はじめに:self-hosted なツールを改めて試してみる理由
近年、多くのチームが SaaS ツールを前提として仕事をしています。
デプロイは簡単になり、インフラを意識する必要もほとんどなく、
すぐに使い始められるのは大きなメリットだと思います。
一方で、しばらく使い続けていると、
次のような点が少しずつ気になってくることもあります。
- データはどこに保存され、どのように管理されているのか
- コストはどの程度まで予測できるのか
- サービスの運用や可用性は誰が担っているのか
また、大規模なサービス障害が発生した際には、
利用者側ではできることがほとんどない、という場面も経験します。
こうしたことから最近は、
「もし自分たちで動かして理解できるツールがあるなら、
一度試してみる価値はあるのではないか」
と考えるようになりました。
特にプロジェクト管理ツールの場合、
常にアクセスできることや、
データの所在が明確であることは重要だと感じています。
OpenProject は、そのような観点から
ローカル環境でも比較的簡単に試すことができる
オープンソースのプロジェクト管理ツールです。
なぜ OpenProject を見直してみたのか
少し補足しておくと、私は OpenProject に関わって仕事をしています。
ただし、この記事は公式な立場から書いているものではなく、
個人として「あらためて使ってみた感想」をまとめたものです。
OpenProject は、長期的な利用や実務での運用を前提に設計された
オープンソースのプロジェクト管理ツールです。
簡単に特徴を挙げると:
- オープンソース
- 継続的にメンテナンスされている
- さまざまな規模・種類のチームで利用されている
- self-hosting に対応している
- Community Edition は無償で利用できる
この記事では、機能を網羅的に紹介したり、
他のツールと比較したりするつもりはありません。
それよりも、
日常の仕事の中で、どの程度「現実的に使えそうか」
という点に関心がありました。
OpenProject は Redmine などに近い思想を持っており、
柔軟で、用途を限定しすぎない設計になっています。
プロジェクトによってはミーティングを重視したり、
カンバンボードを使ったり、
ガントチャートで計画を管理したり、
あるいは単純なバグ管理だけに使うこともできます。
一つのツールで、
決まった「使い方」を押し付けられない点は、
実務では意外と重要だと感じました。
ローカルで試すことの重要性
ツールの比較記事やレビューを読んでも、
実際の使い勝手まではなかなか分かりません。
個人的には、
- ローカルで起動できて
- 自分のペースで触れて
- 合わなければすぐに止められる
という形で試せることが理想です。
Docker を使えば、こうした「気軽な評価」がしやすくなります。
そこで、OpenProject をローカルで試すための
最小限の手順をまとめたリポジトリを用意しました。
Quick Start:OpenProject をローカルで試す
ローカル環境で OpenProject を試すための
シンプルな Quick Start を用意しています。
目的は 本番運用ではなく、評価と理解 です。
リポジトリには以下が含まれています。
- Docker を使ったセットアップ
- 任意で読み込めるデモ用 seed データ
- 一連の作業を自動化するスクリプト
👉 https://github.com/shiroginne/openproject_jp
なお、このリポジトリは
OpenProject の公式リポジトリではありません。
日本の開発者向けに試しやすい形を用意した、
個人・コミュニティベースの取り組みです。
デモシナリオについて
リポジトリには、簡単なデモ用の seed データを用意しています。
OpenProject はデフォルトでは英語の seed データが付属しています。
今回は構造が分かりやすいよう、日本語のデモデータを追加しました。
UI の言語も、プロフィール設定から日本語に切り替えることができます。
シナリオはあえてシンプルにしています。
忍者の村が冬の祭りと新年の準備を進める、
――ごく一般的で、特に珍しくもない(?)状況です。
このデモでは、
- タスク管理
- ステータスや担当者
- 依存関係
- ガントチャートによるスケジュール管理
といった基本的な要素を確認できます。
OpenProject は非常に多機能なツールですが、
最初の印象を掴むには十分だと思います。
実務におけるローカライズとカスタマイズ
多くのチームにとって、
ツールの言語や表現は意外と重要です。
OpenProject では UI だけでなく、
- Work Package の種別(Bug / Feature / Milestone など)
- ステータス
- フィールド名
といった要素も翻訳・カスタマイズできます。
既存の業務フローに合わせやすい点は、
実際に使う上で大きな助けになります。
OpenProject の主な利用地域はヨーロッパと北米のため、
日本語翻訳は現在も進行中です。
私自身も、他のコミュニティメンバーと一緒に
空いた時間で翻訳に参加しています。
もし表現が不自然に感じられる箇所があれば、
今後少しずつ改善されていく予定です。
興味があれば、Crowdin 経由で翻訳に参加することもできます。
👉 https://crowdin.com/project/openproject
技術的な補足
参考までに、OpenProject の技術スタックは以下のようになっています。
- Ruby / Rails
- PostgreSQL
- Angular(段階的に整理中)
- Helm charts を使ったデプロイ
- 公式 Docker イメージ
おわりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
そして、もし実際に OpenProject を試していただけたなら、
それもとても嬉しく思います。
何か気になる点や質問があれば、気軽にコメントしてください。
この記事が参考になりそうであれば、
次回はミーティングの運用について
(準備、議題、アウトカムの整理など)
書いてみたいと思います。
※ 日本語は母語ではありません。表現に不自然な点があれば、ご容赦ください。


