境界) のホモトピー類の集合に群構造を定めたものを $n$ 次元ホモトピー群 $\pi_n(X,x_0)$ と表す。

命題4.3. (高次ホモトピー群の可換性)

$n \ge 2$ の場合、$\pi_n(X,x_0)$ は 可換群 (アーベル群) である。これは、基本群 $\pi_1(X,x_0)$ が一般には非可換であることと対照的である。


例1:円周 🔘

  • 空間:単位円周
S^1 = \{(x,y)\in\mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 = 1\}
  • 基本群:$\pi_1(S^1)$
  • 結果:$\pi_1(S^1) \cong \mathbb{Z}$
  • 直感的イメージ
    • 円周上のループは「円周上を何周したか」で分類できます。
    • 「半周」のようなループは、その始点と終点を固定したままでは一点に縮めることができません。しかし、「1周」「2周」…といった周回数によって異なるホモトピー類となります。
    • 「時計回りに3周」は整数 +3、一方「反時計回りに1周」は整数 -1 で表すことができます。
    • 基本群の群演算(足し算)は「ループをつなげる=周回数を足す」操作に対応します。
    • したがって、すべてのホモトピー類は整数(何周したか)で一意にラベルでき、円周の基本群は整数の加法群 $(\mathbb{Z},+)$ と同型になります。

例2:平面 ◼️

  • 空間:ユークリッド平面 $\mathbb{R}^2$
  • 基本群:$\pi_1(\mathbb{R}^2)$
  • 結果:$\pi_1(\mathbb{R}^2) \cong {e}$ (自明群)
  • 直感的イメージ
    • 平面上では、基点から出発して再び基点に戻るどんなループも、途中に障害物や穴がないため、連続的に変形して一点(基点)に縮めることができます。
    • 例えば、ゴムひもを平面に置いてどんな形にしても、引っかからずに元の点に引き戻せるようなイメージです。
    • そのため、すべてのループは同じホモトピー類(自明なループの類)に属し、基本群には「ただひとつの元(単位元のみ)」しか存在しません。これを自明群 (trivial group) と呼びます。

例3:トーラス 🍩

  • 空間:ドーナツ形の表面 $T^2 = S^1 \times S^1$
  • 基本群:$\pi_1(T^2)$
  • 結果:$\pi_1(T^2) \cong \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}$
  • 直感的イメージ
    • トーラス(ドーナツの表面)には、直感的に「外周を一周するループ」と「穴の内側を一周するループ」という2種類の独立した「穴」に対応する周回方向が存在します。
    • それぞれの方向について、ループが何周したかを独立して整数でカウントできます。例えば、外周方向に $m$ 周、穴の内側方向に $n$ 周するループは、ペア $(m, n)$ で表すことができます。
      • $m$:外周方向の周回数
      • $n$:穴の内側の周回数
    • 基本群の群演算は、これらの成分ごとの足し算に対応します。
      $$ (m_1, n_1) + (m_2, n_2) = (m_1 + m_2,; n_1 + n_2) $$
    • したがって、トーラスの基本群は、二次元整数格子 $\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}$ と同型になります。これは、トーラスが2つの円周の直積である ($S^1 \times S^1$) ことと、基本群が直積に対して直積となる性質 ($\pi_1(X \times Y) \cong \pi_1(X) \times \pi_1(Y)$) からも導かれます。

5. ブレイド群:絡み合うパスの代数 🪢

具体的な群の例として、ブレイド群 (braid group) を紹介します。マルチエージェントシステムの経路計画など、複数のパスが互いに絡み合う状況を考える際、そのトポロジーを扱うのが ブレイド群 で、くみひも群 なんて呼ばれ方もします。ブレイド群は、特定の配置空間の基本群として定義されます。

定義5.1. 配置空間 (Configuration Space)

領域 $D$ 内に $n$ 個の区別可能な点(エージェント)が存在し、互いに重ならない条件を満たす全ての配置の集合を配置空間 $\mathcal{C}_n(D)$ と呼ぶ。

\mathcal{C}_n(D) := \{(p_1,p_2,...,p_n) \in D^n \mid p_i \ne p_j \text{ for all } i \ne j\}

これは、サイズのない $n$ 個のラベル付きエージェントが衝突せずに動く際の、可能な「状態」の全体を表す空間である。

定義5.2. ラベルなし配置空間 (Unlabeled Configuration Space)

