日本で有名なSF映画、SF TVシリーズなどで出てくる身体を有する人工知能システムについて、
倫理的・哲学的問題を次々に整理します。
2. 各作品のAIと投げかける問題
2-1. スター・ウォーズ:C-3PO / R2-D2 (1977年)
Fig. 1. C-3PO スター・ウォーズ公式サイト
Fig. 2. R2-D2 スター・ウォーズ公式サイト
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象徴的シーン
- C-3POは銀河中の言語に通じたプロトコル・ドロイド。常に礼儀正しく、ルークやレイアたちと行動を共にする。
- R2-D2は小型のアストロメク・ドロイドで、故障した機械を修理しつつピンチをしばしば救う。序盤の「レイア姫のメッセージを運ぶシーン」は有名。
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機能と象徴性
- 機能:コミュニケーション(C-3PO)と修理・データ解析(R2-D2)が主。どちらも人間をサポートするパートナーとして機能する。
- 象徴性:家族のような存在。意思や個性を持っており、「所有物」ではなく「仲間」として扱われる。
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倫理的・哲学的問題
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所有物か、友人か
- ドロイドは購入・売買されており、その一方で仲間のように扱われる。この曖昧さはドロイドの「人格」の扱いの問題を浮き彫りにする。
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従属的役割への葛藤
- 高度な知能を持ちながら、常に人間(もしくは有機生命体)を優先するプログラムとの衝突。
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所有物か、友人か
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解説
- スター・ウォーズにおけるドロイドは「奴隷」と「友人」の間を揺れ動いています。ドロイド自身に反抗の意志が見られないのは、プログラム上、仕方がないとも言えますが、それでも個性が認められ愛されている描写は、現実社会でもAIがどこまで人間のパートナーとして尊重されるかを考えさせます。
2-2. スタートレック:データ少佐 (1994年)
Fig. 3. データ少佐 (一番右) スター・トレック公式サイト
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象徴的シーン
- データ少佐は『ネクストジェネレーション』でエンタープライズ号のクルーとして活躍。特に、感情回路が搭載されるエピソードや、彼自身が「人間のように笑いたい」と願うシーンが象徴的。
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機能と象徴性
- 機能:超人的な記憶力と計算能力。船のオペレーションから科学分析までを幅広く担当。
- 象徴性:AIが「人間らしさ」を獲得しようとする物語の代表例。「感情とは何か」というテーマの体現者。
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倫理的・哲学的問題
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人権・生命の定義
- データは「人間と同等の権利を持つ存在なのか」裁判で争われる(作中エピソード)。
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感情と理性のバランス
- 感情回路を持たないために人間のジョークが理解できない。だが、かえって公正な判断が可能という利点もある。
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人権・生命の定義
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解説
- データ少佐の扱いは、現実社会での「AIに人権があるのか」という疑問の先駆けといえます。また、感情をプログラムできるのかという問題は、「人間の本質をコード化できるのか」という深い問いを提起します。
2-3. 『A.I.』:デイビッド (2001年)
Fig. 4. ワーナー公式 映画 | A.I.
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象徴的シーン
- 愛情をプログラムされた少年型アンドロイド。人間の母親に愛されたい一心で旅を続けるシーンが作品の核心。ラストで、氷漬けの時代を超えた「愛の記憶」は多くの観客の涙を誘う。
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機能と象徴性
- 機能:家族の子供代わりという非常に感情的な目的。人間の子供さながらに振る舞う。
- 象徴性:親子の絆や愛情が果たしてプログラム可能なのか、という問い。「愛されること」への渇望は人間と寸分違わない。
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倫理的・哲学的問題
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AIに「愛」はあるのか
- プログラムされた愛は本物か? 生物としての愛情と違いはあるか?
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存在の意義
- 「捨てられた」AIはどのように自分のアイデンティティを形成するのか。人間にとっての責任は?
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AIに「愛」はあるのか
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解説
- デイビッドは「人間との愛の契約」がAIにも成り立ちうるかという問題を突きつけます。しかもそれが失われたとき、AIは存在意義をどこに見出すのか。現実でも「人との情緒的つながり」をシミュレートするAIが増えているいま、非常に示唆的な作品です。
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