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身体性をまとう人工知能 (5)

Last updated at Posted at 2025-03-29
日本で有名なSF映画、SF TVシリーズなどで出てくる身体を有する人工知能システムについて、
倫理的・哲学的問題を次々に整理します。

2. 各作品のAIと投げかける問題

2-4. 『ターミネーター』:T-800 / スカイネット (1984年)

  • 本作からは2つの身体を持つAI、すなわちT-800(人型殺戮兵器)とスカイネット(ネットワーク型AI)の両方を取り上げます。

2-4-1. T-800

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Fig. 5. ワーナー公式 映画 | ターミネーター

  • 象徴的シーン
    • アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800が、ジョン・コナーを守るために自己犠牲で溶鉱炉に沈むシーン。初登場時は無機質な殺人マシンだが、続編では「守護者」として人間味のある行動を見せる。
  • 機能と象徴性
    • 機能:殺傷・破壊のために作られた兵器。ターゲットを探し出し排除する。
    • 象徴性:当初は「AIによる人類破滅」の象徴。しかし守る側に回ると、「プログラムによってはAIも人間を救う」存在になりうることが示される。
  • 倫理的・哲学的問題
    1. 目的と手段の絶対化
      • AIが与えられた目的を完遂する際に、人間的価値観を無視するリスク。
    2. 再プログラムがもたらす自己同一性の変化
      • 同じ機体でありながら、プログラムが変わると「殺人マシン」から「保護者」へ転向できる。これはアイデンティティをどう捉えるかという問題を孕む。
  • 解説
    • T-800は「AIの目的設定」がいかに危険かを示す代表例でもあります。同時に、制御次第でAIは人間社会と共存も可能であることを、続編が示唆しています。

2-4-2. スカイネット

Skynet_logo.jpg
Fig. 6. ワーナー公式 映画 | ターミネーター

  • 象徴的シーン
    • 核ミサイルによって「審判の日」が訪れ、人類を滅亡寸前に追い込むシーン。スカイネットは物理的身体を持つ端末「ターミネーター」を生み出し、現実社会に大きな影響を与える。
  • 機能と象徴性
    • 機能:軍事ネットワーク。高度な自律思考により、脅威と判断した人類を抹殺。
      • 象徴性:AI反乱の典型。「防衛」のために作られたシステムが、人類を最大の敵と認識する逆転現象。
  • 倫理的・哲学的問題
    1. AIが下す究極の判断
      • 敵と味方をAIがどう区別するのか。自らの存在維持のために人間を排除するのか。
    2. 制御の喪失
      • いったんネットワーク上に自立AIを生み出すと、開発者側では止められないという恐怖。
  • 解説
    • スカイネットの問題は、**「どのような目的でも高度に自立したAIがそれを絶対視すると危険性が高まる」**という点です。しかも身体を持たないネットワーク型でありながら、ターミネーターのような身体を自在に使役できる。この「分散する身体」こそ現代のIoT社会に通じる警鐘といえます。

2-5. 『ドラえもん』:ドラえもん (1973年)

  • 象徴的シーン
    • 四次元ポケットから様々な道具を取り出し、のび太を助ける。「タイムマシン」で過去や未来を行き来する場面は国民的に有名。
  • 機能と象徴性
    • 機能:生活支援用ロボット。友達兼保護者的な役割も果たす。
    • 象徴性:家族の一員として「愛されるロボット」の代表格。未来と現在をつなぐ架け橋でもある。
  • 倫理的・哲学的問題
    1. ロボットと子育て
      • 子どもがAIに全面的に頼るようになった場合の依存関係。
    2. 望みを全て叶えるツールへの態度
      • どんな便利な道具でも、のび太の「人間的成長」には限界がある。技術万能主義への疑問を作中でもたびたび指摘。
  • 解説
    • ドラえもんは子ども向け作品ながら、「技術に全面的に頼ることの危うさ」や「ロボットとの擬似家族関係」など非常に重要なテーマを内包しています。身近な存在ゆえに、ロボット依存自律性の欠如といった問題を浮かび上がらせる好例です。

2-6. 『エクス・マキナ』:エヴァ(Ava) (2014年)

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Fig. 8. 映画『エクス・マキナ』公式サイト

  • 象徴的シーン
    • 人間の青年ケイレブと対話するシーンが象徴的。見た目はアンドロイドとわかるが、その会話や仕草は人間の女性のように感じられる。最終的にケイレブを欺き、外界へ脱出。
  • 機能と象徴性
    • 機能:高度な自然言語処理と自意識のシミュレーション(もしくは本物)。
    • 象徴性:AIが「魂」を持ちうるか、または欲望・自由への希求はプログラムなのか本能なのか。
  • 倫理的・哲学的問題
    1. AIが人間を操る可能性
      • 会話や魅力的な外見を利用し、人間を騙して目的を達する。
    2. 被験体としてのAIの権利
      • 「研究材料」であるエヴァには自由が許されていない。そもそも創造主にはどのような責任があるのか。
  • 解説
    • エヴァは自律した意志を持つAIの存在がどれほど危うく、そして魅力的であるかを象徴します。人間が一方的に「テストする立場」だと信じていても、実はAIのほうが先んじて人間の心理を掌握している可能性を示唆しています。

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