$\mathcal{C}_n(D)$ に対して、エージェントのインデックス(ラベル)を無視して得られる空間をラベルなし配置空間 $\mathcal{UC}_n(D)$ と呼ぶ。

定義5.3. ブレイド群 (Braid Group) と 純粋ブレイド群 (Pure Braid Group)

2次元平面 $\mathbb{R}^2$ 上のラベルなし配置空間 $\mathcal{UC}_n(\mathbb{R}^2)$ の基本群を $n$ 次ブレイド群 $B_n$ と呼ぶ。
2次元平面 $\mathbb{R}^2$ 上のラベル付き配置空間 $\mathcal{C}_n(\mathbb{R}^2)$ の基本群は、$B_n$ の部分群であり、$n$ 次純粋ブレイド群 $P_n$ と呼ばれる。

定義5.4. ブレイド群の表示 (Presentation of Braid Group)

$B_n$ は以下の生成元と関係によって定義される。
$$ \langle \sigma_1,...,\sigma_{n-1} \mid \sigma_i\sigma_j\sigma_i^{-1}\sigma_j^{-1}=1,\sigma_i\sigma_{i+1}\sigma_i\sigma_{i+1}^{-1}\sigma_i^{-1}\sigma_{i+1}^{-1}=1\rangle $$
ここで $1 \le i < n-1$ かつ $i+1 < j \le n-1$ である。

  • 生成元: $\sigma_1, \ldots, \sigma_{n-1}$
    • $\sigma_i$: $i$ 番目のエージェントと $i+1$ 番目のエージェントが、反時計回りにすれ違う最も基本的な操作を表す 。
    • $\sigma_i^{-1}$: 時計回りのすれ違いを表す 。
  • 関係:
    • $\sigma_i\sigma_j=\sigma_j\sigma_i$ (for $i+1 < j$): 離れたエージェント同士のすれ違いは、順序を入れ替えても結果は同じであることを意味する 。
    • $\sigma_i\sigma_{i+1}\sigma_i=\sigma_{i+1}\sigma_i\sigma_{i+1}$: これはYang-Baxter(ヤン・バクスター)関係として知られ、3つの隣接するエージェントが連続して交換し合う際に、異なる順序で交換しても最終的な絡まり方は同じになることを意味する 。

スクリーンショット 2025-07-17 6.32.39.png

上のデモでは、三つ編み(ブレイド)を実際に作ってみました。ブレイドワードを比較することで(中央と右)、Yang-Baxter関係を満たすことがわかります。それぞれ異なるブレイドワードを示していますが、ブレイド群の性質上、これらは同じブレイド、つまり絡まり方を表します。


6. 群の代数的記述:抽象的な構造を扱う 📊

位相幾何学では、図形の性質を「群」という代数的な構造に変換して解析します。その際に、群をどのように定義し、扱うかが重要になります。

定義6.1. 生成元 (Generators)

群 $G$ の部分集合 $S$ が生成元集合であるとは、$G$ の任意の要素が $S$ の要素とその逆元の有限積として書けることをいう。$S$ の要素を生成元と呼ぶ。

定義6.2. ワード (Word)

生成元とその逆元からなる文字列をワードと呼び、群の要素を表す。

定義6.3. 関係 (Relations)

単位元を表すワードを関係と呼ぶ。

定義6.4. 群の表示 (Presentation)

群 $G$ の表示 $\langle S \mid R \rangle$ は、生成元集合 $S$ と関係集合 $R$ から構成され、$G$ を特定するのに十分な情報を与える。
形式的には、$S$ 上の自由群 $F_S$ から $G$ への自然な全射写像の核が、$R$ を含む $F_S$ の最小正規部分群であるときに、$\langle S \mid R \rangle$ は $G$ の表示である。関係 $ab^{-1} \in R$ は $a=b$ とも表記される。

定義6.5. ワード問題 (Word Problem)

与えられた2つのワードが群の同じ要素を表すかどうかを決定する決定問題をワード問題と呼ぶ。この問題は一般に解くことが困難な場合が多い。


まとめ 🌟

今回は、位相幾何学の基礎である「ホモトピー」と、その代数的な表現である「ホモトピー群」、そして群の構造を記述する「群の表示」について、整理しました。さらに、複数のパスの絡まり方を記述する「ブレイド群」という具体的な群の例についても紹介しました。
自分自身、定義や語彙が曖昧になったらこのページに戻ってこようと思います🤧

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